三十話 祭りは続く
裏路地でアカリとベルセルク、ガンナーが対峙している。
「来い、ルーイン……ここ狭いから剣が挟まるな」
彼の詠唱によって彼の手元に黒の大剣が現れる。しかし、この路地の狭さでは大剣は満足に振れないようだった。
「何をしてるのかしら……緋桜!」
アカリは手にした刀で二人に魔法を放つ。しかし、ガンナーの銃撃で止められてしまう。
「ベルセルク、邪魔。俺がやる」
「お前の魔法こそ音が目立つから駄目だ。俺がやる」
「喧嘩かしら? 呆れるわね」
アカリは刀を再び構える。
「黒の帝国の大隊長を舐めないほうがいいぞ。サクラ髪」
ベルセルクも大剣を構える。
「桜吹雪!」
「破砕」
アカリの刀から放たれた桜の嵐は、ベルセルクの大剣に触れると、散り散りに砕けた。
「魔法を砕いた?」
「大剣ルーインはあらゆるものを砕き、破壊する。玄武の甲羅から作った魔剣だ」
驚嘆するアカリの背後にガンナーが迫る。彼女は即座に反応し、刀の柄でガンナーを殴る。しかし、その隙にベルセルクが大剣で腹を突く。
「喪神」
衝撃と共に、アカリは気を失ってしまった。
「戻れ。ルーイン。この魔導士も魔界に置いておくか」
ベルセルクは大剣を瞬間移動させて手元から消すと、アカリに手を伸ばし、彼女も消滅させた。
◇
コロシアムでは準々決勝第三試合、ダミニ対フブキが行われていた。
「ダミニはフブキの対策をしてきたみたいです! 彼女の雪の攻撃はほとんど効いていない!」
「予め運動をして自分の体温を上げておくとはな。ダミニも頭が回るぜ」
ダミニのワイルドながらに効果的な対策の前にフブキは苦戦しているみたいだ。
「晴嵐!」
「霧か……」
フブキが霧を出してダミニの視野を妨害する。霧の中からの不意打ちはフブキの得意技だ。これは形勢も彼女に傾くか?
「グラウンドフォール!」
次の瞬間、霧の中のダミニが放った魔法によって、彼女の周囲五メートル程の地面が崩れた。
「ダミニが周囲の地面を崩落させたぁ! フブキにも、祭の進行にも大ダメージだぁ!」
「このコロシアムの整備係は優秀だぜ。安心するんだな」
「霧が晴れてきた! フブキは……倒れてしまっている! ダミニの勝ちだ!」
司会がダミニの勝利を告げる。あんな技を食らったらしょうがないな。
「さて、次の試合に行く前にコロシアムの整備が入ります」
◇
「アカリが帰ってこないねぇ。何してんのかねぇ」
観客席でダオーラが心配している。
「あ、サーナーにダッドム! あんたたち、アカリを探しに行っておくれよ」
ダオーラは観客席をうろついていた二人を発見すると、声をかけた。
「ダオーラさん? アカリってのは、トオルと一緒にいたサクラ色の髪の子っすか?」
「そうだよ。さっきこの席を離れたっきり帰ってこないんだ」
「大したことじゃないっすよ。そんなに心配しなくても……」
サーナーは面倒そうに返す。
「あんたら、それでもレンジャーかい!」
二人の様子にダオーラは怒る。
「ひぃ! わっ分かりましたぁ! すぐ行きます!」
二人は怯えた様子で走って行った。
「さて。あたしも探そうかな」
彼女もそう呟くと、観客席を歩きだす。コロシアムではすでに、ラトゥールが五人衆の一人を破って準決勝進出を決めたところだった。
◇
「さぁ! 祭も遂に終盤! 準決勝の時間がやってまいりましたぁ! 準決勝最初の試合は、異色の強さを誇る無色の魔導士、トオル対、冷静沈着な策士、リツの同郷対決だ!」
「準決勝に他のエリア出身者が二人も残るのなんて何年ぶりだ?」
司会のコールと共に俺たちはコロシアムに入る。始めの時よりも観客は増え、歓声も増している。
「二人とも負けずに来れたな」
「当然だ。何のためにここまで来たと思ってる」
リツも気合十分なようだ。薄い目が少し大きく開かれている。あれは興奮しているときのサインだそうだ。フブキから教わった。
「試合開始!」
もはやその掛け声のためだけにいるような審判の声で試合が始まる。俺とリツはお互い距離を詰め、双方同時に殴り掛かり、クロスカウンターの形になる。
更に俺は俊歩でリツの後ろに回ると、ハイキックを仕掛ける。
「紙兜!」
リツは紙の鎧でそれを防いだ。
「これはどうだ。千羽鶴」
続いてリツがおなじみの技を繰り出す。刀で出す時よりも数は少ないが、それでもたくさんの折り鶴が俺に向けて放たれる。数が減ったら千羽ではない気がするが、そこは今はどうでもいいだろう。
「操舵奪取!」
俺はリツの折り鶴の操舵を奪い、リツに向けて方向を変える。
リツはそれを見るとすぐに折り鶴を消した。自分の魔法は自分で消せるのか。
「まだまだ! フォレストスナイプ!」
「紙吹雪!」
戦いは混戦を極めていた。
そして俺はまだ知らなかった。アカリが今、命の窮地に立たされていることを。




