静かな夜
ハンガーは静かな夜に包まれていた
ネクサスとヴォートからの協力関係断絶の通知が届いてから、
皆は言葉少なに機体の修理と次の作戦を話し合っていた。
修理はまだ半分も終わらず、
機体はドックに横たわったまま、火花を散らしている。
カイの席は空いたまま、
誰も触れようとしなかった。
レオンはブリーフィングテーブルの端に座り、
データを眺めていた。
エコーはファントム・クロノスのコックピットで、
ヴォートの感覚共有システムの解析を続けている。
突然、ハンガーの警報が鳴り響いた。
赤い警告灯が点滅し、
スピーカーから合成音声が流れる。
「警告、警告、侵入者検知。
単独機体接近。
警戒レベル最大に設定」
レオンが即座に立ち上がった。
「エコー!」
エコーはコックピットから飛び降り、
通信を繋いだ。
「……ファイブ・プライムだ。
ランガが単独だ」
ハンガーの外周センサーが、
派手なネオンカラーの機体を捉える。
ファイブ・プライム。
神経干渉アンテナが冠のように輝き、
単独で基地に迫ってくる。
ガイルが工具を握りしめ、
「くそ……! 修理中の機体でどう戦えってんだ!」
リナが叫ぶ。
「機体は動かせない!
レオン、エコーだけが今動けるわ!
みんな、ヴォルテック拠点へ避難して!
リ・スターに連絡を!」
レオンはXRX-03に飛び乗り、
コックピットを起動させた。
ネメシアが低く唸り、
虚空の痛みが胸を刺す。
だが、彼はそれを抑え込み、
エコーに通信を送った。
「エコー、俺と一緒に時間を稼ぐ。
みんなをヴォルテックへ逃がす」
エコーはファントム・クロノスに乗り込み、
翼を展開した。
「了解。
俺が上空から攻撃する。
レオンは正面から行ってくれ」
ハンガーの扉が開き、
非戦闘員と整備班が輸送機へ急ぐ。
ガイル、リナ、セラが機体を動かせないまま、
仲間たちを誘導する。
ランガのファイブ・プライムが基地上空に到着。
通信が開く。
声は爽やかだが、底知れぬ冷たさを含んでいる。
「ナイトメアの皆さん、こんばんは。
ヴォートの研究所に侵入した代償を、
今、支払ってもらおう。
データはすべて消させてもらう。
貴方たちの悪夢は、ここで終わりだ」
レオンはXRX-03で基地正面へ出た。
ヴォイド・リーパーを展開し、
プラズマ刃が青白く輝く。
「悪夢は、終わらない」
ランガの機体が急降下。
神経干渉アンテナが展開し、
感覚共有の波がレオンを襲う。
痛みが神経ポートから流れ込み、
虚空の痛みが爆発的に増幅する。
エコーのファントム・クロノスが上空からジェネシスを放つ。
光線がファイブ・プライムをかすめるが、
ランガは予測通りに回避する。
「カメラの学習データは完璧だ。
君たちの動きは、すべて予測済みなのだよ」
レオンは歯を食いしばった。
ネメシアの出力が限界に近づく。
虚空の痛みが視界を赤く染め、
機体の目がゆっくりと深紅に変わり始める。
「エコー……みんなを守れ。
俺が……止める」
エコーが叫ぶ
「レオン! 待て!
レッドポイントは……!」
だが、レオンはすでに決意していた。
神経接続深度が限界を超える。
XRX-03の目が、真っ赤に輝いた。
レッドポイント
機体全体が赤い粒子に包まれ、
ネメシアが爆発的に噴射。
ヴォイド・リーパーが赤く変色し、
質量そのものを虚空に吸い込むような刃になる。
「ランガ……お前の予測は、ここまでだ」
XRX-03が音速を超えて突進。
ファイブ・プライムの神経干渉を無視し、
ヴォイド・リーパーが装甲を切り裂く。
ランガの機体が火花を散らし、
初めて後退した。
ランガの声が、わずかに震える。
「これは……予測外だ……!
素晴らしい」
エコーはファントム・クロノスで輸送機を援護し、
ハンガーの仲間たちをヴォルテック拠点へ誘導。
リ・スターの通信が入る。
「レオン! 今、迎えに行くぜ!
耐えろ!」
レオンはレッドポイントの痛みを堪え、
ファイブ・プライムを睨んだ。
赤い粒子が機体を包み、
虚空の痛みが全身を焼き尽くす。
「悪夢は……終わらせない」
ランガの機体が後退し、
灰色の空へ消える。
レオンはXRX-03で膝をつき、
コックピット内で血を吐いた。
虚空の痛みが、
今まで以上に深く、胸を刺す。
ハンガーの仲間たちは、
ヴォルテック拠点へ避難した。
レオンは一人、
赤い粒子に包まれた機体の中で、
静かに目を閉じた。




