救いの光
「グオオオォォッ!!」
ゴブリンジェネラルは苦しげな咆哮を上げながら、それでも巨大な戦斧を振り回した。
黒い魔力が体中から溢れ出し、その姿はまるで理性を失った獣のようだった。
「みんな、距離を取れ!」
シルヴァの号令で討伐隊は一斉に後退する。
「シアン!」
ミントが叫ぶ。
「あの黒い魔力……ゴーレムの時と同じよ!」
シアンはゴブリンジェネラルを見つめた。
苦しそうに頭を抱え、何かに抗っているように見える。
「まだ助けられるかもしれない……。」
シルヴァはシアンの横へ立つ。
「お前ならどうする?」
シアンは迷わなかった。
「助けます。」
シルヴァは力強くうなずく。
「よし。」
「俺が道を開く。」
「ミント、援護を頼む。」
「任せて!」
ミントは杖を高く掲げた。
「風よ、敵の動きを封じて――《ウィンドサークル》!」
激しい旋風がゴブリンジェネラルを包み込む。
続いて草魔法が発動する。
「《グリーンバインド》!」
太い蔦が足元へ絡み付き、一瞬だけ動きを止めた。
「今だ!」
シルヴァが渾身の力で大斧を振り下ろす。
ガァン!!
巨大な戦斧が弾き飛ばされ、ゴブリンジェネラルの胸が大きく開いた。
「シアン!」
「ロー!」
「ウォォン!!」
ローは一直線に駆け出す。
風を切り裂く速さでゴブリンジェネラルへ迫る。
シアンはローの背中に立ち上がり、深く息を吸った。
「行くぞ!」
ローは倒れた丸太を踏み切り、大きく跳躍する。
シアンもその勢いを利用して空高く舞い上がった。
右手をゴブリンジェネラルの胸へ向ける。
「癒やしの光よ――穢れを祓え!」
白金色の光があふれ出す。
その光は黒い魔力を包み込み、ゆっくりと浄化していく。
「グアアアアァァッ!!」
黒い霧が空へ噴き出した。
やがてゴブリンジェネラルの赤い瞳は、本来の落ち着いた琥珀色へ戻っていく。
巨大な体がゆっくりと膝をついた。
「成功した……。」
シアンは着地し、安堵の息をつく。
ゴブリンジェネラルは静かにシアンを見つめる。
そして、自らの胸へ拳を当てると、小さく頭を下げた。
まるで感謝を伝えるように。
その直後だった。
黒い霧が一か所へ集まり、人の姿へ変わっていく。
「ククク……。」
黒いローブをまとった男だった。
「また貴様か!」
シルヴァが斧を構える。
男は不気味に笑う。
「白き聖光。」
「やはり、お前は邪魔な存在だ。」
シアンは一歩前へ出る。
「お前が黒霧教団の……。」
「名乗る価値もない。」
男はゆっくりと手を上げる。
黒い魔法陣が足元へ広がった。
「次に会う時は、もっと絶望を見せてやろう。」
黒い霧が男を包み込む。
「待て!」
シルヴァが駆け出すが、一歩遅かった。
男の姿は霧とともに消え去る。
静寂が戻る。
ミントは苦しそうに息を吐いた。
「また逃げられた……。」
シルヴァは斧を肩へ担ぎ直す。
「だが収穫はあった。」
シアンはうなずく。
「黒霧教団は、魔物を操っているだけじゃない。」
「黒い魔力で支配しているんだ。」
助け出された子どもたちはシアンへ駆け寄る。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「狼さんもありがとう!」
ローは少し照れくさそうに尻尾を振る。
「ウォン。」
それを見た討伐隊の冒険者たちも笑顔になった。
昨日までシアンへ敵意を向けていた大柄な男が歩み寄る。
「……悪かった。」
シアンは驚く。
「え?」
「お前を運がいいだけの新人だと思ってた。」
男は深く頭を下げた。
「でも違った。」
「お前は本物の冒険者だ。」
シアンは少し照れながら笑う。
「ありがとうございます。」
男は右手を差し出した。
「改めてよろしく。」
シアンもその手をしっかり握り返す。
「こちらこそ。」
こうしてリーフ村の危機は去り、討伐隊は村人たちの感謝に見送られながら王都への帰路につく。
しかし、黒霧教団との戦いはまだ始まったばかりだった。
黒き門の封印。
そして「白き聖光」の力。
その二つが交わる時、世界を揺るがす戦いが幕を開けようとしていた。
3人組と仲良くなったね!




