王族の間
王族の間は、静寂と紫の光に満ちていた。
巨大な結晶の壁が淡く輝き、
王族たちが永遠の眠りについた姿が、
透明な紫の塊の中に閉じ込められている。
その光景は美しく、しかしどこか残酷だった。
エリスはアルカナ・リンクの中で、
長い間、言葉を失っていた。
守護者「ガーディアン・オブ・エテル」は、
槍を静かに地面に立て、
恭しく一礼した。
「姫……
これが、エテルリア王族の最期の姿です。
自らの命と粒子を捧げ、
暴走を一時的に抑え込んだ……
しかし、完全には鎮めきれなかった。
その役割を、今、あなたに託すことになります」
エリスは震える声で尋ねた。
「……私に……何ができるの?
私はまだ……何も覚えていないのに……」
守護者はゆっくりと頭を上げ、
重々しい声で告げた。
「あなたには、王族の血が最も強く流れています。
エーテル粒子と深く結びつく力……
それが、姫である証です。
ですが、
力を完全に取り戻し、
この回廊を鎮めるためには……
**試練**を受けなければなりません」
エコーが即座に反応した。
「試練だと?
エリスに何をさせるつもりだ」
守護者は穏やかだが、決して譲らない口調で続けた。
「王族の間よりさらに奥……
『起源の間』と呼ばれる場所があります。
そこは、大共鳴の中心地。
エーテル粒子が最も濃く、
最も純粋な形で存在する聖域です。
そこで姫は、
自分の過去と向き合い、
王族としての記憶と力を取り戻す試練を受けます。
成功すれば、
あなたは真の『エーテルの姫』として目覚め、
この回廊の暴走を鎮めることができるでしょう。
失敗すれば……
粒子に飲み込まれ、
永遠に結晶の一部となるでしょう」
ガイルが低く唸った。
「失敗したら結晶になるって……
随分と厳しい試練じゃねえか。
エリスちゃんを賭け事みたいに扱うんじゃねえよ」
セラが静かに言った。
「……エリス。
無理に受ける必要はない」
エリスは長い沈黙の後、
ゆっくりと口を開いた。
「……受ける。
お父様とお母様が、
みんなが……
私を守るために命を捧げたのに、
私が逃げてばかりじゃ……
意味がない」
彼女の声はまだ震えていたが、
そこには確かな意志が宿っていた。
「私……知りたい。
自分が誰だったのか。
お姉ちゃんがどんな思いで私を逃がしたのか……
そして、私に何ができるのか……」
守護者が静かに頷いた。
「覚悟を決めたのですね。
よろしい。
では、起源の間への道を開きましょう。
ただし……
試練は一人で行うものです。
他の者は、入口までしか同行できません」
エコーが厳しい声で言った。
「エリスが危険に晒されるなら、
俺は絶対に止める。
それだけは覚えておけ」
守護者は静かに答えた。
「わかりました。
姫の意志を尊重します。
……どうか、ご無事で」
紫の粒子が再び渦を巻き、
王族の間の奥の壁がゆっくりと開き始めた。
そこから、さらに濃い紫の光が漏れ出している。
エリスはアルカナ・リンクの操縦桿を強く握り、
静かに呟いた。
「……お姉ちゃん……
みんな……
私、頑張るから……」
エコーはエリスの機体をじっと見つめ、
心の中で誓った。
(エリス……
お前が本当に望むなら、
俺は見守る。
だが、危険を感じたら……
必ず止める)
紫の光が、
一行を新たな運命へと誘っていた




