知識を試す依頼
早速、得た知識を活かすとき!
座学を終えた翌朝。
シアンたちは冒険者ギルドの依頼掲示板の前に集まっていた。
「さて、今日はどの依頼にする?」
シルヴァが腕を組みながら掲示板を眺める。
討伐依頼、薬草採取。
数多くの依頼書が並ぶ中、ガレスが一枚の依頼書を手に取った。
「これだ。」
依頼書には大きくこう書かれていた。
『薬草採取および調査依頼 行き先:モリモリの丘』
「討伐じゃないんですか?」
シアンが少し意外そうに尋ねる。
ガレスは静かに首を横へ振る。
「昨日学んだことを、実際に使ってみろ。」
「知識は使ってこそ意味がある。」
シアンは力強くうなずいた。
「はい!」
王都を出て一時間。
一行は「青葉の丘」と呼ばれる穏やかな丘陵地帯へ到着した。
風が草花を揺らし、小鳥たちがさえずっている。
「きれいな場所ですね。」
シアンが周囲を見回す。
ミントはしゃがみ込み、一枚の葉を摘み取った。
「これは昨日勉強した《ヒールリーフ》よ。」
「本当だ!」
シアンも葉の縁をよく見て確認する。
「ギザギザが少なくて、甘い香りがします。」
「正解。」
ミントは嬉しそうに笑った。
少し離れた場所では、シルヴァが別の草を摘んでいた。
「これだろ?」
ミントは見るなり苦笑する。
「それは雑草。」
「またか……。」
シルヴァは頭をかく。
「昨日習ったばかりなのに。」
「だから座学は大事なの。」
ミントが笑う。
シアンも思わず吹き出した。
「シルヴァさんらしいですね。」
その時だった。
ローの耳がぴくりと動く。
「グル……。」
鼻を地面へ近づけ、何かの匂いを追い始めた。
「どうした、ロー?」
シアンが近づく。
ローは丘の奥にある小さな森へ向かって歩き出す。
「何か見つけたみたい。」
ミントも表情を引き締めた。
「魔物の気配……でも、黒い魔力じゃない。」
シルヴァは斧を背負い直す。
「様子だけ見に行くぞ。」
森へ入ると、小さな泣き声が聞こえてきた。
「キュウ……。」
茂みの奥で、一頭の若い鹿が足を罠に挟まれて動けなくなっていた。
「誰かが仕掛けた罠か。」
シルヴァが周囲を警戒する。
シアンは慎重に鹿へ近づいた。
「怖がらなくていい。」
暴れないよう優しく声をかけると、鹿は少しずつ落ち着きを取り戻す。
シアンは罠を外し、手を傷口へかざした。
「癒やしの光よ――《ヒール》。"
淡い白い光が鹿の足を包み込む。
傷口はゆっくりと塞がり、鹿は静かに立ち上がった。
「よかった。」
鹿はシアンを見つめ、小さく鳴く。
「キュッ。」
そしてローの横を通り過ぎると、森の奥へ元気よく駆けていった。
ローはその姿を見送り、満足そうに尻尾を振る。
「ウォン。」
ミントは穏やかな笑顔を浮かべた。
「命を救うのは、人だけじゃないのね。」
シルヴァもシアンの肩を軽く叩く。
「いい判断だった。」
依頼は無事に終わった。
薬草も十分に採取でき、森の安全も確認できた。
帰り道、ガレスの言葉をシアンは思い返していた。
『知識は使ってこそ意味がある。』
昨日学んだことが、今日、一つの命を救った。
シアンは空を見上げ、小さく微笑む。
冒険者として、また一歩成長できたことを実感しながら、仲間たちと王都への道を歩いていくのだった。
少しづつ読んでくれている方が増えているような感じです!!
ありがとうございます。




