フンワリ草原の異変
新しい冒険がスタート
翌朝。
澄み切った青空の下、シアン、シルヴァ、ミントの三人は王都アルディアを出発した。
目指すのは、西に広がるフンワリ草原。
一年中やわらかな緑の草が風に揺れ、多くの牧場や村が点在する、王国有数の穏やかな土地だった。
「昔はここ一面が花で埋め尽くされていたの。」
草原へ向かう街道を歩きながら、ミントが懐かしそうに話す。
「子どもの頃、よく遊びに来ていたわ。」
「百年以上前の話か?」
シルヴァが冗談交じりに尋ねる。
ミントは少し頬を膨らませた。
「エルフは長生きなの。年齢の話は失礼よ。ぷんぷん。」
そのやり取りに、シアンは思わず笑みをこぼした。
旅の緊張が少し和らぐ。
昼過ぎ、一行はフンワリ草原へ到着した。
しかし、目の前に広がっていた景色は、ガレスの話どおり異様なものだった。
青々としているはずの草原の一部が黒く枯れ、花はしおれ、木々も元気を失っている。
「こんなことに……。」
ミントは膝をつき、枯れた草にそっと触れた。
目を閉じ、自然の魔力を感じ取る。
「やっぱり……。」
「何かわかったのか?」
シルヴァが尋ねる。
「黒い魔力が地中に染み込んでいる。このまま放っておけば、草原全体が枯れてしまうわ。」
その時、近くの牧場から一人の老人が駆け寄ってきた。
「冒険者様ですか!」
老人は深々と頭を下げる。
「私はこの牧場の主人、ハンスです。」
「話を聞かせてくれ。」
シルヴァが促すと、ハンスは不安そうな表情で語り始めた。
「最初は家畜が夜になると怯えるようになったんです。それから牛や羊が次々と姿を消し、最近では黒い狼のような魔物まで現れるようになりました。」
「黒い狼……。」
シアンはシルヴァと顔を見合わせる。
「黒霧教団の仕業かもしれないな。」
シルヴァは低くつぶやく。
ハンスはさらに続けた。
「昨夜も草原の奥から遠吠えが聞こえました。村の若者が様子を見に行ったきり、まだ戻ってきません。」
シアンの表情が引き締まる。
「助けに行きましょう。」
「そうだな。」
シルヴァは力強くうなずいた。
「ミント、魔力の流れは追えるか?」
ミントは杖を地面へ軽く突き立てる。
淡い緑色の光が草原を走り、その先を一本の光の線が伸びていく。
「こっちよ。」
三人は草原の奥へ歩き始めた。
進むにつれ、空気は冷たく重くなっていく。
やがて、小さな森の入り口へたどり着いた。
その入口には、大きな爪で引き裂かれたような木々と、黒い毛が散らばっていた。
シルヴァは毛を拾い上げる。
「普通の狼じゃない。」
ミントも静かにうなずく。
「魔力で変異した魔物ね。」
その瞬間、森の奥から少年の悲鳴が響いた。
「誰か……助けて!」
「行くぞ!」
シルヴァが先頭に立ち、シアンとミントも続く。
三人は武器を構え、暗い森の中へ駆け込んだ。
その先で待ち受けていたのは、赤い目を持つ巨大な黒狼の群れだった。
挿絵はイメージです。AIイラストなので若干ズレとかあります(´;ω;`)




