四十七話 奥の手
「鳥が邪魔をするなぁ!」
ジン(の中に入ったリーパー)が白鷺を槍で突く。白鷺はそれをはらりとかわすと、リーパーを挑発するように周りを飛び回る。
「物騒ピヨねぇ」
「何しに出て来たんだ?」
「みんなを助けるためピヨ」
「いや、どうやって……」
白鷺、今回ばかりはお前の出番ではない気がするぞ。
「不死鳥の癖に体乗っ取られるとか恥ずかしくないピヨかねぇ?」
白鷺はリーパー、いや不死鳥を挑発し始める。
「何を言ってる?」
リーパー本人は意味を理解できていない。ジンの槍を使って白鷺を突き刺そうと必死だ。
「無理しないでね」
アカリは白鷺の心配をしている。相変わらず優しいな。本人は自分のことを偽善者とか言ってるけど普通に良い人だよな。全人類、こういう人を妻にしたいよな。
じゃなくて。白鷺が使用としていることは多分、ジンの中の不死鳥を目覚めさせて、リーパーをジンの体から追い出すということだろう。
「いいぞもっとやれ」
「えぇ……」
アカリは俺を見て少し引く。
当の白鷺はリーパーの周りを飛び回っている。
「フェニックスフレイム(笑)出してほしいピヨねぇ」
痛いところを突くのがうまいな。これも頭がいいからなのか。
「貴様ぁぁぁ! 燃えカスにされたいかぁ!」
遂に白鷺の目論見は成功したみたいだ。ジンの包帯が燃え、不死鳥を引き出すことに成功した。リーパーはジンからはじき出される。
「いっちょ上がりピヨ」
いつものドヤ顔が光る。
「サンキュー白鷺。後で魔力あげる」
「期待してるピヨ」
白鷺は消えて行った。
「馬鹿な! 自力で私の憑依を破っただと?」
リーパーは状況を飲み込めていないようだ。まぁ仕方ない。
「お前が俺の中に勝手に入り込んだ輩か!」
ジン(の中に入った不死鳥)がリーパーに凄む。
「え?」
「灰塵と化せ! 終焉之業火!」
ジンの槍から放たれた真っ赤な炎はリーパーを燃やし、吹き飛ばした。
「私の扱い酷すぎ……!」
リーパーは断末魔を残して倒れた。
「この人、どうするの?」
「憲兵に引き渡そう。それより、壁の魔法が解けてない」
リーパーは気絶していたが、まだ周囲には黒い壁が残っていた。
「多分、呪いの魔法を使って自分の怨念を動力にしてるんだと思います。私、魔法陣の知識ならあるので解除できますよ」
いつの間にかクオンが起き上がっていた。今度は最初に会ったクオンだ。
「そうなのか! じゃあ解除を頼んでいいか」
「はい。でも、私もう魔力が残って無くて……」
「なら俺が手伝う。魔力は残っている。あいにく体は動かないがな」
ジンがぐったりとした様子で戻ってきた。
「ジン! もう戻ってたのか」
「ああ。俺も少しは不死鳥を制御できるようになったらしい」
ジンは右腕の不死鳥の刺青に触れる。
「じゃあ、ここは二人に任せようかしら」
「お前たちはブラッドのところに行くのか?」
「うん。俺たちが行ってもそんなに役に立てなそうではあるけどね……」
マスター二人とエキスパート一人、あとショウさんがいて勝てないようなら俺たちが行ってもほとんど無意味だろう。
「そうね……」
アカリが俯きながら言葉を返した瞬間、何かが消えたような感覚がした。
これまであったものが忽然と消えたような……炎が燃え尽きてしまったような……
「……いや、まずいぞ。アカリ。急ごう」
俺はアカリの手を引き、走り出す。全力で向かえば一分もせずに着くか。
「え? どうしたの?」
「ガイさんの魔力を感じない」
「嘘?」
アカリはきっと困惑しているだろう。でも、急がなければ。マスターが負けるほどの事態が起きているのだとすれば……それは考え得る限り最悪な状況に近い。ここで走らなければきっと俺はずっと後悔し続けるだろう。
だから、今はとにかく走る。
走った先にどれだけ絶望的な結果が待っていようとも。
◇
ブラッドはいまだに疲労を見せていなかった。数発ほど攻撃は食らっているものの、それらはすべて血が固まって塞がり、その部分は緋色の鎧のように固く頑丈なものになっていた。
「お前! 父上の想いを踏みにじりやがって!」
リンが細長い槍を連続で突く。ブラッドもそれを何発か食らいながらも焦りを見せずにいる。もはやわざと攻撃を食らっているようだった。
「我の想いを踏みにじったのはこの男だ。今は骨一つ残っておらんがな」
「お前を骨すら残さず燃やしてやるよ! 紅蓮!」
槍の先端から激しい炎が巻き起こる。その炎はブラッドを包み、焼いた。
「獄炎」
ブラッドは炎を獄炎で焼き尽くすと、そのまま獄炎を纏わせた手でリンの槍を振り払った。リンはその勢いに巻き込まれて吹き飛ばされる。
「聖域」
次の瞬間、ヒジリが獄炎を打ち消してブラッドを斬り飛ばした。
「周りが光ってる?」
「どいてろ嬢ちゃん。奥の手を使う」
ヒジリは既に覚悟を決めていた。彼の周りには聖の魔法による浄化の空間が広がっている。そこに入り込んだ黒の魔力は浄化され、その凶暴さを失う。
「死なばもろとも、か。お前は標的ではないのだがな」
聖の魔法の危険性を知っていたブラッドはヒジリの覚悟を推し量る。
「復讐するんだったら、復讐される覚悟ぐらいは持っておくんだな」
「最初から覚悟は決めている。我に復讐をすると言った奴らは全員、我が返り討ちにした。皆覚悟が足りなかったのだな」
「なら俺がお前の覚悟を超えてやるよ」
ヒジリは刀にも聖の魔力を纏わせる。
「それは無理だ」
ブラッドは死んだような眼でヒジリを眺める。彼にとってヒジリを殺すということは、これまでの復讐者を殺すことと大差のないことだった。




