三十二話 狂戦士の刃
「お前ら、ほら、武器だ!」
観客席から声がした。そこからは、五人衆の一人、マハンガが武器を俺たちに投げていた。
「助かる! マハンガ!」
ライガルが叫ぶ。
「俺はサーナーたちの介抱するからよ。お前たちも……」
「喪神」
「――マハンガ!」
マハンガは言葉の途中で、ベルセルクに大剣で胸を突かれて倒れてしまった。
「マハンガ。余計なことをしてくれたな」
ベルセルク、そしてバラン、ガンナー達はそれぞれコロシアムに降りる。
「……あいつは俺が倒します。いいですか、ライガルさん」
俺は刀を拾いながら言う。
「なら私も手伝うよ。友達だからね」
ダミニも俺の肩に手を置いた。
「なら、俺たちはガンナーの相手をしよう」
「そうね。ベルセルクは二人に任せるわ」
「リツ、フブキ。頼んだ」
二人も刀を持って準備は出来ていた。
「俺も後ろから皆を援護しよう」
「助かる。ティムール」
彼も弓を持つ。弓を持った彼はやっぱり頼もしいな。
「よし、そんでもって俺たちがバランを倒せばいいんだな? ライガル」
「奴はそんな覚悟で戦える相手じゃないぞ」
「俺だって祭りを無茶苦茶にされて、サーナーもダッデムもマハンガもやられて、これで黙ってられるわけないだろ。頼む。戦わせてくれ」
ラトゥールがいつになく真剣な表情を見せる。彼も仲間の五人衆がやられて思うところがあるのだろう。
「私からも、頼むよ。ライガル」
ダミニも手を合わせて訴える。
「……分かった。その代わり足は引っ張るなよ」
「引っ張る訳ねぇだろ! 手柄横取りする気でやらせてもらうぜ!」
ラトゥールは意気揚々とライガルと共にバランに向かう。
「――困ったな。俺はお前が一緒に来てくれればそれだけでいいんだが」
ベルセルクは大剣を手にしながら俺たちに歩み寄る。
「誰がお前たちと一緒になんて行くか」
「まぁいい。魔界にいるアカリとやらが死ぬまでの時間なら相手をしてやろう」
「人質が死んだらお前たちも困るんじゃないのか」
「困らない。そうなればお前が堕落することに期待するだけだ。トオル」
彼は黒い瞳で俺を見る。
「最低な奴だな。俺が見てきた中でも特に腐ってる」
これを俺に言われるのは相当だぞ。と、俺は心の中で言う。
「どう言おうが構わないが。その負の感情が堕落を進めることを覚えておくといい」
ベルセルクは俺に大剣を向ける。
「お前に容赦はしない。奥義、光芒一閃!」
「破砕」
俺は居合の構えから高速でベルセルクに斬りかかる。しかし、その刀は彼には当たらず……
「刀が、折れた……?」
「俺の大剣ルーインは全てを砕く最硬の牙だ。お前の刀などでは勝負にもならない」
俺の刀は根元から粉々になっていた。
「ならその剣とあたしの拳、どっちが強いか勝負しようぜ! グラウンドブレイク!」
間髪入れずにダミニが攻撃を仕掛ける。ベルセルクの周囲の地面が割れ、彼は落下を始める。
「地面を砕くか。フィーネ、力を借りるぞ」
彼はそう言うと、背中に羽根を生やして空を飛び、攻撃をかわした。
「お前も魔獣使いか」
「俺は体の一部を魔獣に変換できる。いわば俺と魔獣は一心同体。魔界と現世の狭間に俺はいるのだ」
魔獣の召喚は普通は魔界と繋がるゲートを魔力を使ってこじ開けて行うと聞いたけど、こいつは体その物にゲートをつくっているのか? テイマーは魔獣を自分の体に装備するような魔法だったが、こいつは体をそのまま魔獣と置き換えられるということか。
「ジャック、力を借りる」
ベルセルクはそうして、自身の右手を巨大な爪が生えた腕に変貌させる。
「斬撃」
彼はその右腕を薙ぎ、真空波を発生させる。
「フォレストスナイプ!」
その瞬間、俺たちの間を矢が突き抜け、地面に衝突した。さらにその地面から木が生え、俺たちを真空波から守った。大木は衝撃によって真っ二つにされていた。
「ティムール!」
「挫けるなよ。まだ希望はあるだろう?」
ティムールは俺たちに笑みを向ける。敵の攻勢に気圧されていた俺たちにはいい転換になった。
一方ベルセルクは羽根を消滅させ、地面に着地していた。
「そうだな。武器がなくなっても戦いようはあるはずだ。 千羽鶴!」
「小賢しい。破砕」
俺はリツと同じように千羽鶴を放つが、再び砕かれてしまう。しかし、彼の後ろからダミニが迫っていた。
「ロックフィスト!」
彼女が石を纏った拳でベルセルクを殴りつける。
「喪神」
次の瞬間、ベルセルクはダミニの腹に大剣を突き立てていた。ダミニは俯いて動かない。想像以上だ。このままじゃ勝てない……! そう思っていた俺を裏切るかのように、ベルセルクの大剣は突如ひび割れ始めた。
「何だと?」
「ぬぉぉぉぁぁぁ!」
ダミニは気を失っていなかったのだ。彼女は叫び声と共に突き立てられた大剣を握りしめ、遂には破壊した。
「俺のルーインが壊れただと?」
流石のベルセルクもこれには驚いている。
「ダミニ! ありがとう! 凄いな」
「このぐらいの気合がなきゃここではやっていけないんだよ」
ダミニは苦しみながらも笑って言った。まだ戦える。俺の中にも勇気が湧いてきた。
――銃声がした。
一瞬の出来事だった。笑う彼女の頭に凶弾が撃ち込まれたのだ。彼女は倒れて動かない。ガンナーが放った一撃は、一瞬にして再び戦況を最悪なものにしたのだった。
「嘘だろ」
俺は瞳の奥の痛みが激しさを増していくのを感じていた。




