第54話:理由のことだ
種蒔きから百四日目の朝、採取を済ませた。
採取ポイントで三本。第一耕地で二本。第三耕地は今日収穫がなかった。水をかけて引き返した。今日は割れ目に入らなかった。別のことがあった。
*
小屋に戻って乾燥台に五本を並べた。炭に火をつけた。霧花草を一束加えた。
待っている間、三日前のことを考えていた。刻みが九本になっていた。シルバじいさんは「ゆっくりやれ」と言っていた。
(シルバじいさんは何を知っているのか)
一時間ほどで通常品の五本が仕上がった。混合品の一本も仕上がった。棚に並べた。通常品が二百三十六本になった。混合品が二十二本になった。
*
昼前に、シルバの小屋へ向かった。
シルバは机の前に座って何かを見ていた。振り返って、座るよう目で示した。
「一つ聞いていいですか」
「なんだ」
「教会が動いているのはわかりました。シルバじいさんが考えてくれるとも聞きました。ただ——どういうことが起きているのかが、よくわかっていなくて」
シルバはしばらく黙っていた。
「何が知りたい」
「教会はなぜポーションを調べているのか。なぜ仕入れ先を探しているのか」
少し間があった。
「教会というものはな、自分たちを通らない商いが大きくなることを好まない。ポーションも例外ではない」
「自分たちを通らない、というのは」
「エクラの冒険者ギルドは、実質的に教会の管理下にある。ポーションの流通も、大きなところはそこを通っている。霧穴のポーションは違う」
「それで調べている、ということですか」
「そういうことだ。ただ——」
シルバは少し間を置いた。
「調べているのはそれだけではないかもしれない。教会が気にしているのは、ポーションそのものよりも、場所かもしれない」
「場所?」
「霧穴のことだ」
それだけ言って、シルバは立ち上がった。窓の方を向いた。
「今すぐわかることではない。だが覚えておけ。教会が場所を調べる時は、そこに何かあると知っている時だ」
(霧穴に何かある、と教会は知っている)
どういう意味かを聞こうとした。しかしシルバの横顔を見て、今日はここまでだと思った。
「わかりました」
「お前の仕事は今のことを続けることだ。それは変わらない」
「はい」
立ち上がった。
「一つだけ」
振り返った。
「ポーションを作る理由のことだ。お前がなんと答えたか、覚えているか」
「ないよりあった方がいい、と」
「それだけで十分だ。理由が複雑になった時、人は動きを間違える。お前はそうなっていない」
シルバはそれ以上何も言わなかった。
*
小屋に戻った。外は雲が多かった。窓から山の方を見た。
(場所を調べている。霧穴のことを気にしている)
机に座って記録を広げた。在庫の本数、引き渡した日付と相手の名前、金額。全部あった。
(今できることをやる)
*
夕方、ミアが来た。
「師匠からの伝言がある」
「なんだ」
「取引の記録を手元に持っておけ、と。日付と本数と相手の名前。口だけではなく紙に残しておけ、と師匠が言っていた」
「もうしてある」
「そうか。師匠はお前が記録していないと思ったんだろう」
ミアは棚を一度見て、出ていった。短い訪問だった。
(ゴルドも気にしている)
記録をもう一度確かめた。全部あった。
*
夜、経営の書を開いた。
「問いへの答えは、問いと同じ大きさである必要はない。小さな答えでも、本物であれば、大きな問いを長く支えることができる」
(ないよりあった方がいい。それは本物の答えだったのかもしれない)
棚を見た。通常品が二百三十六本。混合品が二十二本。
明日も採りに行く。




