表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/109

第45話:二度目の約束

 種蒔きから六十六日目の朝、大空洞に入った。今日は月末だった。


 採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い光が今日も変わらなかった。第一耕地では二本が収穫できる大きさになっていた。第三耕地に回ると、九回目のグループが指で押すと弾き返す大きさになっていた。五本を摘み取った。三か所に水をかけてから小屋に戻った。



 乾燥台に十本を並べた。採取ポイントの三本、第一耕地の二本、第三耕地の五本だった。炭に火をつけた。


 待つ間に棚を整えた。前回と同じように、通常品を左列に、混合品を右列に並べた。数を確かめた。通常品が二百六本、混合品が十二本あった。今日の分を仕上げれば、二百十六本と十三本になる。


 乾燥が終わった頃に、通常品を十本仕上げた。続けて混合品を一本仕上げた。棚に並べた。通常品が二百十六本になった。混合品が十三本になった。


(問題ない)


 セイロスに百本渡して、百十六本余る。



 セイロスが小屋の前に着いたのは午後の半ばだった。先月と同じ刻限だった。一人で来た。


「二か月目だ」セイロスは小屋に入りながら言った。


「どうぞ」


 棚を一度、左列から右列へ目で確かめた。「通常品が二百十六本か」


「今朝の分まで含めてです」


「混合品は十三本」


「今月も見せるだけにします」


「わかった」セイロスは少し考えるような顔をした。「急ぐことではない」


 前回と同じ木箱を出した。通常品を百本、数えながら移した。セイロスが隣で静かに確かめた。数に間違いがないことを確認してから、袋を置いた。


「銀貨二百五十枚。二か月目も同じ数字だ」


「ありがとうございます」


 木箱の蓋を閉めた。



 少し間が空いた。セイロスは棚の残りを見ながら言った。


「来月は、百五十本用意できるか」


 答える前に少し考えた。今月百本渡して百十六本残る。来月一か月で積み上げられる量は百五十本を超える。


「できます」


「では来月末は百五十本で。銀貨三百七十五枚になる。単価は変えない」


「わかりました」


 セイロスは棚を一度だけ見た。「ゴルドの件は、今も続いているか」


「ミアからの報告では、雨の日でも膝が重くならなくなったと聞いています。歩き方も変わったようです」


「そうか」セイロスは小さくうなずいた。「混合品については、来月また判断する」



 セイロスは帰り際に、ふと付け加えた。


「一つ、知っておいた方がいいことがある」


「はい」


「エクラで、ポーションの出どころを確かめに回った者がいた。教会の者だ。問屋を数件訪ねていたらしい。今のところ話を聞いただけで、特に動いている様子はない」


「……わかりました」


「商いが広がれば、目が向くことはある。名前が出たわけではない。ただ、知っておいた方がいいと思った」


 セイロスは木箱を抱えて出ていった。足音が遠ざかり、静かになった。


(教会が、エクラで聞いた)


 棚の残った通常品を見た。百十六本。混合品が十三本。


 聞いて、今すぐ何かするわけではない。ただ、どこかで足音が近づいている、という感覚があった。



 夕方、ミアが来た。小屋の前で棚を一度見た。


「セイロスが来たか」


「はい。百本、渡しました」


「銀貨は」


「二百五十枚です。来月は百五十本で話がまとまりました」


 ミアは少し間を置いた。「師匠に話す」


「お願いします。ゴルドさんの膝の話が、今日も役に立ちました」


 ミアは何も言わなかった。少しだけ棚の方を見て、出ていった。



 夜、経営の書を開いた。


「約束に数字が加わる時、それは次の段に上がったということだ。数字の大きさではなく、積み上げてきたものが正しかったという証になる。積み上げ続けることが、次の数字を決める」


(来月は百五十本)


 棚を見た。通常品が百十六本。混合品が十三本。


 明日も採りに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ