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転生してもムショクでした ~無能と呼ばれた『無色』の魔導士は色に染まって無双する~  作者: 越水けい
緑の章

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五十六話 騒乱の予兆


 リツは森の中を一人、静かに歩いていた。


――物音がした。


 木陰から何者かが飛び出して来る。リツは咄嗟に刀を抜いた。


「誰だ?」

「俺だよ、サーナー! 四人衆の『神速』の!」


 サーナーは額に汗を浮かべながら必死に答える。


「サーナー……確かにいたな。俺とチームを組もうとしてるのか?」

「おう。リツさんと組めれば俺にとっては大儲けな訳だけど」

「まぁいい。キューブは持ってるのか?」


 リツは刀を納めながら、サーナーに問う。


「一個持ってるぜ。他のチームから俺の俊足で盗んできた」

「俺も一つだ。よし。ならば、次のヒントを探すとしよう」

「そうだな」


 早々にチームが成立すると、二人は歩き始める。


 そのとき。


「見つけたぞ!この泥棒めがぁ!」

「やべ! 見つかった!」


 サーナーが来た方向から、さらに二人のレンジャーがそれぞれ武器を構えて現れた。


「今のところお前とチームを組んで損しかないのだが」

「これから挽回すっから今は手伝ってくれ! 頼む!」

「仕方ないな」


 サーナーは拳を構え、リツも再び刀を抜く。


「覚悟しやがれ泥棒! 烈火斬!」

「大海の斧撃!」


 サーナーを追ってきた二人のレンジャーが、技を繰り出す。


「ライジングダッシュ!」


 サーナーは、魔法の隙間をかいくぐり、赤の魔導士の背後から拳を数発叩き込んだ。


「くそ!」

「千羽鶴・雪嵐!」


 リツも、藍の魔導士に吹雪にのせた千羽鶴放つ。


 藍の魔導士は折り鶴の嵐に揉まれ、戦意を失った。


「お前、俺も寒いからやめろ!」

「そういえば、イエローの出身は寒さに弱かったな」

「そうだ! つっても、こいつらあっけねえな」


 サーナーが赤の魔導士を踏みつけながら言う。


「それだけ俺たちが強くなっているということだろう」

「ハッ、お前たちの優勢もこれで終わりだぜ、こっちには紫のレンジャー選抜、リェナ様がいるからなぁ!」


 赤の魔導士が地面に突っ伏しながら笑う。


「紫の選抜だと?」

「リツ、魔法陣だ! 避けろ!」


 二人が気付いた時には既に、空中に魔法陣が描きあがっていた。サーナーは急いで範囲から脱出するが、リツは間に合わない。


「え、リェナ様、これじゃ俺らも……」

「さっ、パーティーの時間だよっ! 混沌の饗宴(カオスフィースト)!!」


 どこからともなく、おどけたような声がすると、魔法陣が発動し、範囲内の樹木、土、空気、人間がまるでポルターガイストのようにごちゃ混ぜのもみくちゃにされる。


 しかし、リツはこの嵐の中、苦しみながらも立ち上がる。


「あれ、この魔法を食らって立っていられるなんて、キミすごいね」

「お前がリェナか……」


 リツが木の上に座る、紫髪のショートカットの、中性的な女性を睨みつける。リェナの手には紫色に光る透き通った球体が収められていた。


「そう。ボクがリェナ。そこの人たちとはさっき知り合ったんだけど、あんまり役に立たなかったみたいだね」


 リェナは八重歯を見せて笑う。


「それで、どうするんだ。まだ戦うのか」

「いやぁ。もういいよ。よかったらボクを仲間に入れてくれない?」


 リェナが木から飛び降りる。身長はリツよりもずっと低かった。


「そうだな。絶対に入れた方がいいぜ、リツ」

「いきなりどうした? サーナー」

「リツには見えないのか? リェナ様のあのオーラが! ありゃタダ者じゃねえ! 仲間にするのが正解だぜ!」


 サーナーが虚ろな目でまくし立てる。リェナは相変わらずにやにやと笑っている。


「リェナ様だと? お前、何を言って……いや、そうか確かにそうだな……」


 リツも一度は違和感を覚えたが、すぐに了承した。


「よかった! 二人ともよろしくね!」

「ああ……よろしく頼む」

「やったぜ! リェナ様がいれば百人力だ!」


 こうして三人のチームが成立した。


「ちょろいなぁ……」


 リェナは勝利を確信し、小さく呟いた。


 そのすぐ後だった。


 森の奥から大きな音が聞こえた。


「ぐぁぁ!」


――突如、草むらから鎧を着た金髪の男が現れた。男は何か、黒い魔法で体を蝕まれていて、息苦しそうにうめいている。


「うわぁ! 何だ?」

「お前たちも……逃げろ……」


 金髪の男はそう言うと、倒れこんでしまう。


「ダメダメ! 君たちは無色君を黒く染めるための餌なんだから。下僕ちゃんたち、逃がさないでねー」


 奥から、さらに深緑色の髪を一つに結んだ女と、その部下と思われる顔を隠した不気味な集団が現れる。


 その集団は、オレンジ髪の少女を追っているようだった。


「あなた何なの! もうやめて……!」


 ダガーを構えた少女は息を切らしながら叫ぶ。


「ソニア……! 無理はするな!」


 金髪の青年も良き絶え絶えに声を上げるが、ソニアには届かない。


「二人とも、無色の魔導士くんを知ってるでしょ? 仲いいの? て、あれ。蜃気楼かぁ」


 集団のリーダー格、深緑の髪の少女は手に構えた弓でソニアを狙って矢を放つが、外してしまう。


「じゃあここかな……?」


 深緑の少女は弓を構え直す。


 しかし次の瞬間、彼女の右腕はリツの刀によって飛ばされていた。


「あれ?」

「何者だ? お前」


 リツが問う。


「それより、君は無色の魔導士くん知ってる?」


 少女は腕が飛んだことを気にもしないように、リツへ質問を返す。


「お前が名乗れば答える」

「しょーがないなぁ。私はヴァルヴァラ。七戦帝の一人だよ」

「やっぱりか……サーナー、近くの教師かレンジャーを呼んできてくれ」


 正気に戻ったリツはサーナーに小さな声で話す。


「でもリェナ様を……いや、何だよリェナ様って……! クソ! 分かった、すぐ助けを呼んでくる!」


 サーナーも正気に戻ると、すぐに森の中へ駆けて行った。


「サーナーも魔法が解けたか。良かった。それで、七戦帝がこんなところに何をしに来た?」

「無色の魔導士くんを堕落させるためだよ? それで、仲のいい子を目の前で殺すのが一番かなって思ってさ。拷問はしちゃだめって陛下に言われたし……」


 ヴァルヴァラは面倒そうに返す。


「お前たち、ボク抜きで話を進めるんじゃないよ」


 リェナが話に割り込む。


「俺に奇妙な魔法をかけて操ってたやつがよく言うな」

「それはボクの『オーラ』に負ける君たちが悪いんだよ。このヴァルヴァラとかいうやつも、オーラを使えば余裕だね」


 リェナは向かってくるヴァルヴァラの部下たちを水晶玉を操作して吹き飛ばしていく。


「オーラ? 何それ」

「まぁまぁ。一度ボクのことをリェナ様って呼んでみなよ」


 リェナはヴァルヴァラ前まで来ると、挑発するように笑った。


「んー、よくわかんないけど、君は無色の魔導士を知ってるの?」

「――オーラが効かない?」


 ヴァルヴァラは平然としていた。

 

 そして、何食わぬ顔でリェナの顔を掴むと、宙に持ち上げた。


「ふぎゅ……」

「何か精神に作用する魔法でも使ってたのかな? だとしたらゴメンね、私人間じゃないんだ」


 そのまま、ヴァルヴァラはリェナに魔法でカビを植え付けると、地面に放り投げた。


「がぁっ!?」

「あ、また無色君を知ってるか聞く前に喋れなくしちゃったぁ。どうしよ」


 ヴァルヴァラは困り顔を見せる。


「どいてろリェナ! 連鶴!」


 そこに、リツがリェナを振り払って割り込む。


「グルーミースナイプ」

「ぐっ……」


 リツはヴァルヴァラの迎撃に一度引く。


 さらに、攻撃を受けていないはずリツの体にカビが植え付けられていた。


「カビを植えられたリェナ君に触ったでしょ? そのカビはね、一度でも触れたら人から人にうつるんだよ」


 ヴァルヴァラは苦しむリツたちを前にして笑顔を見せる。


「うーん、先にカビを植えた二人はもう死んじゃいそうだなぁ。いつもみたいに、脳に植物植え付けてお人形さんにしよっかなぁ。レンジャーだし、ちょっとは使えるでしょ」


 そう言って金髪の騎士とソニアの元へ歩いていく。


「ふざけんな……」


 リツが刀を杖にして立ち上がる。


「しぶといねぇ。まともに息もできないはずなのに」

「千羽鶴!」


 ほとんど息をしていない状態の中、リツは力を振り絞り、刀を振るう。


「ムダムダ。下僕ちゃんたち、適当に相手してて」

「ぐぁぁぁ! 待てぇ!」


 リツの攻撃は下僕たちの捨て身の防御によって防がれる。


「執念だけは立派かもだけど、それだけじゃカビは克服できないんだよ?」

「何も執念だけで勝とうとはしていない……!」


 そう言い放ったリツは既にカビを克服していた。


「何で? どうしてカビが消えてるの?」

「ボクのカビも治った……? リツ、君まさか……」


 リェナが驚愕の目でリツを見る。


「聖の魔法。やっと使えるようになった」


 リツが静かに呟く。


「聖の魔法で黒の魔法を浄化したのかぁ。レンジャーにそれをされるとは思わなかったなぁ」


 ヴァルヴァラも目を丸くする。


「聖域!」

「うわ、まぶし!」


 リツの周囲に、聖の魔法による領域が展開される。これで黒の攻撃はリツに届く前に浄化される。


 そして、


「終わりだ! 奥義、廓然無聖かくねんむしょう!」


 リツが放った聖の魔法による究極の一撃は、下僕たちと共に、ヴァルヴァラを引き裂いた。



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