二十七話 予選レース
ダミニとの特訓の二日間は嵐のように過ぎていき、遂に今日は祭りの当日だ。
「と、言う訳で。今から予選だ」
スタート地点には、既に百人近い参加者たちが準備をしている。
「早かったな。二日」
「うん……あっという間だったね」
『硬化』を使えるようになったかは怪しいけど、少しは素手で戦うのに慣れた気はする。
「拳闘祭に参加する、戦いに飢えた荒くれ者の皆さん! ライバルを叩き落として、誰より早くコロシアムにゴールする覚悟はできてますか?」
「おぉーー!!」
司会者が声を上げ、参加者たちも応えた。
「さて! ルールは簡単。コロシアムまでの2キロメートルを走り、十六番目以内にコロシアムにゴールすれば予選突破! 私の掛け声で、スタートとします! 用意!」
その声によって、一瞬にして会場に緊張感が走る。
「始め!!」
審判の掛け声が響く。その声と同時に参加者たちが一斉に走り始める。気づくと、スタート地点には俺とアカリだけが残されていた。
「やばい! 遅れた!」
「みんな早いわね」
俺たちも急いで出発する。始めは街中を走り、中心部を目指す。前方を見ると、リツたちが奮闘していた。
「紙吹雪!」
リツは後方に魔法を打って妨害する。地味に刀なしで魔法を打つのはコツが必要なのだが、この二日で習得したんだろう。
「ライジングダッシュ!」
それに気づいたラトゥールが、自身に雷を纏わせて高速移動する。さらに……
「サンダーレイン!」
彼は空から雷を落として来た。ほとんどの参加者たちが痺れて足を止めてしまう。もちろん俺も例外ではなかった。まさか異世界に来てから、雷にレースを妨害される体験をするとは思わなかった。
「これは厳しいわね……そうだ、トオル。こっちに来て」
「何だ? アカリ」
アカリが俺に手の平を向ける。まさか……
「桜吹雪!」
「アカリ?」
その瞬間、アカリの手のひらから大量の桜の花びらと暴風が吹き荒れる。
「――うぉぉぉぁぁぁ!」
俺は吹っ飛ばされ、情けない声を上げながらコロシアムに到着した。
「ゴール? 何位ですか?」
「十六位! ギリギリセーフだ!」
「よかったぁ……」
俺は安堵する。これだけ派手にゴールして本戦に出れ無かったらどうしようもなくなるところだった。
「全然来ないから少し焦ったぞ」
リツが腕組して待っている。
「そういうリツは何位なんだ?」
「三位だ。因みに一位は『五人衆』のメンバー、『神速』のサーナー、二位が……」
「『迅雷』のラトゥール。俺だぜ。そんで四位がマイラバー、『鉄壁』のダミニだ」
ラトゥールが割り込む。
「五位が俺、ティムールだよ。久しぶりだね。トオル」
「あなたは確か……レンジャー選抜の……」
「そう。エリアグリーンからはるばる来たんだ。と言っても、エリアイエローは隣なんだけどね」
更なる乱入者、ティムールが話しかけてくる。彼は弓使いのはずだけど、参加したのか。
「へぇ。ティムールも参加してたのか。よろしくな! それと、トオル。お前の初戦の相手だけど……」
「もしかして、一位の?」
「そう。いきなり五人衆のサーナーだ」
やっぱり、一位と十六位が初戦で当たるか。予選一位ということはそれなりの実力はあるだろう。
「その五人衆っていうのは強いのか?」
「おいおいおい。俺たちもずいぶん舐められたもんだなぁ。ラトゥール」
人ごみから、ガラの悪そうな三人組が現れた。この前の喧嘩のときもいたな。
「あ、ラトゥールも五人衆だったのか」
「そう。ちなみに私もね」
ダミニもか。なるほど、五人衆にはみんな二つ名があるのか。確かあいつは『神速』だったな。
「お前がトオルか? 何だお前? 目に色が無えけどどっから来たんだ? エリアムショクか?」
「エリアホワイトだよ。お前こそ、モブキャラみたいな顔してるけど本当に強いのか?」
「んだとてめ。やんのか?」
「これから試合やるだろ」
見た目通り、煽り耐性は無いみたいだ。怒るスピードも速いのか。流石は『神速』だな。
「ゼってーぶっ倒してやるからな」
「こっちも楽しみにしてるよ」
その後少しして、第一試合がコールされた。本戦の始まりだ。




