第9話:骨組みが立つ日
週末の朝、五人が霧穴の入口前に集まった。
ゴルド師匠は無言で到着して、荷を一通り見渡し、最初に骨組み材の寸法を指先で確かめた。一言だけ言った。「始めるか」
それだけだった。
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材木の運搬は骨が折れた。
タルン村からシグ爺さんの裏を経由して、山道を荷車で半分、残りは手で担いだ。一本一本は軽くないが、五人いれば何とかなる。荷車を持ってきたのはカヨスの知恵で、これがなければ三往復かかっていた。
「こういう時に人がいると全然違う」とレインは言いながら、柱材の一端を持ち上げた。
「当たり前のことを今更言わなくていい」とミアが返した。
「でも、一人だったらどうにもなってなかった」
「それを言いたいなら言えばいい。ただ言い方が遠回りすぎる」
カヨスが笑った。「二人、いつもそんな感じなの?」
「違う」と二人が同時に言った。
カヨスはまた笑った。
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骨組みの組み立てはゴルド師匠が主導した。
まず地面に平らな石を四隅に据え、その上に礎材を置く。礎が水平でないと全体が歪む——ミアがそう言っていた通り、師匠はここで一番時間をかけた。石と石の高さをわずかに削って揃え、礎を乗せてみて、また削って。それを三度繰り返してようやく頷いた。
柱を立て、横材を入れる。金具で固定する。
一本ずつ、順番に。
午後の半ばには、骨組みが立った。
三間四方の四本柱。屋根板を乗せる横材。まだ壁も屋根もない。霧穴から流れ出る霧が、骨組みの間を抜けていった。レインはしばらくその骨組みを眺めた。何もなかった場所に、形が生まれている。
「続けるぞ」とゴルド師匠が言った。
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屋根板の取り付けをほぼ終えた頃、麓から荷車の音がした。
「おい」と声がした。
ドゥルガだ。月に一度の来村日より少し早かったが、別の村へ向かう途中でこちらを通ったらしい。荷車を山道の手前に止めて、骨組みの様子を眺めていた。
「霧穴の入口に小屋を建てているのか」
「はい」とレインは答えた。「作業場所が欲しくて」
「作業場所」とドゥルガは繰り返した。「ここまで来る気か」
「材料がここにあるので」
男はしばらく骨組みを眺めて、それから小さく笑った。「面白い若者だな、お前は。ガルドに似た」
「よく言われます」
「嘘をつけ。初めて言ったぞ、わしが」
レインは少し笑った。
「ちょうどよかった。ポーションがあります。今日は三本」
「全部もらおう」とドゥルガは即答した。「銀貨六枚でどうだ」
「一本二枚ずつで、ありがとうございます」
銀貨六枚を受け取ってから、ドゥルガが続けた。「次はもう少し多く用意できるか。エクラ市の知り合いに、薬草の品が安定して入るなら欲しいという商人がいる。月に十本ほど」
月に十本。今の採取量では足りない。だが、小屋ができれば現地乾燥が早くなる。採取の頻度を増やせれば——。
「努力します」と答えた。
「構わん。できる時にできるだけ持ってきてくれ。約束は要らない」
ドゥルガは荷車を引いて山道を下りていった。
*
日が傾いた頃、作業を終えた。
屋根はほぼ完成。壁板はまだだが、雨よけはできた。中に入ってみると、意外なほどしっかりしている。
ゴルド師匠は手の埃を払って「一日でここまで来たなら上々だ」と言い、あとは任せると言ってタルン村へ戻っていった。
カヨスも帰った。ミアだけが残って、金具の増し締めを一本ずつ確かめていた。
「ありがとう」とレインは言った。「ゴルド師匠にも、カヨスにも、ミアにも」
「師匠には礼を言えばいい。カヨスには飯でも奢れ。私は要らない」
「なんで」
「気が向いたからやったんだから、礼は変」
「でも、俺は礼を言いたい」
ミアはしばらく黙った。「……好きにすれば」
骨組みと屋根板だけの小屋が、霧穴の入口の隣に立っている。霧がその間を抜けていく。霧穴の奥から来る風が、まだ止まない。
まだ完成ではない。でも形が、ここにある。
レインはそれを眺めながら、「完成したら、誰かが何かを持ってきてくれる気がする」と思った。根拠はない。ただそんな気がした。




