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転生してもムショクでした ~無能と呼ばれた『無色』の魔導士は色に染まって無双する~  作者: 越水けい
黄の章

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三十六話 無の価値

 

「みんな怯むことはねぇ! あいつの意識の外から攻撃をするんだ!」


 ライガルが叫ぶ。全方位と言っても、バランの頭部と足の下、つまり地面にはブラックホールは展開されていない。その僅かな隙を狙えということだろう。


「ランドボルテージ!」


 雷と地面の魔法がバランを上下から挟み撃ちにする。しかし、バランは重力を操作して自分の体を浮かせると、自分の上下にブラックホールを移動させて攻撃を無力化した。


「魔力をありったけぶつけろ! 奴の魔力は増し続けてる! これ以上強くさせたら倒せなくなるぞ!」

「無駄だ。お前たちの魔法をどれだけ集めても、俺の前では無力だ!」


 俺たちは必至に攻撃を重ねるが、どれもブラックホールに吸収されてしまう。


「ゼログラビティ!」


 バランがそう唱えると、俺たちの周囲の重力が消え、俺たちの体は浮かび上がった。


「体の自由が利かねぇ!」

「オーバーグラビティ!」


 更にバランは重力を圧縮した魔力を俺たちに放った。それを食らった瞬間俺たちは信じられないような速さで地面に叩き付けられる。俺は慌てて硬化の魔法を使うが、落下の衝撃は俺たちの体の自由を封じるには十分なものだった。俺は急いで治癒の魔法を使って体の骨折を治す。


 イエローの魔導士は硬化が使えるからまだ骨折も軽度で済んでいるかもしれないが、アカリやリツはそうもいかないだろう。現に、俺以外の皆はこの超重力下で立ち上がることすらできない。


「アカリ、いや、リツ。刀を借りる」


 俺はリツに歩み寄り、手を伸ばす。


「アカリの刀を壊すのは気が引けるか?」

「ああ。あれは俺には壊せない」


 ガンナーを倒すときにアカリの刀を借りたときのことだった。俺はヒジリさんの刀を持った時のように、刀に残留した魔力を感じた。その中には、アカリのものではない赤の魔力もあったのだ。多分、あの刀はアカリが母から貰ったもの。そんなものをここで使うわけにはいかない。


 俺はこれからバランを倒しに行くのだから。


「俺の刀も安物ではないんだがな。まあいい。その代わり、代金は払えよ」

「分かってるよ」


 俺はリツから刀を受け取ると、ゆっくりとバランに近づいていく。俊歩と潜海を使っても、この超重力下ではゆっくり歩くので精一杯だからだ。


「無茶だ! バランに一人で立ち向かうなんて!」

「トオルなら大丈夫よ。トオルは一人じゃないんだから」


 俺を制止するダミニをアカリが諭す。アカリの言う通り、俺は一人じゃない。俺の瞳には全員の魔力が閉じ込められている。


「雑魚に用は無い。潰れろ」


 バランは重力を圧縮した魔弾を次々と俺に放つが、俺は潜海の効果で全てを見切り、避ける。


「今度は俺の番だな」

「何故潰れない!」


 周囲の重力が更に強くなる。俺はさらに体を軽くして対抗する。


「一閃!」

「無駄だ!」


 俺は刀を横に振り、光の斬撃を放つ。しかしそれは簡単にブラックホールに吸収される。


「それは目くらましだ。ライジングブレイカー!」


 続いて特大の雷を放つ。バランは少し体制を崩しながらも、これを吸収する。


「目の色をコロコロ変えおって……」

「まだ変わるぞ。操舵奪取ラダージャック!」

「それも無駄だ! 何?」


 俺はブラックホールに刀を突き刺す。そして、ブラックホールの流れを変え、ブラックホール同士を吸い込み合わせる。


「ぐぁぁぁ!」


 ブラックホールの圧倒的な引力に吸い寄せられそうになりながらも、俺は全てのブラックホールを引き寄せようと、鉛のように重い刀をゆっくりと動かす。


 やがて、全てのブラックホールはお互いに干渉し合い、消滅した。


「ブラックホール同士が打ち消し合っただと?」

「嘘だろ? そんなのアリかよ!」


 ラトゥールも驚いている。


「攻撃の流れを変える技だ」


 刀は吸い込まれてしまったが、拳が残っている。俺は全魔力を右手に集中させ、バランに飛び掛かる。


「ブラックホールを消したぐらいで粋がるな! ゼログラビティ!」


 バランは再び周囲の重力を無くした。まずい! 体勢が崩れてこのままじゃ殴れない!


 次の瞬間、俺の背後にダミニが浮遊しているのが見えた。


「ダミニ!」

「行け! トオル!」

 

 ダミニは自分の足に魔力を集中させ、俺の体をバランに向けて蹴り出した。無重力下で強烈なキックを受けた俺は、その勢いをそのままバランに向けての攻撃に利用する。


「ああ! 皆の魔法は無駄じゃない! 奥義! 雷霆万鈞らいていばんきん!」


 強力な雷の魔力、更に地面、紙、雪、光、桜、氷……様々な魔力がごちゃ混ぜになった粗削りな一撃は、バランの強力な硬化をも打ち破り、彼の体をコロシアムの壁面に打ち付けた。それと同時に重力が元に戻る。


「まだだぁ! 俺は強いんだ……! こんな雑魚などにぃ……」


 砂埃の中からバランがよろよろと立ち上がり、こちらに手を向ける。これでまだ立たれたらもう俺は戦えない。そう思ったその瞬間、バランは自身の生成したブラックホールに飲み込まれ、跡形もなく消滅した。


「力に溺れたか」


 俺の呟きの後に残ったのは、深い静寂だった。


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