翼
ヴォルテック拠点の地下ハンガーは、ナイトメアの機体で埋め尽くされていた。
ランガの単独襲撃から逃れた輸送機が到着して数時間。
リ・スターとハウンドの整備班が総出で動き回り、
ボロボロの機体をドックに固定している。
ガイルはヴォルテックの技術者と肩を並べて、
XRX-03の損傷箇所をチェックしていた。
レオンは壁に寄りかかり、虚空の痛みを堪えながら、
仲間たちを見守っていた。
左腕の神経ポートが熱く疼き、
視界の端が赤く滲む。
レッドポイントの代償は、予想以上に深かった。
リ・スターが熱く声を上げた。
「レオン! ヴォルテックが全面協力してくれるみたいだ!
新型バックパックを貸し出すってよ!
粒子加速+短時間飛行ユニットだ。
これで空を飛べるようになるぜ!」
ヴォルテックの技術者が、
巨大なバックパックユニットを運び込んでくる。
黒と赤のカラーリングで、
背部に4基の小型ブースターが並ぶ。
「ヴォルテック最新の『ヴォルテック・ウィングパック』です。
粒子合成炉と連動して、短時間、最大5分程度なら飛行可能。
機動性が約3倍近く上がります」
ガイルが目を輝かせて取り付ける。
「これをXRX-03に……!
ネメシアの出力と組み合わせれば、
本物の飛行機みたいになるぜ!」
エコーがファントム・クロノスを横目に言った。
「俺のクロノスと似てるな。
さすがヴォルテックの技術だ、安定性が高いだろう」
リナがデータパッドで確認しながら言った。
「装着時間は30分ね。
他の機体にも取り付け可能。
これでファイブの予測攻撃にも対応できるわ」
セラが静かに頷く。
「……空から、狙える」
整備班がXRX-03の背部にウィングパックを固定。
接続が完了し、
ブースターが低く唸りを上げた。
レオンはコックピットに乗り込み、
テスト起動をかける。
ネメシアが粒子を噴射し、
ウィングパックが青白い炎を吐く。
XRX-03がゆっくり浮上。
5メートル、10メートル……
機体はハンガーの天井近くまで上昇し、
短時間ながら、自由に旋回した。
レオンはコックピット内で小さく笑った。
「飛べる……
これなら、ファイブの予測も、超えられる」
着地後、レオンはハッチを開け、
皆を見回した。
虚空の痛みがまだ残るが、
今は仲間たちの視線が、胸を温かくした。
リ・スターが拳を突き上げた。
「隊長! これでヴォートをぶっ潰せるぜ!
ハウンドとナイトメアの連合で、
ファイブもランガも、全部倒す!」
ガイルが笑いながら言った。
「ウィングパック、俺のアイアン・フォートレスにもつけろよ!
空飛ぶ要塞だぜ!」
エコーが静かに言った。
「ヴォートの感覚共有は、予測が命だ。
だが、空から予測を超えれば……勝機はある」
レオンは皆に視線を向けた。
カイの席はまだ空いている。
誰も座らないまま、そこにある。
「……カイ。
お前が戻るまで……俺たちは飛ぶ。
悪夢の翼で、ヴォートを終わらせる」
ハンガーの照明が、赤と青に強く輝いた。
XRX-03の背部に取り付けられたウィングパックが、
静かに粒子を噴射し、
新たな戦いの準備を告げていた




