第46話:十二歩目
種蒔きから七十一日目の朝、今日は割れ目へ先に向かうことにした。
松明を四本持って大空洞に入った。採取ポイントで三本を摘み取った。第一耕地では二本が収穫できる大きさになっていた。第三耕地に回ると、十回目のグループが指で押すと弾き返す大きさになっていた。五本を摘み取った。三か所に水をかけてから、奥の壁際へ歩いた。
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割れ目の前に立った。
今日も中から風が来ていた。水場と変わらない湿り気のある温かさだった。松明の炎が入口へ向けるとわずかに揺れた。
一歩入った。
前回の十一歩目まで止まらずに進んだ。壁の苔の青白い光が今日も五か所ほど光っていた。天井近くの光の帯もあった。松明を近づけても消えない光だった。奥からの風がここまで来ると少し強かった。
十二歩目を踏んだ。
通路がわずかに広がった。天井がほんの少し高くなった。足元の苔の感触が変わった。乾いていた土が、ここから先は少し湿っていた。
奥を見た。
前回まで「形のある光」だったものが、今日はさらに違った。暗い通路の先に、丸く切り取られたような輪郭がある。扉ではなかった。岩が自然に開いたような形だった。そこから光が漏れていた。柔らかく、白に近い光だった。通路の終わりに、何かの入口のような空間があった。
(入口がある)
松明を持つ手を静止させた。炎が揺れた。
向こうに何かある。部屋か、空洞か、それ以上のものか、まだわからなかった。ただ、今日初めて「形として見えた」ということだけは確かだった。
スケイルリザードは今日来なかった。
(今日はここまでだ)
引き返した。十二歩、十一歩、十歩。大空洞に出ると空気が広く感じた。
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小屋に戻って乾燥台に十本を並べた。採取ポイントの三本、第一耕地の二本、第三耕地の五本だった。炭に火をつけた。
待つ間に霧花草の準備をした。混合品を一本分、乾燥の終わりに合わせて煎じた。
通常品を十本、混合品を一本仕上げた。棚に並べた。通常品が百五十一本になった。混合品が十四本になった。
(来月の百五十本は問題ない)
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午後、村に下りてシルバじいさんの小屋に寄った。
「昨日セイロスが来ました。百本を渡しました。来月は百五十本で話がまとまりました」
じいさんはゆっくりとうなずいた。「百五十本か」
「今のままで積んでいけば間に合います」
「そうだな」じいさんは少し間を置いた。「他に何かあったか」
レインは少し考えた。
「教会の者がエクラでポーションの出どころを聞いていたと、セイロスから聞きました。今のところ何かするわけではないようです」
じいさんは棚に向いたまま動かなかった。少し長い間があった。
「そうか」
それだけ言った。
「気にしますか」
「今すぐ何かはない」じいさんはゆっくりと言った。「ただ、覚えておけ」
覚えておけ、と言った。気にするな、ではなかった。
(覚えておく)
小屋を出た。
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帰り道、夕方の光が山の裾を橙色に染めていた。
割れ目の先の光のことを考えた。丸い輪郭。白に近い光。向こうに空間がある。十三歩目が、次にある。
急がなくていい、と思った。ただ、方角は決まっている。
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夜、経営の書を開いた。
「先が見えた時の正しい対応は、その場で立ち止まることではない。見えたものを正確に覚えておいて、今の一歩を丁寧に続けることだ。立ち止まった者は、歩き続けた者に追いつかない」
割れ目の入口のような輪郭を思い出した。白に近い光。向こうに何かある。
(入口がある)
次は十三歩目だ、と思った。ただ今日ではなかった。
棚を見た。通常品が百五十一本。混合品が十四本。
明日も採りに行く。




