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第54話:理由のことだ

 種蒔きから百四日目の朝、採取を済ませた。


 採取ポイントで三本。第一耕地で二本。第三耕地は今日収穫がなかった。水をかけて引き返した。今日は割れ目に入らなかった。別のことがあった。



 小屋に戻って乾燥台に五本を並べた。炭に火をつけた。霧花草を一束加えた。


 待っている間、三日前のことを考えていた。刻みが九本になっていた。シルバじいさんは「ゆっくりやれ」と言っていた。


(シルバじいさんは何を知っているのか)


 一時間ほどで通常品の五本が仕上がった。混合品の一本も仕上がった。棚に並べた。通常品が二百三十六本になった。混合品が二十二本になった。



 昼前に、シルバの小屋へ向かった。


 シルバは机の前に座って何かを見ていた。振り返って、座るよう目で示した。


「一つ聞いていいですか」


「なんだ」


「教会が動いているのはわかりました。シルバじいさんが考えてくれるとも聞きました。ただ——どういうことが起きているのかが、よくわかっていなくて」


 シルバはしばらく黙っていた。


「何が知りたい」


「教会はなぜポーションを調べているのか。なぜ仕入れ先を探しているのか」


 少し間があった。


「教会というものはな、自分たちを通らない商いが大きくなることを好まない。ポーションも例外ではない」


「自分たちを通らない、というのは」


「エクラの冒険者ギルドは、実質的に教会の管理下にある。ポーションの流通も、大きなところはそこを通っている。霧穴のポーションは違う」


「それで調べている、ということですか」


「そういうことだ。ただ——」


 シルバは少し間を置いた。


「調べているのはそれだけではないかもしれない。教会が気にしているのは、ポーションそのものよりも、場所かもしれない」


「場所?」


「霧穴のことだ」


 それだけ言って、シルバは立ち上がった。窓の方を向いた。


「今すぐわかることではない。だが覚えておけ。教会が場所を調べる時は、そこに何かあると知っている時だ」


(霧穴に何かある、と教会は知っている)


 どういう意味かを聞こうとした。しかしシルバの横顔を見て、今日はここまでだと思った。


「わかりました」


「お前の仕事は今のことを続けることだ。それは変わらない」


「はい」


 立ち上がった。


「一つだけ」


 振り返った。


「ポーションを作る理由のことだ。お前がなんと答えたか、覚えているか」


「ないよりあった方がいい、と」


「それだけで十分だ。理由が複雑になった時、人は動きを間違える。お前はそうなっていない」


 シルバはそれ以上何も言わなかった。



 小屋に戻った。外は雲が多かった。窓から山の方を見た。


(場所を調べている。霧穴のことを気にしている)


 机に座って記録を広げた。在庫の本数、引き渡した日付と相手の名前、金額。全部あった。


(今できることをやる)



 夕方、ミアが来た。


「師匠からの伝言がある」


「なんだ」


「取引の記録を手元に持っておけ、と。日付と本数と相手の名前。口だけではなく紙に残しておけ、と師匠が言っていた」


「もうしてある」


「そうか。師匠はお前が記録していないと思ったんだろう」


 ミアは棚を一度見て、出ていった。短い訪問だった。


(ゴルドも気にしている)


 記録をもう一度確かめた。全部あった。



 夜、経営の書を開いた。


「問いへの答えは、問いと同じ大きさである必要はない。小さな答えでも、本物であれば、大きな問いを長く支えることができる」


(ないよりあった方がいい。それは本物の答えだったのかもしれない)


 棚を見た。通常品が二百三十六本。混合品が二十二本。


 明日も採りに行く。

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