五十三話 勢ぞろい
はい。特訓終了。
今日が試験当日。既に俺たちはエリアグリーンに着いている。
周りには、他の受験生たちがぞろぞろと並んでいる。多分1000人ぐらいだ。
「よっしゃあ! みんなで合格するぞ!」
俺は分かりやすく浮かれていた。この調子で試験も受かればいいんだけど。
「うん!」
「ああ」
アカリとリツ、フブキたちが一様に応えた。
「久しぶりです! トオルさんにアカリさん!」
そこにはまた少し垢抜けた様子のモルがいた。紺色のショートヘアは健在だ。その横には、丸眼鏡をかけた身長の低い青い髪の女の子が立っていた。
「モル! と、シンシアさん?」
「シンシア・ノーブル。よろしく」
彼女は青色の瞳を逸らしながらぶっきらぼうに言った。
「うん、よろしく」
「私たちも負けないですからね?」
モルが挑戦的な目で俺たちを見る。
「楽しみにしてるわ」
アカリも笑って返す。
「おお、誰かと思ったらトオルたちかぁ。今日はよろしくな!」
今度は黄色い髪の何人かがこちらに向かって来ていた。
「ダミニとサーナーたちか!」
「今度こそ俺が勝ってやるぜ!」
サーナーが俺に拳を向ける。
「ああ。俺も負けない」
俺も自信をもって答える。
「リツ! リベンジしてやる!」
「望むところだ」
横ではダッデムがリツに宣言しているところだった。
「トオル……前は世話になったな」
後ろから急に声をかけられて振り向くと、今度はジンがいた。
「ジン。一緒に合格できるといいな」
「そうやって下手に誰でも信用する奴ほど落ちていくんだぞ」
ジンは呆れたように言う。
「それはわからないだろ?」
「去年の悪夢を知らない奴は気楽でいいな……」
「そんなになのかよ」
そこまで言われるとどんな試験だったのか気になるな。
辺りを見渡すと、ティムールらしき姿も見つけられた。そういえば、紫のレンジャーもこの試験に参加してるんだな。
「時間になったようですよ」
モルが俺たちに声をかける。それとともに、前に立っている八人の大人たちに俺たちは目を向けた。
「私は学園で『開拓術』を教えている、ゾーヤだ。推薦を受けた生徒は一通り集まったかな?」
緑色の髪を短く切り、例に漏れず豪快な服装をした女性が名乗る。
「今回の試験のルールは簡単だ! この先の森に散らばったヒントを元にこのキューブ……まあお宝を探すんだ。制限時間の四時間の間にキューブを多く持っていた人を上から数人合格にする。以上だ!」
ゾーヤは快活にルールを説明しきると満足そうに全員を見渡した。
「うわ―シンプル」
「だが奥が深い」
リツが口を挟む。
「そうなの?」
「そうね。このルールの大事なところは、キューブをチームで共有できないってところ。だからこの試験の中でチームを組んでも、味方を裏切ってキューブを全取りするか、公平に分配するのかで駆け引きが出てくるということね」
フブキが色々と説明してくれた。
「なるほど……」
わからん。
取り敢えず裏切りには注意しておこう。
「それじゃあ、合図同時に君たちを一人一人ランダムに森の中に転送するから頑張ってね! 運が良ければ目の前にキューブがあるかも?」
そんな馬鹿な。
「それじゃあ、試験開始!」
ゾーヤさんは元気よく試験の始まりを宣言した。
◇
エリアグリーン国境周辺、屍の森にて。
「ヴァルヴァラさん、何故俺たちまでここに?」
ベルセルクは緑の七戦帝、ヴァルヴァラに問う。
「なぜって、今度の敵は結構多いからねー。私だけの手じゃとても負えないよ」
ヴァルヴァラはポニーテールを揺らしながら明るく答える、
「それで俺と御子、それに直属部隊の部下たちまで……」
ベルセルクたちの後ろには、総勢数百を超える部隊が整列していた。
「そう。陛下のためならみんな頑張ってくれるよね?」
「そりゃあ、まあ」
御子もこくりと頷く。
「ですけどエキスパート八人にマスター一人、レンジャーが数百人……正直これでも少ないぐらいでは」
「だからね、もう一人呼んだの」
「もう一人?」
ベルセルクは首をかしげる、
「俺だ」
彼の背後から現れたのは大柄な黒色の騎士。
「ディザス隊長!」
「これで安心でしょ」
ヴァルヴァラがキラキラした目で笑う。
「そうですね」
「ふん……」
ディザスはあまり乗り気ではないようだった。
「それじゃ、ベルセル君。エリアグリーンまで転送よろしく!」
「了解です」
その合図と共にベルセルクが部隊の転送を始める。
エリアグリーンの危機は既に迫り始めていた。




