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転生してもムショクでした ~無能と呼ばれた『無色』の魔導士は色に染まって無双する~  作者: 越水けい
緑の章

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五十五話 森のプロフェッショナル


 俺たちは二手に分かれながらヒント探しを続けていた。こういうときに俊歩は役に立つ。白鷺も使おうかと思ったが、魔力は温存しておいた方がいいだろう。


「あった! ヒントだ」

「流石だ。君は身軽だね。ヒントには何が書いてある?」


 手にした紙を見ると、見慣れない文字と魔法陣が書かれていた。


「何だこれ、八人の英雄は神託の元に? その下は青の魔法陣が書いてあるな……また一文字欠けてる」

「八人の英雄……二百年前の大戦のことかな」


 パーシーがあごに手を当てる。


「大戦?」

「大戦をご存じない……? 常識では?」

「悪い、俺は記憶喪失なんだ」


 俺は頭をかいてごまかす。

「あ、それはすまない。二百年前の大戦とは、オクト帝国が成立してからすぐ、黒の帝国とオクトの間で起きた、史上最大規模の戦争のことだ。」

「それで、結果は?」

「引き分けさ。お互い激しく消耗して、決着がつかなかった。だから今もオクトと黒の帝国は『停戦中』なんだ」

「そうだったのか……」


 二百年前って言ったら、黒の帝王がこっちの世界に転生してきたのも二百年前だったよな。何か関係があるかもしれない。


「八人の英雄はこの戦争で活躍した八人の戦士たちのことさ。今で言うマスターだね。そして魔法陣は青色だから……」

「青の英雄を表してるのか」

「そうだね。青の英雄の二つ名は『永劫の女王』。だからここには永劫を意味する単語を……」


 パーシーはすらすらと魔法陣に書き込んでいく。


「よし。トオル、魔力をお願い」

「分かった。行くぞ」


 青の魔法陣を起動させるには青の魔力が必要だ。だがあいにく、俺の体内には青の魔力は無い。代わりにあるのは藍の魔力だ。


 ならば。


 藍と白の魔力を合わせたら青の魔力になるのでは? と思ったのでやってみると、成功した。


 魔法陣が起動すると、氷の魔弾が離れた木へと向かって行った。


「あそこか! 今度こそはハズレじゃないといいのだけど……」


 俺とパーシーは一緒に魔法が示した場所へ向かう。


「無い……すまないね。僕のせいで」

「大丈夫。切り替えて次に行こう」


――そのとき、木と木の隙間から鋭い攻撃が差し込まれる。


 俺は潜海を使ってそれを避ける。


「矢?」

「俺の矢を避けたのは誰かと思ったら、トオルじゃないか」


 木々の間から顔を出したのは、上半身裸で高身長の男。


「ティムール!」

「すまないね。君たちがキューブを持っていると思って、奪おうと考えていたんだが、トオルが相手なら話は変わるな」


 ティムールは弓をしまう。


「あいにく、俺たちはキューブを一つも持ってないよ。ヒントが全部ハズレだったんだ。ティムールは?」

「俺は一つ手に入れた。それにしても、ハズレのヒントなんてのもあるのか」

「そうみたいだね。ティムールも俺たちに協力してくれるか?」

「いいぞ。この試験、チームを組まないとかなり厳しいルールだしな」


 これでチームは三人。メンバーが増えすぎるとキューブもその分大量に集めないといけなくなるから、このぐらいがちょうどいいだろう。


「よし。次のヒントを探そうか」

「それならあっちにあるぞ?」


 ティムールは俺の左手側を指さす。


「え、どこ」


 木しか見えないが。


「そうか、君たちには見えないのか。俺たち緑の魔導士はこんな山の中でずっと暮らしてるものだから目がいいんだ。多分君たちの二倍ぐらいは」


 二倍? 視力2.0はあるのか。


「マジか……ちょっとヒント取ってくる」


 俊歩を使って軽々と木々の間を走り抜けていくうちにヒントが見つかった。本当にあったな。超視力すげえ。


「ほい。取ってきたぞ。パーシー、解読頼む」

「任せてくれ。これぐらいしかできないからね」


 頭を使うようなものは俺にはさっぱりなので、こういうのはパーシーに丸投げしてしまう。ティムールがヒントを見つけて俺がそれを取って、パーシーが解読する。いい具合に役割分担できているんじゃないだろうか。


「解けた。緑の魔力を頼む」

「うむ」


 ティムールが手を当てると、魔法陣が発動した。


 射出された魔法の矢はまた数メートル先の木に刺さって消えた。


「あっちだ」

「待て。何かおかしい。さっきと景色が違う」

「どういうことだ?」


 景色が違う? 森の景色なんていちいち覚えてられない俺たちにとっては何のことだか。


「なるほど……蜃気楼か」

「何だって?」


 蜃気楼って確か海とかでなる小さい奴が大きく見えたり、そこにあるはずのないものが見えたりするとかいう、あれか。


 そんなことを考えている間に、ティムールは弓を構えていた。


「フォレストスナイプ」

「うぎゃ!」


 ティムールが放った矢が草むらに入り込み、何者かに命中した。


 その拍子に、沢山のキューブが地面に散らばった。


「キューブがこんなに?」

「蜃気楼でキューブの位置を誤認させて、その間に本当の場所にあるキューブを盗んでいたようだ。橙色は熱の魔法が使えるからな」


 ティムールは落としたキューブを必死に拾っている女性を見て言った。確かに彼女は橙色の髪と目をしている。


「でもそれじゃあ、本当の場所を先に特定してないとできないよな?」

「魔法を発動させる前にキューブの座標を知ることが出来る奴が一人だけいるだろう」

「まさか……パーシー、お前……」


 パーシーの顔が曇る。


「一体何を言っているんだい? 魔法陣から魔法の飛ぶ座標を計算するのは簡単じゃないんだよ? その彼女が俺たちの後をつけていただけだろう」

「ちょっとシヴァ。罪を私だけに押し付ける気ぃ?」


 橙色の女性が声をあげた。パーシヴァルだからシヴァか? わかりにくい。


「ソニア。バラすのが早いぞ」


 パーシーが呆れたように返す。


「じゃあ……」

「そうだよ。僕が先に座標を計算して、魔法で座標をソニアに伝えてたんだ。あとは蜃気楼でキューブの位置を誤認させてる間にソニアがキューブを回収する。チームに入りながらキューブを効率的に集められると言う訳さ」

 敵ながら、頭いい方法を思いつくもんだな。そこは感心する。ただ、山のプロであるティムールと出会ったのが運の尽きだったか。


「なるほど、キューブを返してもらおうか?」

「私たちがタダで返すとでも?」


 橙色の盗人、ソニアは懐からダガーを取り出した。


「戦うならそれでもいいよ」


 俺も刀を構える。


「いいだろう。数も二対二でちょうどいい」


 パーシーの武器は長剣のようだ。


「パーシー、あんた足引っ張んないでよ」

「俺をあまり見くびらないことだ……! アイシクルブレード!」


 氷を纏った長剣と共にパーシーが俺に襲い掛かる。


 だが、甘い。気迫も何も感じられない。これまで鬼気迫る様な戦いばかりしてきたからか? この剣はまだ、誰も本気で斬ったことがないような、そんな感じがする。


「紅蓮!」


 まずは炎で氷を相殺。赤の魔法から優先的に使っていこう。


「紅桜!」


 がら空きの胸元に突きを一撃。


「何?」

「まだまだ。一閃!」


 間合いを作ろうとするパーシーに高速で追いつくと、光をまとわせた一撃で彼を吹き飛ばす。


 ティムールもソニアに矢を放つところだった。


「蜃気楼も仕掛けが分かればどうということは無い。ドレインアロー!」


 弓から放たれた緑色の矢たちは蜃気楼で身を隠したソニアを的確に捕えていた。


「何だこれ、追尾機能付きかよ!」


 皮脂に逃げ惑うソニアを矢たちは追いまわし、命中させた。


「俺たちの勝ちだな」


 ティムールが散らばったキューブを回収する。


「悪いなパーシー、ソニア。運がなかったってことで勘弁してくれ」

「良い作戦だと思ったんだけどなぁ……」


 パーシーは息をついた。


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