表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
81/109

第81話:六度目

 種蒔きから百八十五日目の朝、大空洞に入った。


 採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。茎の弾力が今日もあった。布袋に入れた。第一耕地で二本。第三耕地は今日の頃合いではなかった。三か所に水をかけた。水場を通りかかった時に足を止めた。水に指先を入れた。今日も温かかった。


 割れ目の方へ向かった。



 割れ目に一歩入った。苔の青白い光が続いた。十八歩進んで向こう側に出た。


 刻みを確かめた。二十一本のままだった。ケルンは来ていなかった。器の向きも変わっていなかった。


 今日は奥の開口部には入らなかった。セイロスが今日来る予定だった。


(今日はここまでにする)


 割れ目を抜けて大空洞に出た。



 小屋に戻った。乾燥台に五本を並べた。炭に火をつけた。


 この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が五百十本になっていた。一時間ほどで五本が仕上がった。棚に加えた。通常品が五百十五本になった。混合品は三十一本のままだった。


 棚を整えた。左に通常品を百五十本分ひとかたまりに寄せた。記録の紙を開いた。「刻みは二十一本のまま変化なし。器の向き変化なし。今日は奥には入らず。通常品五百十五本。セイロス来訪予定」。



 昼前、小屋の外に馬の蹄の音がした。続いて荷車が止まる音。


 扉が叩かれた。


「開いている」


「失礼する」


 扉が開いた。


 セイロスが入ってきた。後ろに荷役の若者が一人ついていた。荷役は外で待たせた。セイロスが棚を見た。一本手に取り、光にかざした。薄い緑色が揺れた。匂いをかすかに確かめた。それから戻した。


「百五十本か」


「はい。今月の分です」


「変わりはなかったか」


「はい。品は変わっていません」


 セイロスが小さく頷いた。荷役を呼んで、百五十本を木箱に詰めさせた。作業の間、セイロスは棚の前に立ったままだった。


「エクラのことを少し話す」


「聞かせてください」


「教会の者が、エクラの問屋を直接回っている。すでに三軒が話を聞かされたと連絡があった」


(また一段進んだ)


「何を話しているのですか」


「ポーションの仕入れ先を聞いている。どの問屋から入ってくるのか、どこで作られているのかを聞いて回っている」


「ここのポーションだと特定しているのですか」


「まだ特定はしていないと思う。ただ——絞り込んでいる。エクラで扱っていない問屋はすでに除かれていると思っていい」


(絞り込んでいる。名前は出ていなくても、近づいている)


「わかりました。ありがとうございます」


 セイロスが銀貨を棚の上に置いた。数えるまでもなかった。銀貨三百枚だった。布袋に入れた。


「品物は問題なかった。来月も同じでいいか」


「はい。来月も百五十本用意します」


「そうしてくれ」


 荷役が木箱を外に運んだ。セイロスが出がけに一度こちらを向いた。


「教会の動きが速くなっている。備えは持っておいた方がいい」


「わかりました」


 扉が閉まった。荷車の音が遠ざかった。



 棚を確かめた。百五十本が減っていた。通常品が三百六十五本になっていた。


(教会がエクラの問屋を回っている。絞り込んでいる。時間の問題だ)


 記録の紙を開いた。「セイロス六度目来訪。通常品百五十本引き渡し。銀貨三百枚。エクラで教会が問屋三軒以上を回っているとの報告あり。特定はまだだが絞り込んでいる。通常品三百六十五本」。



 夕方、ミアが来た。扉を叩いてから入ってきた。棚を一度見た。


「三百六十五本か」


「そうだ。セイロスが来た。百五十本引き渡した」


「問題はなかったか」


「なかった。ただ、エクラで教会が問屋を直接回っているとの話があった。三軒以上だと言っていた」


 ミアが少し眉を動かした。


「三軒か」


「そうだ。名前は出ていないが、絞り込んでいると」


「師匠に話す。ゴルドにも伝える」


「頼む」


 扉が閉まった。



 夕方、シルバの小屋へ向かった。


「今日セイロスが来ました。百五十本引き渡しました。エクラで教会が問屋を三軒以上回っているとの話がありました。名前は出ていませんが絞り込んでいると」


 シルバが炉の前で頷いた。


「速くなってきた」


「はい」


「セイロスには、こちらとのつながりを誰にも話さないように、改めて念を押しておけ」


「わかりました。次に来た時に伝えます」


「来た者が来たら、決まった通りにしろ。一度目と変えるな」


「はい。変えません」


 少し間があった。


「刻みは変わらなかったか」


「二十一本のままでした。今日は奥には入りませんでした」


「続けろ。次の探索では四十五歩目まで進め」


「わかりました」


 炉の火が揺れた。外はもう暗かった。



 夜、経営の書を開いた。


「動いている者はその動きを止めない。止まるのは目的に到達した時か、力が尽きた時だ。どちらでもない時は動き続けている。動いている者に対しては、備えを崩さずにいることが、唯一の正しい構えだ」


(教会が絞り込んでいる。止まらない。でも備えはある。セイロスもゴルドもシルバじいさんも、それぞれにわかっている。一人で向かっているわけじゃない)


 棚を見た。通常品が三百六十五本。混合品が三十一本。


 明日も採りに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ