第96話:三十日
種蒔きから二百三十二日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。
第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。
第三耕地に進んだ。第四十二バッチの頃合いだった。五本を一本ずつ根元から確かめてから摘み取った。三か所に水をかけた。
岩の隙間の霧花草は今日は葉を閉じていた。
水場を通りかかった時、水に指先を入れた。今日も温かかった。
(今日はドゥルガさんが来るかもしれない。割れ目には入らない)
小屋へ戻った。
*
乾燥台に今日の十本を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。
この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が五百二十三本になっていた。一時間ほどで通常品十本が仕上がった。棚に加えた。通常品が五百三十三本になった。混合品は四十本のままだった。
棚を整えた。通常品を左、混合品を右に揃えた。
昼前、外に荷車の音があった。
「レイン」
ドゥルガだった。扉を開けた。荷車が小屋の横に止まっていた。
「いつもありがとうございます」
「元気そうだな」
ドゥルガが入ってきた。棚を一通り確かめた。通常品の本数を目で追った。混合品を見た。
「通常品、十本もらっていく。銀貨二十枚だ」
棚から十本を取り出した。ドゥルガが確かめながら受け取った。銀貨が二十枚、手元に来た。通常品が五百二十三本になった。
「教会からの書面の件は聞いている」
(聞いていたか)
「ゴルドさんから、ですか」
「そうだ。——出さなかったのは正しいと思う。出した者の話を聞いてきた」
ドゥルガが棚を見たまま言った。
「ロウン街道を先月、少し遠回りして来た。街道沿いの薬師に、似たような書面が届いていた者がいた。出したそうだ。二週間後に施設を見に来た。煎じに使う草が教会の品目基準に合わないと言われた。仕入れ先を変えろと言われた」
(仕入れ先まで)
「そのあとはどうなりましたか」
「続けるのが難しくなったと言っていた。書面を出した途端、踏み込む理由ができる。理由はつけようと思えばいくらでもつけられる。連中のやり方はそういうものだ」
少し間があった。
「わかりました。教えてくれてありがとうございます」
「礼を言うことではない。わしが見てきたことを話しただけだ。——この場所のことは、しばらく書かなくていい。エクラのセイロスにも同じことを伝えてある。あいつも同じように考えている」
「セイロスさんも」
「問屋を通さず動いていることは、連中に知られるほど面倒になる。今はしばらく静かにしておくのが一番だ。急ぐな」
ドゥルガが荷車の方へ向かいかけた。そこで少し足を止めた。
「最初にここへ来た時のことを覚えているか」
「覚えています。二本のポーションを持ってきた頃でした」
「あの時から、ずっと続けてきた。銀貨二枚が今は五百本を超えているか。——焦らず一つずつ積み上げてきた。それが今、一番の地盤になっている」
それだけ言って、荷車を引いて去っていった。
*
昼すぎ、ミアが来た。扉を叩いてから入ってきた。棚を一度見た。
「五百二十三か。ドゥルガさんが来たか」
「今朝来た。ロウン街道の薬師が書面を出したあとの話を聞いてきた。施設を見に来て、仕入れ先まで口を出されたと言っていた」
ミアが少し眉を動かした。
「出さない方がいい」
「はい。ドゥルガさんもセイロスさんも、しばらく静かにしておくのがいいという考えだと言っていた」
「師匠も同じことを言っていた。書面を出せば次の口実を渡すことになる、と」
「はい」
ミアが少し間を置いた。
「次に来た時は近くにいる。前もって知らせてくれ」
「頼みます。前もって連絡します」
扉が閉まった。
*
夕方、シルバの小屋へ向かった。
「ドゥルガが来ました。通常品を十本、銀貨二十枚で引き取ってもらいました。ロウン街道の薬師が書面を出したあと、施設を見に来た話を聞いてきたそうです。仕入れ先まで口を出されて続けるのが難しくなったと言っていました。ドゥルガもセイロスさんも、しばらくは静かにしておく方がいいという考えです。ミアにも次に来た時は前もって知らせると伝えました」
シルバが炉の前でゆっくりと顔を上げた。
「ドゥルガが動いていたか」
「ロウン街道を遠回りして来たと言っていました」
短い間があった。
「ドゥルガは信用できる商人だ。あいつが動いているなら、状況は今のところ踏みとどまっているということだ」
「はい」
「書面を出さなかったのは正しかった。出した薬師の話は——連中のやり方を見れば、次が何かはわかる。踏み込む口実を書面が作る。お前が揺れなかったのが一番の判断だった」
「ゴルドさんが来てくれたのが大きかったと思います」
「そうだ。——三十日の期限はまだ続いている。次に来た時のために、ミアとゴルドには前もって知らせておけ。お前一人で対応するな」
「ミアには伝えました。ゴルドさんへはミア経由で伝えてもらいます」
「そうか。よくやっている」
炉の火が揺れた。外はもう薄暗くなっていた。
*
夜、経営の書を開いた。
「積み上げてきたものは、圧力がかかった時に初めてその重さがわかる。揺れなかったのは、積み上げてきたものがあったからだ。積み上げることが続けることになり、続けることが揺れない力になる。それは一日では作れないものだ」
(ドゥルガが「焦らず一つずつ積み上げてきた」と言った。銀貨二枚の頃から、ここまで来た。続けてきた。それが今、一番の地盤になっている)
棚を見た。通常品が五百二十三本。混合品が四十本。
明日も採りに行く。




