表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/109

第40話:ドゥルガの話

 種蒔きから六十七日目、ドゥルガが来た。


 朝の採取と製作を終えた頃、山道の向こうに荷車と白い髭の姿が見えた。月に一度か二度来る、いつもの荷車だった。


「今月の様子はどうだ」ドゥルガは小屋に入るなり言った。


「今日の分を乾燥させる前で、通常品が七十一本になっています。月末まで日数がありますから、百本は問題なく揃えられます」


「そうか」ドゥルガは棚を一度確かめた。薄緑の列を目で数えた。「月末にはセイロスが来るな」


「はい。先月と同じ条件で来ると確認しています」


「そうか。わしの方にも話が来ている。問題ない」


 ドゥルガが椅子に腰を下ろした。水を一杯差し出した。


「まずこれを渡しておきたいのですが」レインは棚の下から布袋を取り出した。「先月の仲立ち料です。銅貨で千枚になります」


 ドゥルガは受け取った。袋の重さを手で確かめてから、荷物の中へ入れた。「銀貨十枚分相当だな。確かに受け取った」


「ありがとうございました。セイロスを紹介していただいて」


「持ってきたのはわしだが、取引を成立させたのはお前だ」ドゥルガは水を一口飲んだ。



 乾燥が終わった後、今日の通常品五本を仕上げた。棚が七十六本になった。


「十本、いただけますか」ドゥルガが言った。


「用意できています」


 十本を布袋に移した。ドゥルガが一本を取り上げて窓の光にかざした。薄緑の色を確かめた。


「均一だ。先月持ち帰ったものと変わらない品だ」


 銀貨二十枚を受け取った。棚を見た。通常品が六十六本になった。


 棚の右に並ぶ混合品の列が目に入った。九本、変わらない。


「混合品はどうだ。今月も売らないのか」


「もう少し生産数が安定してから、改めて話を出させてください」


「急がなくていい。品が確かであることはわしも知っている。量が揃ってから話してくれればいい」



 帰り際に、ドゥルガが少し声を落として言った。


「一つ、伝えておきたいことがある」


「はい」


「聖ヴォルン教会の方で、このあたりのポーションのことを調べている者がいると、エクラで聞いた。わしが直接会った話ではない。商人仲間から出た話だ」


 レインは少し黙った。


「教会が、何かしてくるということですか」


「今すぐ何かということはない」ドゥルガはゆっくりと言った。「教会は各地のポーションの流通を、常に把握したがっている。なぜそうするのかは、わしも正確なところは知らない。ただ、品の評判が街道に広がれば、いつか目が向く。それがわしの知っていることだ」


「わかりました。頭に置いておきます」


「急ぐことはない」ドゥルガは立ち上がった。「ただ、わしが聞いた以上は伝えておくのが筋だ。今日は以上だ」


 荷物を持って山道へ出た。ドゥルガの荷車が木の向こうに消えるのを見届けた。



 小屋に戻った。


 教会。以前もドゥルガの口から一度出た名前だった。あの時も「今すぐ何かということはない」という言い方だった。今日も同じだった。


(いつかは来る)


 それ以上は考えなかった。今やることは変わらない。明日も採りに行く。月末に向けて百本を揃えていく。


 経営の書を開いた。


「先が見えた時の正しい対応は、慌てることではない。今の一歩を丁寧に積むことだ。遠くにあるものは、近くのことをきちんと済ませた者のところへ、やがて来る」


 棚を見た。通常品が六十六本。混合品が九本。


 明日も採りに行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ