第38話:積み直しの朝
月末の翌朝、大空洞に入った。
昨日と変わらない湿った空気が奥から流れてきた。松明を掲げながら採取ポイントへ向かった。岩の裂け目に三本が育っていた。根元の土を指でほぐしてから一本ずつ摘み取った。
第一耕地に回った。今朝は二本が収穫できる大きさになっていた。第三耕地は次のグループが育ち途中で、あと五日はかかりそうだった。三か所に水をかけてから出口へ向かった。
小屋に戻って乾燥台に五本を並べた。炭に火をつけた。弱火が安定するまで少し待ってから、炭台の距離を調整した。
待つ間に棚を確かめた。通常品が二十三本。混合品が八本。昨日まで百二十三本並んでいた左の列が、今日はこの数字から始まる。セイロスが木箱に百本を入れて山を下りていった後の棚は、まだ少し広く見えた。
乾燥が終わった。通常品を五本、混合品を一本仕上げた。棚に並べると通常品が二十八本、混合品が九本になった。
(また積んでいく)
*
昼の前に小屋の中を整えた。棚の下の段に銅貨の袋を移した。ドゥルガへの仲立ち料——百本分で銅貨千枚になる。次に来た時に渡す分だった。
銀貨を革袋に入れてから数えた。セイロスから受け取った二百五十枚のうち、仲立ち料の銀貨十枚分相当を差し引くと、今月の実収は二百四十枚だった。今まで一度にこれほどの額を持ったことはなかった。
(多い)
ただそれだけ思った。次にしなければならないことが続けて来た。来月も百本揃える。セイロスが月末に来る。今月やったことを繰り返せばいい。変わることは何もない。
革袋を棚の下に収めた。
*
午後になって、ミアが小屋に来た。鍛冶場から来たらしく、手の甲に薄い煤がついていた。
「来月の取引はいつだ」
「月末です。今月と同じ条件で来ます」
ミアは棚を一度見た。「今の数は」
「通常品が二十八本です。月末まで日数がありますから、百本は問題なく揃います」
ミアは少し黙った。棚の薄緑の列をしばらく見ていた。
「ゴルドの膝はどうですか」
「先週の雨の日に、重くならなかったと言っていた」少し間があった。「三回目だ」
「改善していますね」
「本人はまだ認めたがらない」ミアは窓の外に目を向けた。「混合品の在庫は」
「九本あります。まだ生産数が安定していないので、セイロスへの提案は来月以降にしようと思っています」
「それでいい」ミアはそう言って、来た時と同じ速さで出ていった。
*
夕方に村に下りた。シルバじいさんの小屋に寄った。
「布の切れ端はありますか。松明の芯にしたいのですが」
じいさんは棚の奥から古い布をひとつかみ取り出した。使い古しの麻布だったが、油を染み込ませるには十分な厚みがあった。
「ある。山道の枝で芯を作るなら三本は作れる」
「ありがとうございます。油はうちにあります」
受け取った。じいさんは布袋を棚に戻しながら言った。
「月末の取引はうまくいったか」
「はい。百本引き渡しました。銀貨二百五十枚です」
「ドゥルガへの仲立ち料は」
「次に来た時に渡します。銅貨で千枚、用意してあります」
じいさんはゆっくりとうなずいた。「一度目が終わった。今月が二度目の始まりだ。同じように積み上げていけばいい」
「はい」
帰り際にじいさんがもう一言添えた。
「松明を増やすのはなぜだ」
少し考えてから答えた。「奥まで確かめたい場所があります。採取に時間がかかりそうなので」
じいさんは何も言わなかった。しばらく棚の方を向いたまま、動かなかった。
「……急がなくていい。今のやり方で進めていけばいい」
「わかりました」
小屋を出ると、日が山の向こうに傾いていた。
*
翌朝、山道を歩きながら細い枝を六本拾った。
小屋に戻って布を芯に巻いた。油を染み込ませて、乾くまで作業台の端に並べた。半日後に棚の下の箱へ入れた。今まであった四本と合わせて七本になった。
午後に大空洞に入った。採取と水やりを済ませてから、大空洞の奥の壁際まで歩いた。割れ目の前に立った。今日も中から風が流れてきた。湿り気のある、水場と同じ温かさだった。
(もう少しだ)
今日は入らなかった。引き返した。
小屋に戻って経営の書を開いた。
「約束の後に動く者と、約束が終わったと思う者がいる。商いが続くのは、前者だけだ」
棚を見た。通常品が二十八本。混合品が九本。
明日も採りに行く。




