第42話:百を越えた棚
種蒔きから七十三日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。第一耕地で二本が収穫できる大きさになっていた。第三耕地に回ると、六回目のグループが指で押すと弾き返す大きさになっていた。五本を摘み取った。三か所に水をかけてから小屋に戻った。
乾燥台に十本を並べた。炭に火をつけた。
待つ間に棚を確かめた。今日の十本を足すと百十一本になる。
(百を越えた)
先月、セイロスへ百本を引き渡した翌日の棚には二十三本しかなかった。あれから月が変わって今日の棚は百を大きく越えている。同じことを繰り返しただけだった。それだけで積み上がった。
乾燥が終わった。通常品を十本仕上げた。棚に並べた。通常品が百十一本になった。混合品は十本のまま変わらなかった。
(問題ない)
月末まで十五日余りある。
*
昼前に、ハルトじいさんが小屋を訪ねてきた。七十近い体で山道を登ってきたらしく、小屋の前に着いた時には肩で息をしていた。
「薬を求めに来たわけじゃない」じいさんは腰に手を当てながら言った。「一つ伝えておきたくて来た」
「どうぞ」
じいさんは中に入って腰を下ろした。水を差し出した。一口飲んでから続けた。
「先月買ったポーションを使ってから、朝の起き上がりが変わった。前は布団から出るのに一呼吸かかっていた。今はそれがない」
「そうですか」
「若い頃の怪我だ。二十年以上付き合ってきた。それが急に楽になると、なんだか妙な感じがする」じいさんは苦笑いのような顔をした。「礼を言いに来た」
「ありがとうございます。もう少し様子を聞かせていただけると、作る参考になります」
「そうか。ならまた来る」じいさんは立ち上がった。来た時より少しだけ楽そうに腰が伸びた。
山道を下りていく背中を見送った。
(続いている)
*
午後に村へ下りた。シルバじいさんの小屋に寄った。
「通常品が百本を越えました。今日で百十一本です」
じいさんはゆっくりとうなずいた。「月末まで問題ないな」
「はい。ハルトじいさんも来てくれました。朝の起き上がりが変わったと言っていました」
「そうか」じいさんは少し間を置いた。「先月の一本の話か」
「そうです」
「通常品でそこまで変わることもある。長年の怪我は、ゆっくり効く」じいさんは棚の方を向いたまま言った。「続くかどうかはまだわからない。もう少し聞いておけ」
「はい」
少し間があった。じいさんが口を開いた。
「月末の準備は」
「棚の並べ方は前回と同じにします。混合品は今月も見せるだけにします」
「それでいい」
小屋を出ると、山の向こうが橙色に染まりはじめていた。
*
夕方、経営の書を開いた。
「積み上がったものを数えることは悪いことではない。ただ、数を見て満足した者は、次の積み重ねを怠る。数は現在地を示すだけだ。次の一歩は、また一から始まる」
棚を見た。通常品が百十一本。混合品が十本。
(月末まで、続けていく)
明日も採りに行く。




