十四話 騒動を終えて
折れた刀を眺めている俺に、アカリが駆け寄る。
「やったわね、トオル」
アカリが笑う。俺も笑みを返すが、本心では刀が折れたことに対するショックの方が大きかった。
「コタロウを倒したみたいだな」
リツとフブキが顔を出す。
「リツ、フブキ。二人も魔獣たちを倒してくれたんだな。ありがとう」
「トオルが感謝する必要はないわよ。それより、コタロウを憲兵に引き渡しましょ」
フブキは倒れているコタロウを見る。気づくと、すぐ近くまで憲兵が来ていた。
「コタロウは、どんな罰を処されるんだ?」
「禁忌を犯した者への罪は重いわよ。最低でも十五年は檻の中ね」
コタロウは憲兵たちに起こされ、手錠を嵌められて連行されるところだった。コタロウは不意に俺の方を振り向いて言った。
「トオル、お前は強ぇな……今更言うことじゃねえかもしれねえけど……悪かったな……」
「やっとちゃんと名前で呼びやがったな。コタロウめ」
コタロウは馬車に乗せられ、やがて見えなくなった。
「どうやら一段落着いたみたいだな」
ヒジリさんが右肩を抑えながら歩いてきた。ヒジリさんほどの魔導士が怪我をするとは。珍しいな。
「ヒジリさん、その傷は?」
「ああ、これは敵の魔法攻撃でつけられたもんだ。俺にも反応できないような速さの攻撃だった」
ヒジリさんは悔し気だ。
「そんな攻撃が……」
もしや銃の魔法か? しかしこの世界に銃があるのか? ヒジリさんの反応を見ると、少なくとも世に広くは知られていないといったところか。
「お前も気を付けることだな。ひとまず今日は休もう。明日から魔獣に壊された村の復興だ」
ヒジリさんがぱんと手を叩く。
「それなら、俺たちも手伝います」
リツとフブキが名乗り出た。やはりヒジリさんはエリアホワイト全体から信頼を得ているみたいだ。
「おう、助かる。人手は多い方がいいからな」
ヒジリさんが笑う。少し賑やかになってきたところで悪いが、俺には言わなければいけないことがある。言いにくくなる前に、言っておくべきだろう。
「ヒジリさん、すいません。ヒジリさんの刀、折っちゃいました」
俺は先ほどの戦いで折れてしまった刀を見せる。
「お、俺の昔の刀を使ってたんだな。さっきは気づかなかった。元々壊れていたようなものだから問題ないぞ」
「それならよかったです」
ヒジリさんは俺から刀を受け取ると懐かしげに眺める。俺は転生先がこの世界で良かったと心から思った。現世では感じることのなかった人の温かさ。俺はこの気持ちを失うまいと、心に強く誓った。
◇
戦場から逃れた黒魔導士のテイマーとガンナーは森の中を歩いていた。
「手間かけさせちゃって悪いねぇ。ガンナー」
テイマーが謝意もなさげに言う。
「問題無い。仲間は助けろと命令されていた」
ガンナーは淡々と答える。
「そりゃよかった。でも相変わらず君の魔法は強力だね。マスターも殺せるんじゃない?」
「命令されれば、マスターも殺す。さっきは命令されていなかったから、殺さない」
ガンナーは魔法で具現化された銃を手入れしている。
「ハハハ。僕は自分勝手で君は指示待ち人間。こりゃあ大隊長も鬱になるよねぇ。でもあの人は病んでた方が強いからいいか」
テイマーは乾いた笑いを見せる。
「にしても、あの無色君。やっぱり素質あるねぇ」
「帝王が欲しがるのも、頷ける」
「それなぁ。彼は魅力的だよね。危ういほどに」
ガンナーも無言で頷く。
「ムメイ・トオル。必ず僕が手に入れる」
テイマーは不敵な笑みを浮かべ、自身の決意を露わにした。
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