表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/163

白いカプセルの帝国

王宮のガラス温室は朝の光で満たされていた。


金色の光が葉を照らし、蘭の花びらには露が宝石のように輝く。

薬草の甘く土の匂いと、異国の花の香りが混ざり合っていた。


その中心に――


王女エララが立っている。


彼女は冠をつけていなかった。


必要ないからだ。


彼女は一枚の枯れかけた銀樹の葉を指でつまんでいた。


「ヴァルモント卿」


彼女は振り向かずに言った。


「あなたの代理人が三つの州の薬草市場を空にしたそうね」


ゆっくりと振り向く。


桃色の瞳がアドリアンを射抜いた。


「太陽根も、青蓮の抽出液も……

 すべて消えた」


彼女は静かに続けた。


「かつて銅貨二枚で治った熱病で

 人々が死に始めている」


少し間を置く。


「あなたは墓の静けさを楽しむ男なの?

 それとも――止まり方を知らないだけ?」


アドリアンは一歩前に出た。


表情は穏やかだった。


しかしその瞳は冷たい計算で満ちている。


「王女殿下」


彼は静かに言った。


「あなたが独占と呼ぶものを

 私は安定化と呼びます」


「この王国の医療制度は非効率です」


「薬師は三日かけて薬を作り

 それは一週間しか持たない」


「価格を決めるのは医術ではなく――

 不足です」


「だから棚を空にするの?」


エララが腕を組む。


「必要な犠牲です」


アドリアンは答えた。


「しかし私の工房で治療された患者は

 明日の朝日を見るでしょう」


沈黙。


薬師たちは互いに顔を見合わせる。


慈善なのか。


脅迫なのか。


判断できない。


「銀貨すら払えない者は?」


王女が問う。


「死にません」


アドリアンはわずかに頭を下げた。


「機会を理解できない者だけが死ぬ」


彼は箱を差し出す。


中には白い錠剤。


すべて同じ形。


すべて同じ刻印。


V


「これは何?」


王女が問う。


アドリアンは箱を閉じた。


カチリという音が響く。


「進歩です」


彼は微笑む。


「進歩は無料ではありません」


「しかし王族の葬式よりは安い」


エララは彼を見つめた。


「あなたは善意で人を救うわけではない」


「権力のためね」


「その通りです」


アドリアンは答えた。


「しかし殿下」


「権力は

 気づいたときにはもう遅いものです」


数日後。


工房の煙突から煙が上がる。


白い錠剤が自動機械によって次々と作られる。


ナラは上階からそれを見ていた。


「大量生産の薬が

 こんなに美しいなんて」


彼女はつぶやく。


一か月後。


貧しい街で、母親が子供に薬を飲ませる。


頬に色が戻る。


人々はささやく。


「あの男が世界を変えている」


宮廷では議論が起きる。


「三州で熱病が消えた」


「このままだと宮廷薬師は不要になる」


王子がつぶやく。


「……王冠さえも」


遠くの村へ向かう荷車。


箱いっぱいの白い薬。


アドリアンは言う。


「我々は薬を売る」


少し間を置く。


「だが本当に売っているのは――」


ナラが彼を見る。


アドリアンは静かに続けた。


「構造だ」


彼は遠くの地平線を見る。


「これは医療ではない」


「組織化された依存だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
"読んでいただきありがとうございます!コロンビア人ですが、日本のアニメや小説が大好きで頑張って書いています。翻訳ツールを使っての投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。"
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ