第43話:光の輪郭
種蒔きから七十八日目の朝、今日は割れ目へ先に向かうことにした。
松明を四本持って大空洞に入った。採取ポイントで三本を摘んだ。第三耕地に回ると七回目のグループが収穫できる大きさになっていた。五本を摘み取った。第一耕地で二本。三か所に水をかけてから奥の壁際へ歩いた。
*
割れ目の前に立った。
今日も風が来ていた。水場と変わらない湿り気のある温かさだった。
松明を向けて、一歩入った。
前回の九歩目まで迷わず進んだ。
十歩目。
壁の苔の青白い光が前回より確かに増えていた。五か所ほどが光っていた。通路の天井に近い部分にも薄く光る苔の帯が見えた。採取ポイントのミストハーブの根元と同じ青白さだった。
十一歩目を踏んだ。
奥からの風がここまで来ると少し強かった。松明の炎が揺れた。
前を見た。
光があった。
前回まではただの気配だった。今日は違った。暗い通路の先に、うっすらとした丸みのある光の輪郭が見えた。はっきりした形ではなかった。ただ、何かがある、という感覚ではなく、形のある光が、そこにある。
(形がある)
十二歩目を踏み出そうとした。
通路の壁際で何かが動いた。
足が止まった。
スケイルリザードがいた。
壁際に体を低くして止まっていた。今まで大空洞の入口や外側で見かけたことはあった。割れ目の中に入ってきたのは初めてだった。赤い目がこちらを向いていた。
動かなかった。
攻撃しようとする構えではなかった。ただそこにいた。こちらを見ていた。
(何かを知っている)
そういう目だった、と思った。「行くな」でも「来い」でもなかった。ただ、知っている者の目だった。
しばらく見合った。スケイルリザードは動かなかった。こちらも動かなかった。
(今日はここまでだ)
引き返した。スケイルリザードは壁際でじっとしていた。追ってこなかった。
大空洞に出ると空気が広く感じた。
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小屋に戻って乾燥台に十本を並べた。採取ポイントの三本、第一耕地の二本、第三耕地の五本だった。炭に火をつけた。
待つ間に霧花草の準備をした。混合品を一本分、乾燥の終わりに合わせて煎じた。
通常品を十本、混合品を一本仕上げた。棚に並べた。通常品が百四十六本になった。混合品が十一本になった。
(続いている)
月末まで十日余りある。セイロスが来た時に百本は問題ない。
*
夕方、経営の書を開いた。
「道には、呼んでいる方角がある。その方角を感じた時、急いで進む必要はない。方角は変わらない。今日ではなくても、明日でも、その道はそこにある。呼ばれていると感じたなら、それで十分だ」
スケイルリザードの目を思い出した。何かを知っている、と感じた。何を知っているのかはわからなかった。ただ、その方向に何かがある、ということは確かだった。
奥の光に輪郭があった。
(急がなくていい)
棚を見た。通常品が百四十六本。混合品が十一本。
明日も採りに行く。




