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第39話:七歩の先

 種蒔きから六十三日目の朝、松明を三本持って大空洞に入った。


 いつもより多い本数だった。採取と水やりを済ませてから、今日は割れ目の奥へ入るつもりだった。


 採取ポイントで三本を摘み取った。今日はここだけにした。第一耕地と第三耕地の確認は後回しにする。


(今日だ)


 大空洞の奥の壁際まで歩いた。割れ目の前に立った。中から今日も風が来ていた。湿り気のある、水場と同じ温かさだった。


 松明を割れ目の中へ向けた。内側の壁の苔。床の薄い土。緩やかに曲がる通路。前回の二歩の先が今日の続きだった。


 一歩入った。


 二歩。前回引き返した場所だった。


 三歩。通路の曲がりが少し深くなった。幅は変わらなかった。体に触れるほど狭くはなかった。


 四歩。五歩。


 六歩目で、壁の一部が目に入った。岩の表面に薄い苔が張り付いていた。どの壁にも苔はあった。だが、ここの苔は違った。青白く、わずかに光っていた。


 松明を引いて確かめた。松明を近づけても光は消えなかった。苔自体が光っている。採取ポイントのミストハーブの根元と似た色だった。


 七歩。


 奥の光はまだあった。前回よりわずかに近い気がした。松明の光が届かない先から来ていた。反射ではなかった。


(もう少し)


 八歩目を踏み出そうとした時、足が止まった。


 急がなくていい。シルバじいさんの声が頭の中に来た。


(今日はここまでだ)


 引き返した。七歩、六歩、五歩。割れ目の入口の光が大きくなった。大空洞の空気が広く感じた。


 スケイルリザードは今日は来なかった。



 第三耕地に戻った。


 次のグループの五本が、指で押すと弾き返す大きさになっていた。種蒔きから六十三日目——四回目のバッチだった。


 一本ずつ摘み取った。採取ポイントの三本と合わせると八本になった。第一耕地にも今朝採れる大きさのものはなかった。三か所に水をかけてから小屋に戻った。


 乾燥台に八本を並べた。炭に火をつけた。


 待つ間に棚を確かめた。今日の乾燥前の通常品が四十三本だった。今日の八本が加わると五十一本になる。


(積み上がっている)


 乾燥が終わった。通常品を八本仕上げた。棚に並べると五十一本になった。混合品が九本。



 シルバじいさんのところには今日は寄らなかった。


 割れ目のことは、じいさんが「誰にも話さなくていい」と言っていた。今日見てきたことを伝えても、じいさんが「なんでもない」と止めた先にある何かを近づけてしまう気がした。


 苔が青白く光っていた。採取ポイントのミストハーブの根元と似た色だった。それが何なのか、今はまだわからない。奥の光もまだある。今日はそれだけを確かめた。


 小屋の灯りをつけて経営の書を開いた。


「見えた先を急いで確かめようとする者は、往々にして確かめるべきものを踏み越えていく。確かめるべき順序がある」


 棚を見た。通常品が五十一本。混合品が九本。


 また明日、採りに行く。

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