紫の回廊へ
ノヴァリア大陸上空。
アルカナ・リンクの紫と青の機体が、青紫の粒子を優しく撒き散らしながら飛行していた。
初めての出撃。
エリスはコックピット内で、緊張しながら操縦桿を握っていた。
「エリス……大丈夫か?」
エコーの声が通信で響く。
彼のファントム・クロノスがすぐ隣を飛んでいる。
「……少し、手が震える。
でも……嬉しい。
自分の機体で飛べるの、初めてだから」
エリスはアルカナ・リンクのメインスクリーンに映る自分の機体を見て、
小さく微笑んだ。
粒子リンクシステムが、彼女の感情に合わせて優しく脈打っている。
その時、グリム商会の担当者から優先通信が入った。
「ナイトメアの皆さん、
本日はありがとうございます。
担当者のカルロスです。
現在、皆さんが向かっているのは『紫の回廊』と呼ばれる古代遺跡群です」
通信画面に中年男性の姿が映る。
表情は緊張していた。
「数日前から、この遺跡でエーテル粒子の異常活性化が確認されています。
通常の10倍以上の粒子濃度……
しかも、遺跡の奥で未知の反応が観測されていて、
グリム商会単独では調査が不可能と判断しました。
依頼内容は二つです。
1. 異常の原因調査
2. 高純度エーテルサンプルの回収
……ただ、注意してください。
この数日で、アルテミス連邦の調査隊が2チーム、
そしてヴォートの残党らしき勢力も動き出したという情報があります。
おそらく、皆さんと同じ目的で動いているはずです」
エコーが冷静に尋ねた。
「戦闘の可能性は?」
「……高いです。
特にヴォートの残党は、
エリス嬢の能力に興味があると思われます。十分にご注意ください」
エリスは通信を聞きながら、
自分の手を見つめた。
青紫の粒子が、指先から少しだけ漏れている。
「……私のせい、かも……」
エコーが優しく声をかけた。
「エリス。お前は悪くない。
これは俺たち全員の依頼だ。
一緒に解決しよう」
ガイルの声が明るく入ってきた。
「そうだぜ!
アルカナ・リンクの初陣、派手に決めてやろう!
俺のアイアン・フォートレスが、しっかり守ってやるからな!」
リナが分析データを共有しながら言った。
「粒子濃度が上がってるエリアに近づくと、
エリスの同期率も上がる可能性があるわ。
気をつけて。
制御できなくなったらすぐに伝えて」
セラは静かに、
「エリス……無理はしないで」
エリスは深呼吸をし、
アルカナ・リンクの操縦桿を強く握り直した。
「……うん。
みんなと一緒に、頑張る。
失われた記憶……
この紫の回廊で、何か見つかるかもしれない」
紫の回廊の入口が見えてきた。
巨大な紫色の結晶が地面から無数に突き出た、
幻想的でありながら不気味な古代遺跡群。
エーテル粒子が濃く漂い、
空気そのものが震えているように感じられた。
エコーが全機に指示を出した。
「全機、警戒レベルを最大に。
エリス、
お前の機体が粒子に最も敏感だ。
何か感じたらすぐに教えてくれ」
エリスは頷き、
アルカナ・リンクの量子シールドを軽く展開させた。
紫の粒子が機体を優しく包み込む。
「分かった……
エリス、頑張る!」
紫の光が、
新たなる悪夢の翼を照らしていた




