第17話:ドゥルガの月便
ドゥルガが来たのは、昼をすこし過ぎた頃だった。
ロウン街道の方から荷車の音が聞こえてきた時、レインは小屋の乾燥台でミストハーブを整えていた。砂利を踏む車輪の感触と、馬がときどき鼻を鳴らす声。最近は耳が慣れてきて、それだけでわかるようになっていた。
木立の間から日焼けした顔と白い髭が現れた。
「おう、いるか」
「いらっしゃいました」
ドゥルガは荷車を道沿いに止め、縛り紐をほどきながら小屋を見回した。「前回は村の方で会ったな。こっちへ来るのは初めてだ」
「先月完成しました」
ドゥルガは扉の框に手を当て、叩いた。乾いた音がした。建てつけを確かめるように柱を見て、「しっかりした材を使っている」と言った。
「シグ爺さんに分けていただきました。ゴルドさんとカヨスさんに手伝ってもらって」
「良い人間に恵まれた」ドゥルガは軽く目を細めた。「さて——月に十本という話だったが、今月はどうだ」
*
棚の小瓶を数えた。昨日仕上げた分を合わせると十二本になる。乾燥台にまだ三本ほど並んでいる。
先月の初売りから少しずつ積み重ねた在庫が、今月初めて二桁を超えた。あの夜、棚の瓶を何度も並べ直したことをレインは覚えていた。本当にこれだけあるのかと、数えるたびに確かめたくなった。
「十二本、用意できています」
ドゥルガの目がかすかに細くなった。「確かに」
「努力目標とおっしゃっていたので、届くかどうか自信がなかったのですが」
「正直、今月は六本もあれば上々と思っていた」ドゥルガは一本取り上げて光にかざした。薄い緑の液体がわずかに輝く。「種を蒔いたという話をシルバから少し聞いたが、本当か」
「大空洞の中に耕地を作りました。七日で三粒が発芽しています。霧花草の挿し穂も根付きました」
「霧穴の中で、ミストハーブが育つのか」ドゥルガはしばらく沈黙した。「それは聞いていなかった」
「霧と光と土の条件が揃えば育てられると思っています。大空洞にはその三つがありました」
「なるほど」ドゥルガは瓶を棚に戻した。「全部買ってもいい。十二本でも、もっとあっても、エクラの方は受け取ってくれる」
「十本でお願いします」
顔が上がった。
「二本は手元に置いておきます。何か急いで使う時のために」
ドゥルガは口の端をわずかに持ち上げた。「売れる時に全部売ってしまわない、か。それは正しい判断だ」
銀貨が数えられた。一本二枚、十本で二十枚。硬貨が手のひらに乗った時、その重さが以前とまるで違った。先月は六枚だった。今日は二十枚だ。
*
「もう一つ、話がある」
ドゥルガは懐から小さな紙片を取り出した。折り畳んだそれを広げると、人の名前らしき字が書いてある。
「エクラに、わしの古い知り合いの商人がいる。名前はセイロスという。革物と薬品を扱っていて、安定した仕入れ先を探していると聞いた」
「ポーションを、ですか」
「そういうことだ。品物を見て自分で値を判断するタイプで、十年以上付き合ってきた。信用がある人間だ。今のお前の品なら、顔を繋いでおく価値があると思って」
経営の書に「縁は繋いでおけ。縁を拒む者は、後になって同じ門を叩くことになる」という一節があった。エクラへ行く機会はまだない。でも、その時が来た時のために——
「次にエクラへいらっしゃる時に、話を通していただけますか。こちらも機会ができたら伺います」
「急がなくていい。わしが間に立っている間は問題ない」
ドゥルガは小瓶を一本ずつ布で包み始めた。丁寧に、一本一本。「それと——棚の端に、色の違うものが一本あるな」
試作した深い緑の小瓶のことだ。
「別の薬草を混ぜてみたものです。霧花草という——大空洞の岩の隙間に生えていたものです。古い書に、混ぜると効果が倍近く持続すると書かれていました。色と匂いが変わっていますが、効果はまだ確かめられていなくて」
ドゥルガは試作品を手に取り、しばらく光にかざした。「深い色だ。匂いも甘い」
「霧花草の切り口の匂いが移っています」
「効果は確かめたか」
「傷を作って試すわけにもいかなくて、機会を待っています」
ドゥルガは瓶を返した。「今は大事に持っておけ。効果が証明されれば、値のつけようも変わってくる。証明されてから来い」
その言葉が経験から来るものだとわかった。レインは素直にうなずいた。
荷車が道を走り始め、少しずつ音が遠くなっていった。
*
小屋の扉を閉めて棚を眺めた。
残した二本の小瓶が、夕暮れ前の光の中で静かに輝いている。
銀貨二十枚は布袋の中だ。ガルドじいさんと二人で暮らしていた頃、一月に銀貨を一枚も動かさないことがあった。今日はその二十倍が一度に手に入った。
(続けられるか)
来月も同じだけ出すためには、耕地が育つことが要る。発芽した三粒がちゃんと成長して、採取できるようになるまでにはまだ時間がかかる。今はまだ自生のミストハーブに頼っている部分が大きい。
でも——大空洞の耕地は、動いている。
夕暮れに村へ下りてミアに報告した。
「十本、出したのか」ミアが短く言った。
「十本だ。二本は手元に残した」
「なぜ残した」
「何かあった時の備えとして」
ミアはしばらく間を置いた。「それで良い」
それだけ言って、作業に戻った。
褒め言葉だとわかった。




