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XRX-03:灰色の咆哮  作者: 装機伊織
第3期
20/65

単独の影と

ヴォートの撮影が終わったあとハンガーは、戦闘の傷跡で埋め尽くされていた。


ファイブとの戦闘から帰還した機体は、どれもボロボロだった。

XRX-03の左肩は抉れ、ヴォイド・リーパーのプラズマ回路が焼け焦げている。

アイアン・フォートレスのシールドはひび割れ、ガトリング砲が半分機能停止。

シャドウ・ストライカーのステルスフィールド発生装置は完全に破損し、

ファントム・クロノスの翼も損傷で展開が不安定だ。


ガイルが工具を握りしめ、

「くそ……全部直すのに最低3日はかかるぜ」

と唸りながら整備を続けている。

リナはデータパッドで損傷ログを解析し、

セラは無言で機体のセンサーアレイを拭いている。


レオンは壁に寄りかかり、左腕を押さえていた。

虚空の痛みが、胸を強く締めつける。

ファイブの予測攻撃は、ナイトメアの動きをすべて読んでいた。

ヴォートのカメラが、すべてを学習していたのだ。


エコーはファントム・クロノスのドックで、

唯一、軽傷で済んだ機体を眺めていた。

翼の損傷は最小限で、クロノス・リアクターはまだフル稼働可能だ。


エコーは静かに言った。

「俺だけ動ける。

ヴォートの研究所と噂の施設へ、偵察に行く」


レオンが顔を上げる。

「一人でか?」


エコーは頷いた。

「ファントム・クロノスなら、単独で潜入できる。

ヴォートの本拠地に近い廃棄区画だ。

ファイブの感覚共有の秘密……そこに答えがあるはずだ」


ガイルが工具を置いて立ち上がる。

「待てよ、エコー。

お前一人じゃ危ねえだろ」


エコーは小さく笑った。

「俺は影だ。

影は一人で十分」


レオンはしばらく黙っていたが、

ゆっくり頷いた。

「……行け。

生きて帰れ、エコー」


ファントム・クロノスが静かに浮上。

翼が展開し、青白い重力場が機体を包む。

エコーはコックピットで呟いた。

「カイ……お前の分まで、見てくる」


機体はハンガーを抜け、灰色の空へ消えた。


廃棄区画は、崩落したビル群が立ち並ぶ死の街だった。

エコーは低空飛行で施設の外周を回り、

センサーで警備の隙を探る。

施設は表向き「広告撮影スタジオ」として登録されているが、

周囲に異常なセキュリティドローンが配置され、

地下への隠し入り口が確認できた。


エコーは機体をステルスモードに切り替え、

重力制御で音もなく接近。

隠し入り口の警備カメラをジェネシスで無力化し、

内部へ潜入した。


施設の地下は、予想以上に広かった。

撮影で機体を運び込むためだろうか。

白い廊下に、無数の実験室が並ぶ。

ガラス越しに、被験者のベッドが見える。

神経ポートに接続された人影が、静かに横たわっている。


エコーは息を潜め、機体を降りようとした時――

背後から、低いエンジン音が響いた。


ハウンド・プライムのプラズマ・ランスが、エコーの機体を狙う。

パイロットのリ・スターの熱い声が通信に響く。

「ヴォートの施設に忍び込むとはな!

お前、ナイトメアの仲間か?」


エコーは即座に機体を旋回させ、ジェネシスをチャージ。

「リ・スター……ヴォートを偵察に来たのか」


リ・スターの機体がランスを構える。

「誰かと思えば元知将か。

俺もヴォートの噂を追ってたんだ。

人体実験の証拠を掴めば、ヴォルテックに報告できる。

お前らナイトメアも、同じ目的か?」


エコーは短く答えた。

「そうだ。

今は戦う時じゃない。

ランスを降ろしてくれ」


だが、リ・スターは熱く笑った。

「悪いな。

まずは元智将の実力が本物か、確かめさせてもらうぜ!」


ハウンド・プライムが突進。

プラズマ・ランスがファントム・クロノスを狙う。

エコーは重力制御で急旋回し、ジェネシスで牽制射撃。

二機の戦闘が始まった瞬間――


施設の警報が鳴り響いた。

ヴォートの警備部隊が、廊下の奥から現れる。

中量級の量産機体が10機以上。

エネルギー兵器を構え、ファイブの支援機と思われる小型ドローンが周囲を囲む。


リ・スターが叫んだ。

「ちっ……ヴォートの警備か!

おい、元智将!

今は共闘だ!」


エコーは頷いた。

「今は悪夢の影になった!

俺が上から援護する。

お前は正面を押し通せ」


ファントム・クロノスが浮上し、ジェネシスで警備機体を一掃。

ハウンド・プライムがランスを振り回し、

敵の群れに突っ込む。

二人の連携は、予想以上に息が合っていた。


警備部隊のエネルギー弾が飛び交う中、

エコーは重力制御で急降下し、

ジェネシスを連続発射。

リ・スターがシールドを張り、エネルギー波を防ぐ。


「熱いぜ、エコー!

お前、意外とやるな!」


エコーは小さく笑った。

「熱いのはお前だ。

俺は……影で支えるだけ」


警備部隊が次々と倒れ、

施設の奥へ進む道が開けた。


エコーとリ・スターは機体を並べ、

同時に通信で言った。


「悪夢と熱で……ぶっ潰す」

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