別れの挨拶と小さな一歩
サンプル採取作戦が成功に終わった翌朝。
ヴォルテックの輸送機が、ナイトメアの仮拠点に再び着陸した。
リ・スター率いるハウンド隊は、採取したエーテルのサンプルを厳重にケースに収め、
本部へ戻る準備を整えていた。
リ・スターはいつもの熱血漢らしい笑顔で、ハンガーに飛び込んできた。
「よお、ナイトメアのみんな!
サンプル、無事に採取できたぜ!
お前らのおかげだ!
本当にありがとう!」
ガイルが工具を片手に笑って迎えた。
「リ・スター、相変わらず元気だな。
お前のハウンド隊がいなきゃ、もっと苦戦してたぜ」
リナがデータパッドを操作しながら言った。
「エーテルのサンプル、ヴォルテックに届けるのね。
解析データも共有してくれる?
私たちも研究に使いたいわ」
セラは静かに頷き、
リ・スターに軽く頭を下げた。
エコーはファントム・クロノスの傍らに立ち、
エリスをそっと自分の後ろに隠すようにした。
少女はまだ少し緊張した様子で、リ・スターの大きな声を聞いていた。
リ・スターはエリスに気づき、
いつものように大声で話しかけようとしたが、
エコーの視線に気づいて声を抑えた。
「エリスちゃん……元気か?
俺、リ・スターだぜ。
熱血ハウンド隊長!
……前はびっくりさせちゃって悪かったな」
エリスはエコーの背中に隠れたまま、
恐る恐る顔を少しだけ出した。
「……リ・スター……さん」
リ・スターは嬉しそうに笑ったが、
声をできるだけ小さくして言った。
「そうだ! リ・スターさんだ!
お前、えらい頑張ったよな。
あの古代のムカデみたいなやつ、止めてくれたんだろ?
お前、すげえよ!」
エリスは少しだけ微笑み、
エコーの袖を握ったまま、小さな声で答えた。
「……エコーが、守ってくれたから……
私、頑張った」
エコーは少女の頭を優しく撫で、
リ・スターに軽く頷いた。
「ありがとう、リ・スター。
お前たちの援護がなければ、採取は成功しなかった」
リ・スターは胸を叩き、
少し照れくさそうに笑った。
「へへっ、当然だろ!
俺たちはもう仲間だ。
ナイトメアとハウンドは、一心同体だぜ!
次も一緒に戦おうな!」
ガイルが笑いながらリ・スターの肩を叩いた。
「そうだな。
次はもっと派手に暴れようぜ!」
リ・スターは皆に手を振り、
最後にエリスに向かって、
できるだけ優しい声で言った。
「エリスちゃん、また会おうな。
俺、待ってるぜ!」
エリスはエコーの背後から少しだけ顔を出し、
小さく手を振り返した。
「……うん……またね、リ・スターさん」
リ・スターは満足げに笑い、
輸送機に乗り込んだ。
「じゃあな、みんな!
また熱く戦おうぜ!」
輸送機が離陸し、
灰色の空へ消えていく。
ハンガーに残ったナイトメアの面々は、
静かにその姿を見送った。
エコーはエリスの頭を撫でながら、
小さく微笑んだ。
「少し、心を許せたか?」
エリスはエコーの袖を握ったまま、
小さく頷いた。
「……リ・スターさん、うるさいけど……
いい人……だと思う」
ガイルが笑いながら言った。
「リ・スターはあんな感じだけど、
頼りになる奴だぜ。
エリスも、少しずつ慣れていけよ」
リナがデータパッドを閉じながら言った。
「エーテルのサンプルはヴォルテックに届くわ。
解析結果が来たら、すぐに共有する。
エリスの能力にも、何か関係があるかもしれない」
セラは無言で頷き、
エリスの肩に軽く手を置いた。
静かに見守る、その仕草が、
少女に安心感を与えていた。
エコーは皆を見回し、
静かに言った。
「これからも、俺たちは悪夢だ。
レオンが目を覚ますまで……
そして、覚めた後も。
エリス、お前も、俺たちの仲間だ」
エリスはエコーの言葉を聞き、
小さく微笑んだ。
「……うん。
エコー……みんな……ありがとう」
仮拠点の照明が、赤と青に優しく揺れた。
ノヴァリア大陸の風が、
静かに皆の影を包み込んでいた。
だが、物語はまだ、続いていく。




