表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
XRX-03:灰色の咆哮  作者: 装機伊織
第6基
60/65

姉妹

紫の粒子が広場全体を包み込み、

古代の幻影が現実と重なり始めた。


エリスはアルカナ・リンクのコックピット内で、

激しい頭痛とともに目を閉じた。

守護者の声が、静かに、しかし深く響く。


「姫よ……

あなたの記憶の欠片を、今、見せて差し上げましょう。

私の視点から……大共鳴のあの時を」


——世界が切り替わった。


エリスは、自分が「見ている」視点が、

守護者であることを理解した。


紫の光が空を埋め尽くし、

エテルリアの街が崩壊していく。

叫び声と爆音が響く中、

守護者は王族の避難路を必死に守っていた。


「姫! こちらです!」


守護者の視線の先には、

幼いエリスと、

少し年上の少女が手をつないで走っていた。


年上の少女——銀色の短髪に青みがかった瞳。

エリスは息を飲んだ。


(……ルル……?)


幼いエリスが泣きながら叫ぶ。


「お姉ちゃん……怖いよ……!

おうちが……壊れちゃう……!」


ルルは妹の手を強く握り、

必死に走りながら答えた。


「大丈夫……エリス。

お姉ちゃんが守るから……

絶対に離さないで!」


守護者は二人の前に立ち、

巨大な盾で崩れ落ちる天井の破片を防いだ。

紫の粒子が暴走し、

周囲の建物が次々と崩壊していく。


「王女様方!

この先の粒子保存装置へ!

そこから脱出可能です!」


ルルはエリスを抱きかかえ、

守護者の後を必死に追いかけた。

二人はようやく粒子保存装置の部屋に辿り着いた。


装置は淡い紫の光を放ち、

緊急脱出用のカプセルが二つだけ残されていた。


守護者が急いで言った。


「時間がない!

二人とも、カプセルへ!

この装置で、未来へ飛ばします!

姫……どうか生き延びて……

エテルリアの希望となってください!」


ルルはエリスを一つのカプセルに押し込み、

自分で隣のカプセルに入ろうとした。


しかし——


装置の出力が限界を迎え、

光が不安定に揺らぎ始めた。


ルルは一瞬、迷った。

そして、妹のカプセルを強く抱きしめ、

自分のカプセルを諦めた。


「エリス……

お姉ちゃんはここに残る。

あなただけでも……生きて……」


エリスが泣きながら叫んだ。


「お姉ちゃん! いっしょに行こうよ!

置いていかないで……!」


ルルは妹の頰に優しく触れ、

涙を堪えて微笑んだ。


「ごめんね……

お姉ちゃんは、

あなたを守るために……ここにいる。

エリス……生きて。

いつか、きっと会えるから……」


カプセルが閉じ、

紫の光が爆発的に広がった。


エリスはカプセルの中で、

ルルの姿が遠ざかっていくのを、

ただ見つめていた。


——幻影が途切れた。


エリスはコックピット内で、

大きく息を荒げていた。

頰に涙が伝っている。


「……お姉ちゃん……

ルル……

私……置いていかれたんじゃなくて……

守ってもらったんだ……」


守護者の声が、再び静かに響いた。


「その後……

あなたの姉は、脱出装置の暴走で粒子に飲み込まれ、

記憶を失った状態で現代に流れ着きました。

アルテミス連邦に保護され、

特殊部隊に編入された……

それが、今のルルです。

彼女は今も、あなたを守るために戦っています。

ただ、連邦に家族を人質に取られ、

自由に動けないでいる……」


エリスは震える声で言った。


「……ルル……

お姉ちゃんが……ずっと、私を守ってくれてた……

私、知らなかった……」


エコーが優しく呼びかけた。

「エリス……

大丈夫か?

もう少し休むか?」


エリスはゆっくりと首を振り、

アルカナ・リンクの操縦桿を握り直した。


「……大丈夫。

もっと……知りたい。

私の過去も……

お姉ちゃんのことも……」


守護者が静かに言った。


「ならば、

さらに奥へ……

王族の記録室へ案内しましょう。

そこに、あなたの真実が眠っています」


紫の粒子が再び渦を巻き、

守護者はゆっくりと歩き始めた。


エリスは涙を拭い、

静かに決意を固めた。


「お姉ちゃん……

待ってて。

私、今度は……私が守る番だから……」


紫の回廊の奥で、

失われた姉妹の物語が、

静かに動き始めていた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ