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XRX-03:灰色の咆哮  作者: 装機伊織
第4期
38/65

エリスは

ナイトメアの仮拠点は、ノヴァリア大陸の廃墟に静かに佇んでいた。


エコーはファントム・クロノスのコックピットで、

一人でデータを解析していた。

エリスの体に残る粒子反応は、

ヴォートの感覚共有システムの残滓である可能性が高い。

しかし、それだけでは説明がつかない部分があった。


「彼女の記憶……まだ戻っていない。

だが、ヴォートの残党が新大陸に構えた研究所があれば……

何か手がかりがあるはずだ」


エコーは決意した。

今夜、一人でその研究所を襲撃する。

仲間を巻き込むのは危険すぎる。

レオンがいない今、自分が影として動くべきだった。


ファントム・クロノスを静かに起動させ、

拠点の裏口から滑り出そうとしたその時——


「……エコー?」


小さな声が背後から聞こえた。

エリスが、簡易ベッドから起き上がり、

エコーの機体を見上げていた。


エコーは機体を止めた。

「エリス……寝てろ。

俺は少し、外に出るだけだ」


少女は首を横に振り、

コックピットに近づいてきた。

「私も……行く。

エコーが一人で行くの、嫌だ」


エコーは一瞬、言葉に詰まった。

レオンならどうするだろうか——

そんな思いが頭をよぎる。


「……危ないぞ」


「大丈夫。

エコーがいるから」


エコーは小さく息を吐き、

コックピットハッチを開けた。

「わかった。一緒に来い。

だが、絶対に離れるな」


ファントム・クロノスは夜の廃墟を低空で飛んだ。

エリスはコックピット内でエコーの背中に寄りかかり、

静かに外の景色を見つめていた。


目的地は、ノヴァリア大陸の北部に隠されたヴォート残党の研究所。

表向きは廃棄された研究施設だが、

内部ではまだ実験が続けられているという情報があった。


研究所に到着すると、

エコーは機体をステルスモードに切り替え、

機体を降りて地下入り口から侵入した。

エリスはエコーにしがみついている。


施設内部は白い廊下と無数の実験室が並んでいた。

モニターには、Eシリーズの実験ログが残っている。


エコーは一つの端末にアクセスし、

E13に関するデータを呼び出した。


画面に映るのは、エリスの実験記録。

「E13はレオンを超えるための最終実験体。

承認欲求を極限まで刺激し、

エーテル粒子を注入。

結果、粒子を操る能力が発現したが、

精神崩壊のリスクが高く、失敗作と判定……」


エリスがその画面を見て、

突然、頭を抱えてうずくまった。


「……痛い……

白い部屋……針……

『特別だ』って……言われた……

でも、みんな……いなくなった……」


エコーは機体を降り、

少女の肩に手を置いた。

「エリス……思い出してるのか?」


少女の瞳に、青紫の粒子が強く瞬いた。

記憶の断片が、洪水のように溢れ出す。


「私は……E13……

ヴォートで作られた……

レオンを超えるために……

でも、失敗して……捨てられた……

アルテミス連邦に……渡されて……」


エリスは震えながら、エコーの胸に顔を埋めた。

「エコー……怖い……

私、壊れちゃう……?」


エコーは少女を抱きしめ、

静かに言った。

「壊れない。

お前はもう、俺たちの仲間だ。

レオンがいなくても……俺が守る」


その時、施設の警報が鳴り響いた。

ヴォートの残党が気づいたのだ。


エコーはエリスを機体に戻し、

ファントム・クロノスを起動させた。

「もう十分だ。

記憶は少しずつでいい。

今は、帰るぞ」


研究所を脱出する間、

エリスはコックピットの中で、

小さな声で繰り返した。


「……エリス……

私は、エリス……」


仮拠点に戻ったエコーは、

少女をベッドに寝かせ、

皆に報告した。


「エリスはヴォートの実験体だった。

失敗作として捨てられ、アルテミス連邦に渡されたらしい。

彼女の力は……まだ不安定だ。

だが、俺たちは彼女を守る」


ガイルが拳を握った。

「守る。

絶対に」


リナが頷き、

「分析を続けるわ。

彼女の粒子反応……鍵になるかもしれない」


セラは静かに少女を見つめ、

何も言わずに見守った。


エコーは窓の外の灰色の空を見上げ、

心の中で誓った。


(レオン……お前がいない今、

この子を守るのが、俺の使命だ)


ノヴァリア大陸の夜は、

静かに、しかし確実に、

新たな影を落としていた

【機密文書】実験レポート Eシリーズ 第13号個体


**文書番号**:E-13-047

**実験責任者**:Dr. Alan

**日付**:ヴォート暦 47年 9月 12日

**分類**:極秘・破棄推奨


#### 1. 個体概要

- 個体名:E13

- 年齢推定:12〜14歳(外見)

- 由来:旧大陸東部孤児収容施設より回収。

神経接続適性値が極めて高く、ヴォートの最終実験体として選定。

- 目的:レオンの「虚空の痛み」と「レッドポイント」を超える、

次世代感覚共有実験体を作成すること。

最終目標は「完全なる悪夢の具現化」——

レオンを超える力を持ち、ヴォートの支配下で運用可能な兵器個体。


#### 2. 実験経過

Phase 1:神経再構築

回収後、即時記憶消去処置を実施。

超神経適応手術を施し、感覚共有システムのベースを埋め込み。

結果:個体は「E13」として再認識。過去の記憶はほぼ消失。


Phase 2:承認欲求の強化

孤児としての生い立ちを利用し、承認欲求を極限まで刺激。

「特別であること」「認められること」を繰り返し植え付け、

精神的な依存を誘導。

結果:個体の忠誠心はヴォートに対して極めて高いが、

失敗時には暴走リスクが確認された。


Phase 3:エーテル粒子注入

ヴォートが極秘に回収したエーテル粒子を、

個体の神経ポートに直接注入。

目的:レオンのレッドポイントを上回る「粒子暴走」を人工的に誘発。

結果:個体はエーテル粒子に強く反応。

一時的に粒子を操るような能力を発現したが、

精神の不安定化が深刻化。

「実験の失敗作」と判定されるも、

軍事利用の可能性を残し、アルテミス連邦へ移管を検討。


Phase 4:最終調整

感覚共有システムの完全同期を試みたが、

個体の精神崩壊の兆候が確認されたため中止。

個体は「失敗作」として保管。

アルテミス連邦の要請により、保護名目で移送予定。


#### 3. 考察

E13は、レオンを超える「悪夢の具現化」を目指した実験体だった。

しかし、承認欲求の過剰刺激とエーテル粒子の影響により、

精神構造が極めて不安定。

成功すればヴォートの最強兵器となり得たが、

現時点では「失敗作」と判断せざるを得ない。

ただし、個体が示した粒子反応は、

今後の実験に大きな示唆を与えるものと思われる。


#### 4. 処遇

- 個体はアルテミス連邦へ移管。

- 記憶消去は継続。

- 万一、個体が外部勢力に接触した場合、

即時抹殺を推奨。


責任者署名

Dr. Alan


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