三十五話 暴走兵器
異形と化したガンナーの前に、トオルたちが立っている。
「さっき説明した通り、僕がここにいられるのはフブキの魔力が尽きるまでです。手早く済ませますよ」
白銀の騎士、ヒョウガが剣を構えて言う。
「はい!」
俺とリツ、アカリは刀を構える。
ガンナーは依然として掃射を続けている。
「奥義、雪泥鴻爪」
詠唱と共に、ガンナーの体に付けられた銃の銃口全てが凍らされ、砕け散る。
「アカリ、刀を借りる! 奥義、光陰如箭!」
「ランドブレイカー!」
「千羽鶴・騒嵐!」
その隙に、俺たちは全力で技を放ち、復活の余地を与えないよう、徹底的にガンナーを攻め立てた。光の刃が黒の魔法を切り裂き、それに続いて地面の攻撃、そして折り鶴がガンナーを襲った。
「命令、達成……不可能……」
連続攻撃を食らい、ボロボロになったガンナーは一つの薬莢を残して消滅した。結局最後まで何を考えているか分からない奴だった。
「やった……」
俺たちは息をつく。
「では僕はこれで……あ、リツ君」
「どうしました?」
「フブキをよろしく頼んだよ。兄さんって呼んでもいいからね」
ヒョウガは鎧の上からでもウインクしているのが分かるような台詞を吐くと、光と共に消えた。
「なっ……ヒョウガさんにも勘違いされているだと……」
最早お馴染みとなったこの光景に俺たちは少し和むのだった。
ライガルさん達の戦いを見ると、二人とも満身創痍の状態だった。
「ライトニングフィスト!」
「無駄だ」
ライガルさんの攻撃もブラックホールに無慈悲に吸い込まれる。
「サンダーレインじゃもう効果ないじゃねえか!」
「もうちょっと当たるように努力できねえのか?」
「できるかそんなもん!」
ラトゥールが激高する。
「あたしたちも協力するよ!」
「ダミニ、それに他の奴らも!」
ガンナーを倒した俺たちも戦いに加わる。バランの周囲は重力が倍になっていて、近づくだけでも一苦労だ。
「トオル、お前は一旦休んでるんだ。刀が無いんじゃ厳しいだろう。今の内に俺たちの魔力を吸収するんだ」
リツが言う。
「分かった。俺は遠隔攻撃でサポートするよ」
俺はティムールの使っていた弓を作り出す。
「器用な奴め」
リツはそう言うと、バランに向かい立つ。
「六対一か。良いだろう。まとめて来い」
俺たち六人、俺、アカリ、リツ、ダミニ、ラトゥール、ライガルさんはバランと対峙した。
「グラウンドフォール!」
「ライトニング!」
ダミニとラトゥールが先制攻撃を放つ。
「地面と雷の挟み撃ち。古来より伝わる伝統的な戦い方だな。だがお前たちは両極端だ。一人の魔導士は雷。もう一人は地面。それじゃあ黄色の魔導士である意味がない」
そう言うと、バランはブラックホールで両者の攻撃を消し飛ばした。
「紙吹雪!」
「桜吹雪!」
「枝桜!」
俺たちも負けじと吹雪の魔法を組み合わせて攻撃する。バランはブラックホールで攻撃を吸い込むが、一部は食らっていた。やはりバランが作れるブラックホールは右手、左手にそれぞれ一つずつ。合計二つまでの様だ。
「効いてるぞ!」
「数が増えれば力も増える。この程度は予測の内だ。気づかなかったか? 俺はまだ雷の魔法を使っていないぞ」
バランが拳を構えると、俺たちの上に雷雲が立ち込め始めた。
「ディザスター!」
上空からは雷が落ち、地面は大地震のように揺れる。天災を再現したような攻撃が俺たちを苦しめる。
魔法が収まるころには、俺たちは軒並み膝をついてしまっていた。しかし、その中でもダミニとラトゥールは互いに手を取り合ってバランに向かって行った。
「雷の魔法と……」
「地面の魔法……!」
二人は並んで走り、バランを捉える。
「まだ立ち上がるか」
バランもブラ空ホールを二人に向けて迎撃の体制をとる。
「行くぞ! ダミニ!」
「おう! ラトゥール!」
「ライトニング・グラウンド・ブレイカー!」
雷を纏わせた岩の攻撃が、全方位からバランを襲う。バランは一部の攻撃しか吸収することが出来ない。
「二人とも、戦いを通じて強くなったな」
バランは傷つきながらもまだ焦りは見せていない。
「あたしたちはあんたを超えて見せる! イエローは弱くなってなんかないんだ!」
ダミニたちは追撃を繰り出すが、逆にそれを捉えられ、重力の力を圧縮した拳で殴られて吹き飛ばされる。
「約束、果たさせてもらうぜ! ボルテージフィスト!」
その攻撃の隙にすかさずライガルが拳を差し込む。
「無駄だぁ!! バニシングショット!」
しかしそれもブラックホールに吸収されてしまう。ライガルは急いで拳を引っ込める。
「今だ!」
突如、ライガルが叫ぶ。それと同時に観客席から高速で迫る一人の男の姿があった。
「ライトニングフィスト!」
その男、サーナーは雷を纏わせた強力な一撃をバランの背後から打ち込んだ。
「不意打ちだと……!」
その一撃はバランのわき腹を大きく抉っていた。超高威力の不意打ちにはさすがのバランも太刀打ちできなかったみたいだ。
「俺たちの勝ちだ。仲間の力ってのも案外馬鹿にできないんだぜ」
ライガルが笑う。
「強者こそが正義、俺は強い、俺は強い、俺は一人でも強いんだ……!」
体から大量の血を流しながら一人、頭を抱える。
「まだ動けるのか?」
「強さこそが全てだ。この強さ、衰えていくのならば、今この瞬間の俺でなければ生きている意味がない! そうだ。俺が真の最強になるためには、お前たちごときに負けるわけにはいかない!」
抉られていたはずのわき腹が少しづつ治っていく。
「まさか生命開放魔法を使うのか! 七戦帝がそんなことをしたら……本当に止められなくなるぞ!」
「ブラックホール、多重展開!」
これまで二つまでしか展開できなかったブラックホールが、バランの周囲全方位に展開される。それは、俺たちの詰みを意味していた。
「これから行われるのは『戦い』ではない。絶対的な強者による一方的な『蹂躙』だ」
バランの漆黒の瞳にはもはや感情の色すら見いだせなかった。彼はもう既に人間では無い。




