第81話:六度目
種蒔きから百八十五日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。茎の弾力が今日もあった。布袋に入れた。第一耕地で二本。第三耕地は今日の頃合いではなかった。三か所に水をかけた。水場を通りかかった時に足を止めた。水に指先を入れた。今日も温かかった。
割れ目の方へ向かった。
*
割れ目に一歩入った。苔の青白い光が続いた。十八歩進んで向こう側に出た。
刻みを確かめた。二十一本のままだった。ケルンは来ていなかった。器の向きも変わっていなかった。
今日は奥の開口部には入らなかった。セイロスが今日来る予定だった。
(今日はここまでにする)
割れ目を抜けて大空洞に出た。
*
小屋に戻った。乾燥台に五本を並べた。炭に火をつけた。
この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が五百十本になっていた。一時間ほどで五本が仕上がった。棚に加えた。通常品が五百十五本になった。混合品は三十一本のままだった。
棚を整えた。左に通常品を百五十本分ひとかたまりに寄せた。記録の紙を開いた。「刻みは二十一本のまま変化なし。器の向き変化なし。今日は奥には入らず。通常品五百十五本。セイロス来訪予定」。
*
昼前、小屋の外に馬の蹄の音がした。続いて荷車が止まる音。
扉が叩かれた。
「開いている」
「失礼する」
扉が開いた。
セイロスが入ってきた。後ろに荷役の若者が一人ついていた。荷役は外で待たせた。セイロスが棚を見た。一本手に取り、光にかざした。薄い緑色が揺れた。匂いをかすかに確かめた。それから戻した。
「百五十本か」
「はい。今月の分です」
「変わりはなかったか」
「はい。品は変わっていません」
セイロスが小さく頷いた。荷役を呼んで、百五十本を木箱に詰めさせた。作業の間、セイロスは棚の前に立ったままだった。
「エクラのことを少し話す」
「聞かせてください」
「教会の者が、エクラの問屋を直接回っている。すでに三軒が話を聞かされたと連絡があった」
(また一段進んだ)
「何を話しているのですか」
「ポーションの仕入れ先を聞いている。どの問屋から入ってくるのか、どこで作られているのかを聞いて回っている」
「ここのポーションだと特定しているのですか」
「まだ特定はしていないと思う。ただ——絞り込んでいる。エクラで扱っていない問屋はすでに除かれていると思っていい」
(絞り込んでいる。名前は出ていなくても、近づいている)
「わかりました。ありがとうございます」
セイロスが銀貨を棚の上に置いた。数えるまでもなかった。銀貨三百枚だった。布袋に入れた。
「品物は問題なかった。来月も同じでいいか」
「はい。来月も百五十本用意します」
「そうしてくれ」
荷役が木箱を外に運んだ。セイロスが出がけに一度こちらを向いた。
「教会の動きが速くなっている。備えは持っておいた方がいい」
「わかりました」
扉が閉まった。荷車の音が遠ざかった。
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棚を確かめた。百五十本が減っていた。通常品が三百六十五本になっていた。
(教会がエクラの問屋を回っている。絞り込んでいる。時間の問題だ)
記録の紙を開いた。「セイロス六度目来訪。通常品百五十本引き渡し。銀貨三百枚。エクラで教会が問屋三軒以上を回っているとの報告あり。特定はまだだが絞り込んでいる。通常品三百六十五本」。
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夕方、ミアが来た。扉を叩いてから入ってきた。棚を一度見た。
「三百六十五本か」
「そうだ。セイロスが来た。百五十本引き渡した」
「問題はなかったか」
「なかった。ただ、エクラで教会が問屋を直接回っているとの話があった。三軒以上だと言っていた」
ミアが少し眉を動かした。
「三軒か」
「そうだ。名前は出ていないが、絞り込んでいると」
「師匠に話す。ゴルドにも伝える」
「頼む」
扉が閉まった。
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夕方、シルバの小屋へ向かった。
「今日セイロスが来ました。百五十本引き渡しました。エクラで教会が問屋を三軒以上回っているとの話がありました。名前は出ていませんが絞り込んでいると」
シルバが炉の前で頷いた。
「速くなってきた」
「はい」
「セイロスには、こちらとのつながりを誰にも話さないように、改めて念を押しておけ」
「わかりました。次に来た時に伝えます」
「来た者が来たら、決まった通りにしろ。一度目と変えるな」
「はい。変えません」
少し間があった。
「刻みは変わらなかったか」
「二十一本のままでした。今日は奥には入りませんでした」
「続けろ。次の探索では四十五歩目まで進め」
「わかりました」
炉の火が揺れた。外はもう暗かった。
*
夜、経営の書を開いた。
「動いている者はその動きを止めない。止まるのは目的に到達した時か、力が尽きた時だ。どちらでもない時は動き続けている。動いている者に対しては、備えを崩さずにいることが、唯一の正しい構えだ」
(教会が絞り込んでいる。止まらない。でも備えはある。セイロスもゴルドもシルバじいさんも、それぞれにわかっている。一人で向かっているわけじゃない)
棚を見た。通常品が三百六十五本。混合品が三十一本。
明日も採りに行く。




