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転生してもムショクでした ~無能と呼ばれた『無色』の魔導士は色に染まって無双する~  作者: 越水けい
赤の章

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四十九話 完全燃焼

 

 ヒジリさんの刀は重かった。

 それだけ魔力が詰まっていた。聖の魔力も。


 俺はヒジリさんの右腕の傷口を治癒で塞ぐと、すぐに刀を抜いてブラッドの元へ駆ける。


「千羽鶴・紅白!」


 赤と白に彩られた鶴たちがブラッドにまとわりつく。


「小賢しい! 紅蓮!」


 ブラッドはこれを簡単に焼き尽くす。でもそれでいい。


「雪吹雪!」

「獄炎!」


 雪はすぐに蒸発した。俺はブラッドに突き刺した後に落ちていた刀を拾う。


「刀を拾うためだと?」


 動揺しているブラッドの横腹に再び左手で刀を突き刺す。


「鳴神!」

「――グゥッ!」


 刀を捻りながら雷をゼロ距離で打ち込む。ブラッドの体は焦げ付き、出血も収まらない。しかしブラッドはなおも立っている。


 これだけの攻撃を食らっても倒れないのか。けれど、血の鎧はみんなのおかげで剥がれかかっている。あともう一押しだ。俺の全力を打ち込むんだ。


 目が燃えるように熱い。体の内から湧いてくる力で俺は震えていた。


「奥義、死屍累々!」


 周囲に黒く激しく燃える炎が広がる。その光景はさながら地獄だ。


 俺も右手に持った刀を構え、足を踏み出す。『黄』の雷、『白』の光、『赤』の炎……全てを込めて魔法を放つ。


「奥義、電光石火!!」


 雷のように鋭く、光のように速く、炎のように激しい一撃はブラッドの鎧を貫き、心臓を切り裂いた。もう震えは止まっていた。


「我が、滅ぶ……だと?」


 ブラッドは自分の敗北に気づかないまま、崩れ落ちた。体は灰のようになり、消え去っていった。


「あんたのしてたことは復讐なんかじゃない。ただの殺戮だ」


 俺は刀を鞘に納める。


 そして、燃え尽きたように倒れた。





 目を覚ますと、病室の天井が目に飛び込んできた。


「またこうなるんだな」


 おかしいな。もうこうはならないはずだったんだけどな。


「起きた?」


 アカリがこちらをのぞき込む。


「起きたよ。それよりもヒジリさんは……」

「傷がすぐに塞がったおかげで出血も少なくて済んだみたい。今はセントラルから来たお医者さんの治療も受けて寝てるわ」

「よかった……」


 この感じだと、俺が倒れてから少しでセントラルから増援が来たのだろう。クオンとジンの魔法陣の解除はうまくいったみたいだな。


「みんなを助けてくれて本当にありがとう……足を引っ張ってごめんなさい……」


 またアカリは顔を曇らせる。彼女の気持ちも分かるけど、それにしたって自分を責めすぎだ。


「俺は恩を返しただけだよ。俺はアカリのおかげでレンジャーになれたし、自分に少しは自信が持てるようになったんだから。アカリにそんな顔はして欲しくない」

「自信……」

「アカリは十分良い人だよ。良い人過ぎるから自分で自分を苦しめちゃってるんだと思う。でも、もっと自分に優しくしてもいいんじゃないかな」


 俺はもともと人に説教じみたことするようなタイプではなかったのだけど。俺もこっちに来て随分変わったみたいだな。


「自分に優しく……やってみる……」


 アカリはこくりと頷く。


「うん。アカリは笑ってた方がいい。その方がずっと似合ってる」


 またガラでもないことを言って。俺と来たら。こういうことはイケメンが言うから、かろうじて許されるやつだろうに。


「ありがとう……まっまた、様子見に来るわね……」


 ほら言わんこっちゃない。微妙な空気に耐えかねて出ていかれたよ。


 俺、疲れてるんだな。


――寝よう。

 




 ボロボロになった家を前にして、レッカ家の各々が揃っていた。


「父さんは最初からこうしようとしてたのかもしれないな」


 リンが呟く。


「それは、自分が犠牲になるということを?」


 ショウは困惑気味だった。


「ブラッドの正体も、私たちが偽物のレッカの一族であることも知っていたから、自分を犠牲にしてでもみんなを助けたかったのかもしれぬな」

「……」


 クオンとジンは黙り込んでいる。


「最後まで父上の考えていることは分からなかったな」


 そう言ったショウは、父親から愛情という愛情を受けたことがなかった。


「ずっと一人で罪を背負っているつもりだったのかな……」


 クオンがぼそりと呟く。


「父上は素直じゃないなぁ。私たちのことも頼ってくれればよかったのにさ」

「そうだな。それで、これからどうするんだ。次期マスターさん」


 ショウがリンに聞く。


「なっ! 私が、マスター……?」


 リンは驚きのあまり言葉を詰まらせる。


「他にエキスパートの人がいないじゃないですか。父さんも学園は卒業したけどレンジャー止まりだから」


 ジンが割って入る。


「お前なぁ……」


 ショウは苦い顔をする。


「分かった。私が父上の跡を継ごう」


 リンは顔を上げて言った。


「まずは都の再起だ。付いてきてくれるか」


「もちろん」

「姉様の言うことなら何でも聞きます……!」

「はい」


 ショウ、クオン、ジンの三人も頷いた。


「レッカの名は偽物でも、私たちの繋がりは偽物じゃない。私たちが新しい歴史を作るんだ」


 リンは槍を天に掲げた。


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