表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
64/109

第64話:十三本

 種蒔きから百三十二日目の朝、大空洞に入った。


 採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。第一耕地で二本。第三耕地は今日収穫がなかった。三か所に水をかけた。


 割れ目の方へ向かった。



 割れ目に一歩入った。十八歩進んで向こう側に出た。


 刻みを確かめた。指先でなぞった。一本、二本、三本、四本、区切り、六本、七本、八本、九本、十本、十一本、十二本——。


 十三本目があった。


(また来た)


 十二本目の隣に、新しい線が一本あった。表面だけが荒かった。三日の間に来た。


(三日。前も三日だった)


 器の向きを確かめた。変わっていなかった。草の残骸もそのままだった。


(三日に一度来ている。次も三日後か。そうなら——)


 しばらく棚の前で考えた。部屋の中は苔の青白い光だけだった。音は何もなかった。


(来る間隔がだいたい三日から五日だとすれば、自分がここにいる時間を長くすれば、重なる可能性が増える。今日は会えなかった。だが次に来た時は、もう少し長くここにいよう。帰る前に少し待つ。それだけでいい)


 奥の開口部は今日は入らなかった。部屋の中に五分ほど立っていた。天井の低い空間に、苔の光が静かに広がっていた。松明がなくてもほんのりと明るかった。


 引き返した。



 割れ目を抜けて大空洞に出た。スケイルリザードの姿はなかった。


 水場の前で立ち止まった。水を一度掬った。温かかった。放した。


(刻みを刻む者は今日も来ていた。でも会えなかった。会えるかどうかは、時が合うかどうかだ。焦ることではない)



 小屋に戻って乾燥台に五本を並べた。炭に火をつけた。


 一時間ほどで五本が仕上がった。棚に並べた。通常品が二百八十六本になった。混合品は二十七本のままだった。



 昼過ぎ、ミアが来た。


 扉を叩いてから入ってきた。棚を見た。


「二百八十六本か」


「そうだ」


「刻みはどうだった」


「十三本になっていた。三日の間に来た」


 ミアは少し間を置いた。


「三日続いた」


「前も三日だった。三日から五日の間に来ているようだ」


「そのうち顔を合わせる」


「次に行った時は、少し長く部屋にいようと思っている。帰る前に少し待つ」


 ミアはしばらく考えていた。


「急がなくていい」


「そうは思っているが、タイミングが合えば会える」


「そうか」


 ミアは丸太に腰を下ろした。


「師匠から伝言がある」


「何か」


「教会の者がここへ直接来た場合、ダンジョンのことは話すな。ポーションを作っている小屋がある、それだけにしておけと」


(ゴルドが)


「師匠はなぜそれを」


「師匠もエクラで商いをしていた時期があった。教会の者と何度か話したことがある。その時のことがあると言っていた」


「ゴルドが教会を知っているのか」


「詳しくは言わなかった。でも、知っている」


 少し間があった。


「シルバじいさんには伝えた方がいいか」


「今日伝える」


 ミアは立ち上がった。棚を一度見た。


「月末まではまだある」


「今月は安定している」


「そうか」


 扉が閉まった。



 夕方、シルバの小屋へ向かった。


「刻みが十三本になりました。三日の間に来たようです」


「器の向きは」


「変わっていませんでした」


「そうか」


 少し間があった。


「ゴルドからミアを通じて伝言が来ました。教会の者が直接来た場合、ダンジョンのことは話さず、ポーションを作っている小屋があるとだけ言っておけと」


 シルバは炉から手を止めた。


「ゴルドがそう言ったか」


「はい。エクラで教会の者と話したことがあると、ミアから聞きました」


「そうか」


 シルバはしばらく黙っていた。


「ゴルドは正しいことを言っている。そうしろ」


「はい」


「一つ動いたというのは」


 シルバは少し間を置いた。


「エクラに古い知り合いがいる。文を送った」


「どんな方ですか」


「信用できる。それだけでいい」


 それ以上は続かなかった。


「刻みを刻む者に会う機会が近づいているかもしれない。どう動くつもりだ」


「来る時間に自分がいられるよう、少し長く部屋にいる時間を作ろうと思っています。急いで会おうとするのではなく、時が合えば会う」


 シルバは一度頷いた。


「それでいい。来た時に自然に会えればいい」


「はい」


 帰り際、シルバが言った。


「エクラからの返事がいつ来るかはわからない。来た時に教える」


「わかりました」



 夜、経営の書を開いた。


「待つことと備えることは違う。待つ者は時が来るのを信じて立ち止まる。備える者は時が来た時に動けるよう、今を使う。その違いは、来た時にしかわからない」


(刻みが十三本になった。三日で来た。次も三日か五日で来るかもしれない。次は少し長くいよう。シルバじいさんがエクラに文を送った。ゴルドが教会について知っている。今日はポーションを五本作った)


 棚を見た。通常品が二百八十六本。混合品が二十七本。


 明日も採りに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ