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第15話:混ぜてみる

 翌朝、レインは大空洞へ向かった。


 霧花草の葉をもう少し採ってくるためだ。昨日採った葉は三枚。実験にはもう少し多い方がいいと思って、早めに出かけた。


 山道を歩くと、昨日より空気が澄んでいた。日差しが木の間から差し込んで、足元の草が光る。山が好きだとガルドじいさんはよく言っていた。こうやって歩いていると、確かに悪くないと思う。


 小屋を素通りして霧穴へ入った。


 採取ポイントでミストハーブを三本折り取り、そのまま大空洞まで進んだ。空洞の岩の隙間から霧花草を七枚ほど丁寧に切り取る。水場の近くに密生している株から、同じくらいの大きさの葉を選んで採った。切り口から甘い匂いがかすかにする。


 第二耕地を確かめた。挿し穂が昨日と変わらず立っていた。


 第一耕地も確かめた。芽は出ていない。でも土が正しく湿っている。


 それだけ確かめて、引き返した。



 小屋に戻って、まずミストハーブを乾燥台に並べた。炭に火をつけて弱火を整える。今日は実験のためにポーション作りと並行して混ぜた煎じ液を作るつもりだ。


 ミストハーブが乾き始めた頃、刻んだものを鍋に入れ、水を加えた。次に霧花草を二枚選んで細かく刻み——ためらった。


(これで合っているのか)


「少量から」とじいさんは言った。二枚が多すぎるだろうか、少なすぎるだろうか。正解はわからない。とにかくやってみるしかない。


 刻んだ霧花草の半分だけを鍋に加えた。弱火のまま、ゆっくり煎じる。


 しばらくすると——匂いが変わった。ミストハーブだけの時は土と草の混ざったような匂いがするが、今日は違う。甘い匂いが混じっている。霧花草の切り口から漂っていたあの匂いだ。お互いが煎じられることで何かが混ざり合っているような気がした。


 色も変わった。普通のポーションも薄い緑色だが、今日はそれより少し深みが出ている。光にかざすと底がいつもより見えにくく、色に重みが増したような感じがした。


(うまくいっているのか、そうでないのか)


 わからない。匂いと色が変わったことはわかる。でも効果があるかどうかを確かめる手立てがない。傷を作って試すわけにもいかない。じいさんに見せれば何かわかるかもしれない。


 一本仕上げた。いつもの薄緑色の小瓶が、今日は少し深い緑色をしている。


 残りのミストハーブでもう二本、普通のポーションを仕上げた。



 乾燥の仕上がりを待つ間に、経営の書を棚から取り出してぱらぱらとめくった。


「価値とは品の中にあらず、受け取る者の必要に応じて変わる」という一節があった。同じポーションでも、瀕死の旅人にとっての価値と、棚に在庫として並んでいる時の価値は違う——そういうことだと思った。


 ぼんやり考えながら、指がページの端に動いた。


 鉛筆の芯の残りが作業台の隅にあったのを思い出して手を伸ばし、なんとなく書き始めた。丸い形。腕につける輪の形。その中に薬を封じておけたなら——腕に巻いておけば緊急の時にすぐ使える、そんなことを考えながら、なんとなく線を描き込んだ。細い線が幾重にも重なる形。どこかで見たような気もするが、どこで見たのかは思い出せない。ただ手が動くままに描いた。


(ただの落書きだが)


 描き終えて少し眺めた。実用になるとは思っていない。でも——いつかこういうものが作れたら、と思った。薬を薬師だけが持つものではなく、誰でも身に着けていられるものにできたら。怪我をした時に、自分で使えるようなものが。


 経営の書を閉じた。落書きのページを折り曲げて目印にした。



 夕暮れ前にシルバじいさんを訪ねた。「できました」と小瓶を差し出した。


 じいさんはしばらく瓶を光にかざして眺めた。


「色が違う」


「はい。いつもの緑より少し深くなっています」


「匂いは」


「甘い匂いが混じっています」


 じいさんは瓶を傾けて鼻に近づけた。長い間、何かを考えるように黙っていた。


「これが……本当に混ざっているとするなら、効きが変わっているはずだ」


「確かめる方法がなくて」


「今はそれでいい」じいさんは瓶を返した。「傷を作って試すことはするな。何かの機会に——商人が来た時にでも怪我人がいれば別だが、そうでなければ待て」


「わかりました」


 帰り道、小瓶を袋の中で大事に持った。効果はまだわからない。でも色と匂いは変わった。何かが変わったことだけは確かだと思った。


 鍛冶場の前を通ると、ミアがちょうど扉の錠をおろしているところだった。


「できたの」こちらへ顔を向けて言った。


「一本だけ。色と匂いが変わった」


「効果は」


「まだわからない。じいさんも待てって言ってた」


 ミアはしばらく小瓶を眺めた。「見せて」


 差し出すと、受け取って光にかざした。「確かに色が違う」


「うん」


「匂い——」小瓶の口を少し開けて確かめた。「甘い。ミストハーブじゃない匂いが混じってる」


「霧花草から来てるんだと思う」


「面白い」ミアは瓶を返した。短く、でも確かにそう言った。「効果がわかったら教えて」


「うん」


 夜、小屋へ戻って棚にポーションを並べた。深い緑の一本を少し離して置いた。並べてみると確かに色の深さが違う。その違いがいつか証明できる日を、少し楽しみにしながら眠った。

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