紫の共鳴
紫の回廊は、想像以上に圧倒的な光景だった。
巨大な紫色の結晶が地面から無数に突き立ち、
まるで巨大な紫水晶の森のように広がっている。
空気そのものが濃密なエーテル粒子で満たされ、
淡い紫の霧が視界を覆っていた。
エコーのファントム・クロノスを先頭に、
アルカナ・リンク、アイアン・フォートレス、シャドウ・ストライカーが
遺跡の外周に着陸した。
「ここが……紫の回廊……」
エコーが静かに呟いた。
粒子濃度が異常なほど高く、
機体のセンサーが警告音を鳴らし続けている。
グリム商会の調査チームがすでに遺跡の入口付近にテントを張って待機しており、
リナは彼らと合流して上空の解析を開始した。
「リナ、ここは任せた。
俺たちは内部に入る」
「了解。
粒子濃度が危険水域よ。
定期的に通信チェックして。
何か異常があればすぐに伝えて」
エコー、エリス、ガイル、セラの四機は、
遺跡の巨大な入口へと進んだ。
紫の結晶がアーチ状に連なり、
まるで古代の神殿のような威容を誇っていた。
そして——
入口をくぐった瞬間。
「っ……!」
全員の頭に、激しい痛みが襲いかかった。
エコーは操縦桿を握る手に力を込め、
歯を食いしばった。
ガイルが低く唸り、セラが小さく息を飲む。
最も強い反応を示したのは、エリスだった。
「……あ……っ!」
アルカナ・リンクのコックピット内で、
エリスは頭を抱えてうずくまった。
青紫の粒子が制御できずに機体から溢れ出し、
周囲の結晶と共鳴するように輝いた。
「エリス!?」
エコーがすぐに声をかける。
エリスは苦しげに息を荒げながら、
震える声で言った。
「……呼ばれてる……
誰かに……
私を……呼んでる……
奥のほうから……ずっと……」
頭痛は徐々に引いていったが、
その代わりに、
エリスの中に奇妙な感覚が広がっていた。
懐かしいような、
恐ろしいような、
そして、強く惹かれるような感覚。
「エリス……大丈夫か?」
「……うん。
痛みはもう……少しだけ。
でも、確かに感じる。
この遺跡が……私を知ってる。
私が……ここに来るのを待ってた……」
ガイルが警戒しながら言った。
「気味が悪いな……
粒子濃度が濃すぎるせいか?」
セラが静かに応じた。
「……エリスを中心に、粒子が反応している。
注意が必要だ」
エコーはエリスの機体を横目で見ながら、
決意を固めた。
「リナ、状況を報告。
俺たちはもう少し奥へ進む。
エリスが何かを感じている。
……これは、ただの遺跡じゃない」
リナの声が通信で返ってきた。
「了解。
外から粒子パターンを解析してるわ。
エリスを中心に、古代の反応パターンが一致してる……
これは、もしかすると……
エリスがエーテルと『同期』している可能性がある」
エリスはアルカナ・リンクの操縦桿を握りしめ、
紫の粒子が舞う奥の闇を見つめた。
「……行きたい。
奥へ。
私……知りたい。
私が何者なのか……」
エコーは静かに頷いた。
「わかった。
だが、無理はするな。
お前が危険なら、すぐに引き返す」
四機は紫の光に包まれた回廊の奥へと、
ゆっくりと進んでいった。
どこか遠くから、
古い声が、
エリスだけに囁き続けていた。
「ようこそ……
失われた娘よ……
ここに、すべての記憶が眠っている……」




