嫉妬の視線
冒険者ランクはこのような設定です。
鉄級 → 銅級 → 銀級 → 金級 → 白金級 → 聖級
シアンが銅級へ昇格してから数日。
冒険者ギルドはいつも以上に活気にあふれていた。
「聞いたか? あの新人が銅級に上がったらしい。」
「オーガやゴーレムの件で活躍したって話だ。」
「黒狼まで従えてるんだろ?」
シアンは依頼掲示板を見ながら、少し照れくさそうに頭をかいた。
「なんだか落ち着かないな……。」
その隣ではローが静かに座り、周囲を見渡している。
「ウォン。」
その時だった。
ドンッ。
誰かがシアンの肩へわざとぶつかってきた。
「おっと、悪いな。」
振り返ると、三人組の冒険者が立っていた。
先頭にいる大柄な男が、皮肉な笑みを浮かべている。
「お前がシアンか。」
「そうですけど……。」
男は鼻で笑った。
「新人のくせに、ずいぶん調子に乗ってるらしいな。」
周囲の冒険者たちがざわつく。
シアンは落ち着いた声で答えた。
「そんなつもりはありません。」
「じゃあ、なんでお前だけ昇格なんだ?」
男はシアンの胸元にある銅級のギルドカードを指差した。
「運が良かっただけだろ。」
「黒狼がいたから助かっただけじゃないのか?」
その言葉に、ローが低く唸る。
「グルル……。」
「ロー。」
シアンは優しく首を撫でる。
「大丈夫。」
ローは唸るのをやめたが、青色の瞳は男たちをじっと見据えていた。
「魔物に守ってもらう冒険者か。」
男たちは笑い声を上げる。
しかしシアンは怒らなかった。
「ローは仲間です。」
静かな口調だった。
それでも、その言葉には強い意志が込められていた。
「仲間?」
男は鼻で笑う。
「魔物が仲間だなんて笑わせる。」
その瞬間。
「その辺にしておけ。」
低い声がギルド中に響いた。
シルヴァだった。
ゆっくりと歩み寄るだけで、男たちの表情が変わる。
銀級冒険者であるシルヴァの存在感は、それほどまでに大きかった。
「……シルヴァ。」
男はわずかに顔をしかめる。
「新人相手に三人がかりとは感心しないな。」
シルヴァは静かに言う。
「言いたいことがあるなら、依頼で結果を出せ。」
「ギルドは喧嘩を売る場所じゃない。」
その時、二階から重厚な声が響く。
「まったく、その通りだ。」
全員が振り向く。
階段の上には、ガレスが腕を組んで立っていた。
「ギルドで仲間同士が争うことは許さん。」
三人組は黙って頭を下げる。
「……失礼しました。」
そう言い残し、不満そうな表情のままギルドを後にした。
静けさが戻る。
シアンは小さく息を吐いた。
「ありがとうございました。」
シルヴァは軽く笑う。
「礼はいらん。」
「今のはお前がよく我慢した。」
ミントも近寄り、優しく微笑む。
「感情的にならなかったのは立派よ。」
シアンはローの頭を撫でた。
「一番我慢したのはローかも。」
「ウォン。」
ローは嬉しそうに尻尾を振る。
その様子を見ていたガレスは、小さくうなずいた。
「実力が認められれば、称賛だけでなく嫉妬も向けられる。」
「それも一流の冒険者になるために越えなければならない壁だ。」
シアンは銅級のギルドカードを握り締める。
強くなるとは、魔物に勝つことだけではない。
人の嫉妬や誤解にも流されず、自分の信じる道を歩き続けること。
シアンは改めて、その意味を胸に刻むのだった。
頑張れシアン!




