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第97話:ゴルドの小屋

 種蒔きから二百三十五日目の朝、大空洞に入った。


 採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。


 第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。


 第三耕地は今日の収穫の頃合いではなかった。三か所に水をかけた。


 岩の隙間の霧花草が今日は葉を開いていた。三枚を刈り取って別の布袋に入れた。


 水場を通りかかった時、水に指先を入れた。今日も温かかった。


 割れ目の方へ向かった。



 割れ目に一歩入った。苔の青白い光が続いた。十八歩進んで向こう側に出た。刻みを確かめた。


 二十八本になっていた。


(ケルンが来た。この三日の間に)


 二十八本目だけ表面が荒かった。器の向きは変わっていなかった。


(今日は先へは進まない。別のことをしておく)


 部屋を出た。割れ目を抜けて大空洞に戻った。



 小屋に戻った。霧花草を刻んでミストハーブと一緒に煎じた。乾燥台に今日の五本を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。


 この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が五百三十八本になっていた。一時間ほどで通常品五本と混合品一本が仕上がった。棚に加えた。通常品が五百四十三本になった。混合品が四十一本になった。


 記録の紙を取り出した。「刻みが二十八本に増加——話間にケルン来訪。割れ目は確認のみ・今日は探索せず。通常品五百四十三本。混合品四十一本」。


(ゴルドさんのところへ行っておく)


 これまで、ゴルドへの連絡はミア経由だった。七十歩目の溝の形を紙に書いてこいとシルバに言われていた。紙に形を描くなら、一度ゴルドに話しておいた方がいいかもしれない——いや、話しに行く前に、まず一度自分で出向いた方が先だと思った。


 小屋を出た。



 ゴルドの鍛冶場は、ミアの師匠の小屋の隣にあった。煙が出ていた。中から金属を叩く音がした。扉の前に立った。音が続いた。止まった。


「誰だ」


「レインです。少し時間をいただけますか」


 少し間があった。扉が開いた。ゴルドが顔を出した。額に汗が光っていた。


「来たか」


「ミア経由でしか連絡していなかったので、一度直接お礼を言いたかったと思って来ました。書面のことで来てくれた時と、教会のことを前もって教えてくれたことへの」


「礼はいらない」


「はい。——もう一つ、話しておきたいことがあって来ました。降下通路を探索しています。七十歩目まで進みました。右の壁に古い溝がありました。六十五歩目にも同じ形の溝があって、今は二か所で確認しています」


 ゴルドが少し間を置いた。


「形は」


「細くて浅い。表面が滑らかです。祖父の溝とは全然違います。もっと古いと思います」


「溝の形を紙に描いたか」


「まだです。シルバじいさんにも言われました。次に行った時に描いてこようと」


 ゴルドが顎を少し動かした。


「描いてこい。大きさと向きを正確に。形は言葉では伝わらない」


「わかりました」


「——もう一つ。向こうの広い場所の壁に文字のような線があると聞いた」


(ミアが話していたか)


「はい。ケルンが松明で確かめてきました。複数の線が絡み合って、文字に似た形で壁を伸びていたと言っていました」


 ゴルドが少し間を置いた。


「溝の形を描いてきたら、また来い」


「はい」


 扉が閉まった。



(ゴルドが「また来い」と言った)


 道を戻りながら、少し考えた。これまでミアを通じてしか話したことがなかった。直接話したのは今日が初めてだった。言葉は少なかった。でも——確かに伝わっていた。



 夕方、シルバの小屋へ向かった。


「刻みが二十八本になっていました。話間にケルンが来たようです。今日は探索せず確認だけしました。ゴルドさんのところへ直接行きました。七十歩目の溝の話と、向こうの壁の線の話をしました。溝の形を紙に描いてきたらまた来いと言われました」


 シルバが炉の前でゆっくりと顔を上げた。


「ゴルドのところへ自分で行ったか」


「はい。ミア経由ばかりではいけないと思って」


 短い間があった。炉の木がくすぶっていた。


「それでいい」


「シルバじいさん。一つ聞かせてください。祖父は——なぜこの場所を選んだんでしょうか」


 シルバがゆっくりと炉を見た。少し長い間があった。


「ガルドがここを選んだのは、場所だけの理由じゃなかったと俺は思っている。ここに来ることができる人間を待っていた、ということだ」


「来ることができる人間」


「ただ入れる、という意味じゃない。ここに来て、続けられる人間、ということだ。——お前がここに来て、毎日採って、積み上げていく。その一つずつが、ガルドが待っていたことなんだと思う」


 シルバがそれ以上は言わなかった。炉を見たまま動かなかった。


「はい」


「次は七十五歩目だ。紙と短刀を持っていけ」


「わかりました」


 炉の火が揺れた。外はもう暗くなっていた。



 夜、経営の書を開いた。


「場所には、それを受け取れる者が来るのを待っている側面がある。来た者が何をするかよりも、来た者がそこに居続けるかどうかを、場所は確かめている。来て、続けた者だけが、その場所を本当に受け取ることになる」


(ガルドが待っていた人間として、俺が来た。続けている。それだけのことかもしれない。でも——それだけのことが、一番難しいのかもしれない)


 棚を見た。通常品が五百四十三本。混合品が四十一本。


 明日も採りに行く。

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