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XRX-03:灰色の咆哮  作者: 装機伊織
第3期
21/65

研究所侵入

エコーとリ・スターは、施設の地下通路を慎重に進んでいた。


警備部隊の追撃を振り切り、

二人はそれぞれの機体を隠し通路の奥に待機させた。

ファントム・クロノスとハウンド・プライムは、

重力制御と低出力モードで静かに待機中。

今は機体ではなく、

二人の足音だけが、暗い廊下に響く。


エコーは小型センサーを手に、

壁の監視カメラを一つずつ無力化しながら進んだ。

リ・スターはプラズマ・ナイフの柄を握り、

いつでも戦える姿勢を崩さない。


「ヴォートの研究所……本当にここか?」


リ・スターが低い声で尋ねる。

エコーは頷いた。

「人体実験の噂は本物だ。

神経接続の被験者を『広告モデル』として集めてる。

感覚共有システムのデータ……ここにあるはず」


二人は実験室の扉にたどり着いた。

電子ロックをエコーがハッキングし、

静かに開ける。

中は白い照明の部屋。

ベッドが並び、

神経ポートに接続された被験者の姿が見える。

モニターに、被験者の脳波と痛みの波形がリアルタイムで表示されている。


エコーはモニターに近づき、

データを吸い上げ始めた。

画面に、被験者のリストが流れる。

名前、年齢、実験内容……。


そして、一つの名前でエコーの手が止まった。


「カイ……リヴェン」


リ・スターが息を飲む。

「カイ……? ナイトメアの新人か?」


エコーは画面を拡大した。

カイの写真と、実験ログ。

「施設自爆後の回収。

記憶喪失状態で被験者登録。

感覚共有システム埋め込み成功。

承認欲求を刺激し、ファイブ・ヴォイドとして再教育完了」


リ・スターが拳を握りしめる。

「くそ……!」


エコーはデータをコピーしながら呟いた。

「大丈夫だ。カイは生きてる。

だが……もう、俺たちの知ってるカイじゃない。

ヴォートは彼の承認欲求を利用して、完全に作り変えたようだ」


二人は無言で部屋を見回した。

他の被験者たちの顔は、どれも疲れ果て、

空虚な目をしている。

モニターには、ファイブの感覚共有データが流れ、

「痛みを共有すれば、世界は一つになる」というスローガンが繰り返される。


リ・スターが低く唸った。

「こんなこと許せねえ…… 」


エコーはデータをすべて吸い上げ、

パッドをポケットにしまった。

「これをレオンに届ける。

カイを……救う方法を探す」


だが、その瞬間――

部屋の扉が勢いよく開いた。


ヴォートの警備兵が5人。

エネルギー銃を構え、

赤い警告灯が点滅している。


「侵入者だ!

動くな!」


リ・スターが即座にナイフを構える。

「ちっ……バレたか!」


エコーは冷静に言った。

「戦うより、撤退優先。

データは確保した。

生きて帰る」


警備兵が一斉に発砲。

エネルギー弾が部屋を埋め尽くす。

エコーは重力制御で機体を呼び寄せ、

リ・スターはナイフで撤退しながら交戦。


二人は背中合わせで戦いながら、

部屋から脱出。

通路を駆け抜け、隠し入り口へ向かう。


警備兵の増援が迫る中、

エコーのファントム・クロノスが浮上し、

リ・スターのハウンド・プライムが追撃を防ぐ。

二機は施設を抜け出し、

灰色の空へ飛び立った。


輸送機が回収ポッドを降ろし、

二人はポッドに収容される。

施設の警報音が遠ざかり、

静かな空に戻った。


エコーはパッドを握りしめ、

静かに呟いた。

「カイ……生きてた。

だが……もう、俺たちの仲間じゃないのかもしれない」


リ・スターが拳を握りしめた。

「違う。

仲間は仲間だ。

俺なら……絶対に取り戻す」


輸送機が拠点へ向かう。

ハンガーに戻ったエコーは、

レオンにデータを渡した。


レオンは画面に映るカイの写真を見て、

息を飲んだ。


「……カイ」


虚空の痛みが、胸を強く締めつける。

だが、今は痛みより、

仲間を取り戻す決意が強かった。


ヴォートの闇は、

まだ深く、広がっていた。

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