紫の粒子が舞い始めた
3日後の朝。
ノヴァリア大陸の仮拠点に、
重厚なエンジン音が響いた。
ヴォルテック第1中隊、リ・スター率いるハウンド隊の輸送機が、
砂塵を巻き上げて着陸した。
機体から降りてきたリ・スターは、いつもの熱血漢らしい笑顔で手を振った。
「よお、ナイトメアのみんな!
待たせたな!
エーテルサンプル採取の共同作戦、
俺たちハウンドが全力でバックアップするぜ!」
ガイルが工具を片手に笑って迎えた。
「リ・スター、相変わらず元気だな。
お前のハウンド・プライム、ウィングパック付きで飛べるようになったか?」
リ・スターが胸を叩く。
「もちろん!
これで空も地面も俺たちのものだ!
隊長の分まで、熱く暴れてやるよ!」
エコーはファントム・クロノスの傍らに立ち、
静かに一行を迎え入れた。
リ・スターのマシンガントークが始まると、
エリスはエコーの背中にぴったりと隠れてしまった。
少女の小さな手が、エコーの服の裾を強く握る。
リ・スターはエリスに気づき、
さらに声を弾ませた。
「おお! この子が例のエリスちゃんか!
可愛いな! 俺はリ・スター!
ハウンドの熱血隊長だぜ!
これからよろしくな! 一緒に冒険しようぜ!」
エリスはエコーの背中に顔を埋め、
小さな声で震えた。
「……エコー……怖い……
早口……」
エコーは少女の頭を優しく撫で、
リ・スターに苦笑しながら言った。
「リ・スター、少し声のトーンを落としてくれ。
エリスはまだ、慣れていない」
リ・スターは慌てて手を振った。
「悪い悪い!
熱くなりすぎた!
エリスちゃん、俺は味方だぜ。
安心してくれ!」
エリスは恐る恐るエコーの背後から顔を出し、
リ・スターをちらりと見た。
リ・スターがにこっと笑うと、
少女は再びエコーの背中に隠れた。
エコーは小さく息を吐き、
皆を集めて作戦の最終確認をした。
「今回の依頼はエーテルサンプルの採取。
遺跡は地下深く、崩落リスクが高い。
俺がファントム・クロノスで上空支援と偵察。
ガイルは物理防衛、リナはデータ解析、セラは狙撃支援。
リ・スターのハウンド隊は外周を固めてくれ。
エリスは……」
エコーは少女を見下ろした。
エリスはエコーの袖を強く握り、
上目遣いに訴えた。
「……私も、行く。
エコーと一緒に……」
エコーは一瞬迷ったが、
少女の瞳に宿る不安を見て、
静かに頷いた。
「わかった。
お前は俺の機体に乗る。
絶対に離れるな。
危険になったら、すぐに拠点へ戻す」
リナが心配そうに言った。
「本当にいいの?
エリスはまだ不安定よ」
エコーは静かに答えた。
「彼女は俺の機体の中にいる。
守れる。
それに……彼女も、この世界を知る権利がある」
準備が整い、
連合の輸送機と機体群は遺跡のある座標へ向かった。
作戦区域は、ノヴァリア大陸北部にある深い地下遺跡だった。
入り口は崩落した岩盤に隠されており、
ヴォルテックの事前調査でようやく見つかった場所だ。
輸送機が遺跡上空でホバリングし、
ナイトメアとハウンドの機体が次々と降下した。
エコーのファントム・クロノスはエリスを乗せたまま、
上空で警戒を続けている。
エリスはコックピット内で、
エコーの背中に寄りかかりながら小さな声で言った。
「エコー……ここ、暗い……」
エコーは優しく答えた。
「大丈夫だ。
俺がいる。
お前は、ただ見ていてくれ」
ガイルのアイアン・フォートレスが先頭に立ち、
岩盤を慎重に掘り進む。
セラのシャドウ・ストライカーが高所から狙撃態勢を取り、
リ・スターのハウンド隊が外周を固める。
リナの声が通信に響いた。
「エーテル反応、地下300メートル付近で確認。
微量だが、確実に存在するわ。
採取は慎重に」
エコーは上空から全体を俯瞰し、
冷静に指示を出した。
「ガイル、ゆっくり進め。
セラ、異常があれば即座に報告。
リ・スター、外周に注意」
作戦は順調に進んでいた。
地下深くに到達し、
淡い紫色の鉱脈が壁面に露出した瞬間、
全員が息を飲んだ。
エリスがコックピット内で、
小さな声を上げた。
「……紫……
呼んでる……」
エコーの瞳がわずかに細くなった。
(エリス……お前も、感じているのか)
リ・スターが興奮気味に言った。
「これがエーテルか!
すげえ輝きだぜ!
サンプル採取、急げ!」
ガイルが慎重に採取ツールを展開し、
紫の結晶を少しずつ削り取っていく。
その時——
遺跡の奥から、低い振動が響いた。
エコーのセンサーが警戒レベルを上げた。
「何か来る……
みんな、警戒を!」
作戦は、まだ終わっていない。




