起源の間
王族の間の奥に開かれた通路は、
まるで紫の光のトンネルのようだった。
エコーたちは守護者に導かれ、
慎重にその道を進んでいった。
アルカナ・リンクの周囲では、エーテル粒子が特に強く反応し、
機体が淡い紫の光をまとっている。
エリスはコックピット内で静かに息を整えていた。
胸の奥がざわつき、
不安と期待が混じり合っている。
エコーが通信で声をかけた。
「エリス……
本当に大丈夫か?
無理だと思ったら、すぐに言うんだ」
「……うん。
ありがとう、エコー。
怖いけど……行きたい。
自分の過去を、ちゃんと知りたい」
ガイルが少し離れた位置から言った。
「俺たちは入口までしか行けねえってことか……
エリスちゃん、絶対に無茶すんなよ。
何かあったら、すぐに叫べ!」
セラは無言で頷き、
シャドウ・ストライカーの狙撃態勢を保ったまま進んでいた。
守護者は一行を先導しながら、
低く静かな声で説明した。
「起源の間は、エテルリアがまだ繁栄していた頃、
王族だけが足を踏み入れることが許された聖域です。
そこはエーテル粒子が最も純粋に濃縮された場所……
王族の記憶と力が、結晶となって眠っています。
姫が試練に挑む際、
私はここまでしか同行できません。
あとは、姫ご自身の力で……」
通路の先が、突然開けた。
そこは、円形の巨大な空間——**起源の間**だった。
部屋の中央に、
巨大な紫色の結晶の柱が一本、
天井から床まで貫くように立っている。
その周囲には、無数の小さな結晶が浮遊し、
ゆっくりと回転していた。
空気は濃密なエーテル粒子で満ち、
息をするだけで粒子が体の中に入ってくるような感覚があった。
守護者が立ち止まり、
槍を胸に当てて一礼した。
「ここが起源の間です。
姫……どうぞ、お進みください。
試練は、あなたが結晶の柱に触れた瞬間に始まります。
そこで、あなたの真の記憶と力が試されます。
成功すれば、王族の力を受け継ぎ、
この回廊の暴走を鎮めることができるでしょう。
失敗すれば……
あなたも、柱の一部となるでしょう」
エリスはアルカナ・リンクをゆっくりと前へ進めた。
エコーが最後に声をかけた。
「エリス。
お前は一人じゃない。
たとえ通信が途切れても、
俺たちはここで待っている。
絶対に、無理はするな」
「……うん。
エコー、ガイル、セラ……
ありがとう。
私、行ってくる」
アルカナ・リンクが結晶の柱に近づくと、
粒子が激しく反応し始めた。
機体全体が紫の光に包まれ、
量子シールドが自動的に展開される。
エリスは深呼吸をし、
ゆっくりと手を伸ばした。
指先が、巨大な紫の結晶の柱に触れた瞬間——
世界が白く染まった。
エリスの意識が、
一気に過去の奔流に飲み込まれていった。
「——試練、開始——」
守護者の声が遠くで響き、
エコーたちは入口で固唾を飲んで見守っていた。
エリスは、
自分の記憶の奥底へと、
ゆっくりと落ちていった




