第40話:ドゥルガの話
種蒔きから六十七日目、ドゥルガが来た。
朝の採取と製作を終えた頃、山道の向こうに荷車と白い髭の姿が見えた。月に一度か二度来る、いつもの荷車だった。
「今月の様子はどうだ」ドゥルガは小屋に入るなり言った。
「今日の分を乾燥させる前で、通常品が七十一本になっています。月末まで日数がありますから、百本は問題なく揃えられます」
「そうか」ドゥルガは棚を一度確かめた。薄緑の列を目で数えた。「月末にはセイロスが来るな」
「はい。先月と同じ条件で来ると確認しています」
「そうか。わしの方にも話が来ている。問題ない」
ドゥルガが椅子に腰を下ろした。水を一杯差し出した。
「まずこれを渡しておきたいのですが」レインは棚の下から布袋を取り出した。「先月の仲立ち料です。銅貨で千枚になります」
ドゥルガは受け取った。袋の重さを手で確かめてから、荷物の中へ入れた。「銀貨十枚分相当だな。確かに受け取った」
「ありがとうございました。セイロスを紹介していただいて」
「持ってきたのはわしだが、取引を成立させたのはお前だ」ドゥルガは水を一口飲んだ。
*
乾燥が終わった後、今日の通常品五本を仕上げた。棚が七十六本になった。
「十本、いただけますか」ドゥルガが言った。
「用意できています」
十本を布袋に移した。ドゥルガが一本を取り上げて窓の光にかざした。薄緑の色を確かめた。
「均一だ。先月持ち帰ったものと変わらない品だ」
銀貨二十枚を受け取った。棚を見た。通常品が六十六本になった。
棚の右に並ぶ混合品の列が目に入った。九本、変わらない。
「混合品はどうだ。今月も売らないのか」
「もう少し生産数が安定してから、改めて話を出させてください」
「急がなくていい。品が確かであることはわしも知っている。量が揃ってから話してくれればいい」
*
帰り際に、ドゥルガが少し声を落として言った。
「一つ、伝えておきたいことがある」
「はい」
「聖ヴォルン教会の方で、このあたりのポーションのことを調べている者がいると、エクラで聞いた。わしが直接会った話ではない。商人仲間から出た話だ」
レインは少し黙った。
「教会が、何かしてくるということですか」
「今すぐ何かということはない」ドゥルガはゆっくりと言った。「教会は各地のポーションの流通を、常に把握したがっている。なぜそうするのかは、わしも正確なところは知らない。ただ、品の評判が街道に広がれば、いつか目が向く。それがわしの知っていることだ」
「わかりました。頭に置いておきます」
「急ぐことはない」ドゥルガは立ち上がった。「ただ、わしが聞いた以上は伝えておくのが筋だ。今日は以上だ」
荷物を持って山道へ出た。ドゥルガの荷車が木の向こうに消えるのを見届けた。
*
小屋に戻った。
教会。以前もドゥルガの口から一度出た名前だった。あの時も「今すぐ何かということはない」という言い方だった。今日も同じだった。
(いつかは来る)
それ以上は考えなかった。今やることは変わらない。明日も採りに行く。月末に向けて百本を揃えていく。
経営の書を開いた。
「先が見えた時の正しい対応は、慌てることではない。今の一歩を丁寧に積むことだ。遠くにあるものは、近くのことをきちんと済ませた者のところへ、やがて来る」
棚を見た。通常品が六十六本。混合品が九本。
明日も採りに行く。




