二十八話 神速vs無色
「遂に始まってまいりました! 武闘祭本戦! 解説には、現マスターのライガルさんに来ていただいてます。今日はよろしくお願いします」
「おう。よろしく頼む」
司会の横に、ライガルがどっしりと座っている。
「さて、第一試合はベスト8常連の五人衆の一人、『神速』のサーナー対、噂の無色魔導士、トオルですがライガルさんはどう見ますか?」
「まぁ一試合目ってこともあるから、そのトオルがどれだけ強いのかはよく知らんが、サーナーの速さは筋金入りだぜ。エリアホワイトの魔導士でも中々追い付けないはずだ」
ライガルは賢ぶって話す。
俺たちも、客が大入りのコロシアムにそれぞれ入場する。
「一瞬で終わらせてやるぜ。それとも手加減してほしいか?」
サーナーがモブ顔をニヤつかせる。
「いいよ。本気で来て」
「おいおい。後で後悔しても知らねえぞ?」
「……いや、別にいいよ。むしろ初戦の相手がお前でよかったよ」
というのも、俊歩はもちろん、潜海も覚えている俺にとっては高速の敵はむしろ絶好の相手なのだ。
「お前、舐めやがってぇ……お望み通り一瞬でぶっ飛ばしてやるよ!」
サーナーが拳と拳を打ち付ける。
「試合開始!」
審判が手を上げる。
「ライトニング!」
掛け声と同時に、サーナーは自身の体に雷を纏わせて高速移動を始める。
「潜海」
俺は迷わず潜海を使い、サーナーの攻撃を見切る。
「……意外と速いな」
正直、俊歩と潜海でそれなりに戦えるかと思っていたが、思ったよりもサーナーが速い。ならば。
「ライトニング」
俊歩、潜海に更にライトニングを上掛けし、俺はサーナーの速さを圧倒する。加速した拳でサーナーを一撃殴ると、彼は吹き飛ばされて、壁にめり込み気を失った。まぁ二人とも高速で動いているからダメージも相当になるだろうな。
「けっ決着! トオルの勝ちです! 神速を超えた!」
「情けねえぞ、サーナー。けどトオルはこの大会のダークホースかもしれねえな」
司会や観客たちも、意外そうだ。いつものように俺は無色ゆえに舐められてたってことだろう。
「流石だな。お前なら勝つと思っていたが」
控室に戻ると、リツが出迎えた。
「ありがと。俺たちが順調に勝ち進めば、当たるのは準決勝か」
「そうだな。負けるなよ」
「お前こそな」
俺とリツは改めて互いに目を合わせる。フブキもそんな俺たちを見て楽しそうだ。
「ティムールの圧勝だ!」
「外のエリアからの参加者が続々と勝ち進んでるな。地元の奴らも頑張って欲しいぜ」
耳を澄ますと、会場の声が聞こえて来る。どうやらティムールが勝ったみたいだ。
◇
「あれ、あんた予選突破してなかったのかい」
「はい。予想外に出遅れてしまって」
観客席で、アカリと、ライガルの妻、ダオーラが話している。
「まぁ、あれだけむさ苦しい中を走り抜けるのも大変だわね」
「そうですね。ダオーラさんは参加しないんですか?」
「私は別に強くないからねぇ。私が強く出れるのはライガルのバカを相手にした時ぐらいだよ」
ダオーラは冗談めかしく笑う。試合は、リツが丁度勝利を収めたところだった。アカリはふと、反対側の観客席に見覚えのある姿を認める。
「……あれは?」
「どうかしたのかい?」
「ガンナー? どうして……ダオーラさん、すみません。少し席を空けます」
アカリはそう言ってガンナーの元へ駆ける。ダオーラは終始きょとんとしていた。
◇
「勘づかれた。作戦、変更」
ガンナーも、アカリの姿を認めると、すぐに観客席を離れて、コロシアムの外の物陰に入る。
「久しぶりだな。ガンナー」
彼の背後に、長身の魔導士が現れる。
「ベルセルク、いつの間に、いたのか」
「俺が瞬間移動できるのは知ってるだろ。部隊長直々の命令でお前のサポートに来たんだ」
「そうか。七戦帝、バランもいる。ベルセルク、いらない」
ガンナーは淡々と、しかしその中に静かな敵意を込めて話す。
「そう言うなよ。バランは遅れて来るらしいだろ。先に俺たちで準備を進めようぜ」
「準備。何、する?」
「例えば、俺たちに気が付いてる邪魔な魔導士の排除、とかだな。お前はどう思う? サクラ髪の魔導士さんよ」
ベルセルクはその言葉と共に、背後に隠れていたアカリに目を向ける。
「その準備で仕事が終わらないといいけれどね」
隠れることをあきらめたアカリは、堂々と彼らの前に出る。




