第64話:十三本
種蒔きから百三十二日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。第一耕地で二本。第三耕地は今日収穫がなかった。三か所に水をかけた。
割れ目の方へ向かった。
*
割れ目に一歩入った。十八歩進んで向こう側に出た。
刻みを確かめた。指先でなぞった。一本、二本、三本、四本、区切り、六本、七本、八本、九本、十本、十一本、十二本——。
十三本目があった。
(また来た)
十二本目の隣に、新しい線が一本あった。表面だけが荒かった。三日の間に来た。
(三日。前も三日だった)
器の向きを確かめた。変わっていなかった。草の残骸もそのままだった。
(三日に一度来ている。次も三日後か。そうなら——)
しばらく棚の前で考えた。部屋の中は苔の青白い光だけだった。音は何もなかった。
(来る間隔がだいたい三日から五日だとすれば、自分がここにいる時間を長くすれば、重なる可能性が増える。今日は会えなかった。だが次に来た時は、もう少し長くここにいよう。帰る前に少し待つ。それだけでいい)
奥の開口部は今日は入らなかった。部屋の中に五分ほど立っていた。天井の低い空間に、苔の光が静かに広がっていた。松明がなくてもほんのりと明るかった。
引き返した。
*
割れ目を抜けて大空洞に出た。スケイルリザードの姿はなかった。
水場の前で立ち止まった。水を一度掬った。温かかった。放した。
(刻みを刻む者は今日も来ていた。でも会えなかった。会えるかどうかは、時が合うかどうかだ。焦ることではない)
*
小屋に戻って乾燥台に五本を並べた。炭に火をつけた。
一時間ほどで五本が仕上がった。棚に並べた。通常品が二百八十六本になった。混合品は二十七本のままだった。
*
昼過ぎ、ミアが来た。
扉を叩いてから入ってきた。棚を見た。
「二百八十六本か」
「そうだ」
「刻みはどうだった」
「十三本になっていた。三日の間に来た」
ミアは少し間を置いた。
「三日続いた」
「前も三日だった。三日から五日の間に来ているようだ」
「そのうち顔を合わせる」
「次に行った時は、少し長く部屋にいようと思っている。帰る前に少し待つ」
ミアはしばらく考えていた。
「急がなくていい」
「そうは思っているが、タイミングが合えば会える」
「そうか」
ミアは丸太に腰を下ろした。
「師匠から伝言がある」
「何か」
「教会の者がここへ直接来た場合、ダンジョンのことは話すな。ポーションを作っている小屋がある、それだけにしておけと」
(ゴルドが)
「師匠はなぜそれを」
「師匠もエクラで商いをしていた時期があった。教会の者と何度か話したことがある。その時のことがあると言っていた」
「ゴルドが教会を知っているのか」
「詳しくは言わなかった。でも、知っている」
少し間があった。
「シルバじいさんには伝えた方がいいか」
「今日伝える」
ミアは立ち上がった。棚を一度見た。
「月末まではまだある」
「今月は安定している」
「そうか」
扉が閉まった。
*
夕方、シルバの小屋へ向かった。
「刻みが十三本になりました。三日の間に来たようです」
「器の向きは」
「変わっていませんでした」
「そうか」
少し間があった。
「ゴルドからミアを通じて伝言が来ました。教会の者が直接来た場合、ダンジョンのことは話さず、ポーションを作っている小屋があるとだけ言っておけと」
シルバは炉から手を止めた。
「ゴルドがそう言ったか」
「はい。エクラで教会の者と話したことがあると、ミアから聞きました」
「そうか」
シルバはしばらく黙っていた。
「ゴルドは正しいことを言っている。そうしろ」
「はい」
「一つ動いたというのは」
シルバは少し間を置いた。
「エクラに古い知り合いがいる。文を送った」
「どんな方ですか」
「信用できる。それだけでいい」
それ以上は続かなかった。
「刻みを刻む者に会う機会が近づいているかもしれない。どう動くつもりだ」
「来る時間に自分がいられるよう、少し長く部屋にいる時間を作ろうと思っています。急いで会おうとするのではなく、時が合えば会う」
シルバは一度頷いた。
「それでいい。来た時に自然に会えればいい」
「はい」
帰り際、シルバが言った。
「エクラからの返事がいつ来るかはわからない。来た時に教える」
「わかりました」
*
夜、経営の書を開いた。
「待つことと備えることは違う。待つ者は時が来るのを信じて立ち止まる。備える者は時が来た時に動けるよう、今を使う。その違いは、来た時にしかわからない」
(刻みが十三本になった。三日で来た。次も三日か五日で来るかもしれない。次は少し長くいよう。シルバじいさんがエクラに文を送った。ゴルドが教会について知っている。今日はポーションを五本作った)
棚を見た。通常品が二百八十六本。混合品が二十七本。
明日も採りに行く。




