天を裂く獣
北では、風が吠えていた。
山から獣のように吹き下ろし、屋根を剥ぎ、柱を軋ませる。空は濁流のように渦巻く。
太鼓が鳴る。
戦のためではない。
生き延びるために。
女たちは子どもを洞窟へ。狩人たちは震える槍を構える。顔の戦化粧は、恐怖を隠せない。
シャーマンが骨の杖を掲げる。
「戻った……天空の喰らい手が目覚めた」
風が止む。
沈黙。
空が裂けた。
霧の翼。雷を宿す豹の体。嵐のような双眸。
テンペスト・ジャガーが降臨する。
槍はすり抜け、稲妻が三人を白光に変える。
「逃げ場はない……我らを消しに来た」
密林の斜面から、カエルが見ていた。
胸の鍵が震える。符文が意味を直接流し込む。
気象存在。
領域守護者。
弱点――実体化時の電核。
彼は走らない。
歩く。
子どもへ迫る獣の前に降り立つ。
「下がれ」
雷爪が閃く。
転がり、誘導し、実体化を強いる。
鍵が灼ける。
一瞬、固まる。
跳躍。
槍が胸を貫く。
内部の雷が爆ぜる。
ナイフが光る核に沈む。
絶叫。
そして、静寂。
雲が割れ、風が散る。獣は火花となって消えた。
カエルは深く息を吸う。
村人が出てくる。
シャーマンが近づく。
「お前は、この世界の者ではない」
鍵が淡く光る。
完璧な発音で、彼は答えた。
「そうかもしれない。だが、あなた方が生き延びる手助けはできる」
老人は震える。
恐怖ではない。
理解ゆえに。
背後で戦士たちが膝をつく。
征服者へではない。
天に挑み、
それを退けた者へ。




