第91話:七度目の月末
種蒔きから二百十五日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。
第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。第三耕地は今日の収穫の頃合いではなかった。三か所に水をかけた。
岩の隙間に霧花草の束があった。三枚が開いていた。刈り取って別の布袋に入れた。
水場を通りかかった時、水に指先を入れた。今日も温かかった。
(月末だ。セイロスが来る頃合いだ)
今日は割れ目には入らなかった。小屋に戻った。
*
霧花草を刻んで別の鍋に入れた。ミストハーブと一緒に煎じた。乾燥台に今日の五本を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。
この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が五百四十八本になっていた。一時間ほどで通常品五本と混合品一本が仕上がった。棚に加えた。通常品が五百五十三本になった。混合品が三十六本になった。
棚を整えた。通常品を左、混合品を右に揃えた。
昼前、外に馬の蹄の音が聞こえた。
(セイロスだ)
扉が叩かれた。
「入れますか」
「どうぞ」
扉が開いた。セイロスが入ってきた。いつもより少し早い時刻だった。表情は変わらなかった。棚を一度見た。
「揃っていますね」
「おかげさまで」
「文が届きました。早く来た方がいいと思いました」
(来てくれた)
「ありがとうございます」
セイロスが棚のそばに進んだ。
「教会の者がうちの倉庫に来たのは、今度で三度になります。最初は問屋への問い合わせ。次は仕入れ先の確認。今度はガルドという名前を持ってきました」
「こちらにも三度来ました。今度は祖父の名前を直接出してきました」
「そうですか」
少し間があった。
「連中は物を調べているのではありません。場所を調べている。ポーションは入口です。ガルドがこの場所にどういう関わりがあったか——それを知りたがっている。物の流れから逆に場所を特定する、そういう動きです」
(場所を調べている)
「何かできることはありますか」
セイロスが少し間を置いた。
「今後、教会の者から何を聞かれても、答えは一つにします。「仕入れ先は明かせない」——それ以外は答えない。商人の理由で」
「ありがとうございます」
「私は物を扱う人間です。情報を売る仕事はしていません。それだけのことです」
少し間があった。
「一五〇本、用意できています」
「ではいただきます」
棚から一五〇本を木箱に移した。セイロスが一本ずつ確認した。銀貨三七五枚を受け取った。
「来月も同じ条件で来ます。月末が近づいたら文を一本送ってください」
「わかりました」
「今日は早く発ちます。道が荒れる前に戻りたい」
「お気をつけて」
扉が閉まった。馬の蹄の音が遠ざかっていった。
*
棚を見た。通常品が四百三本になっていた。混合品は三十六本のままだった。
(連中は場所を調べている。ポーションは入口だとセイロスは言った。教会が欲しいのは、ここにある何かだ)
息をゆっくり吐いた。
(続ける。変えない。それだけだ)
記録の紙を取り出した。「セイロスが七度目の来訪。文を受け取ったと言っていた。教会の者が三度倉庫に来ていた。今後は答えないとの判断。一五〇本引き渡し・銀貨三七五枚。通常品四百三本。混合品三十六本」。
*
夕方、シルバの小屋へ向かった。
「セイロスが来ました。早めに来てくれました。文を受け取ったと言っていました。教会の者が三度倉庫に来ており、今後は答えないと自分で決めたそうです。一五〇本を引き渡しました。銀貨三七五枚を受け取りました」
シルバが炉の前でゆっくりと頷いた。
「セイロスが自分で決めたか」
「はい。商人の理由で、と言っていました」
「それはいい」
少し間があった。炉の木がくすぶっていた。
「連中はガルドと霧穴をつないだ。場所を調べているとセイロスが言うなら、おそらくそうだ。次に来た時は、また一段踏み込んでくる可能性がある」
「はい」
「ここで続けることが、答えになる。揺れなければいい」
「はい」
「月も変わった。次の探索は六十五歩目だ。松明は三本持て」
「わかりました」
炉の火が揺れた。外はもう暗くなっていた。
*
夜、経営の書を開いた。
「信用できる者は、頼んでいないことも自分で判断して動く。それは信頼が一方向ではなかったということだ。そういう者が増えることが、何かを守ることになる」
(セイロスが文を受け取って早く来た。自分で決めた。頼んでいないことを動いてくれる人が、何人かいる)
棚を見た。通常品が四百三本。混合品が三十六本。
明日も採りに行く。




