違和感
戦闘は、始まった瞬間から勝敗は決まっていたのかもしれない。
ファイブの5機が展開した直後、
ナイトメアの攻撃はすべて空を切った。
レオンがXRX-03でヴォイド・リーパーを振り下ろした瞬間、
ランガのファイブ・プライムがわずかに横滑りし、
刃は装甲をかすめるだけ。
続いてサラのファイブ・アンプがエネルギー波を放ち、
レオンのネメシア出力が一瞬乱れる。
「なに……?」
エコーのジェネシスがチャージを終え、光線を放つ。
だが、ファイブ・シールド(トラン)がシールドを展開し、
光線は弾かれ、逆に跳ね返される。
エコーの機体が衝撃で後退し、翼が火花を散らす。
ガイルのガトリングが弾幕を張る。
ファイブ・イリュージョン(ミラ)が幻覚を展開し、
ガトリングの弾道がわずかにずれ、
すべてが空を切った。
セラのレールライフルがファイブ・ヴォイドを狙う。
だが、ヴォイドの機体は急加速し、
弾丸は虚空を貫くだけ。
レオンは歯を食いしばった。
「なぜだ……攻撃が全部、読まれてる?」
ランガの声が通信に響く。
「ヴォートのカメラは、君たちの動きをすべて学習した。
肩のわずかな傾き、コックピットの微かな振動、スラスターの噴射タイミング……
すべて、データ化されている。
君たちは、もう予測の鎖の中にいる」
ファイブの感覚共有が、さらに加速する。
システムが攻撃を予測すれば、全員が即座に反応。
連携の強さを増幅させる。
ナイトメアの攻撃は、ファイブにとって「既知のデータ」だった。
ヴォイドの機体が、レオンの前に立ち塞がる。
ツイン・プラズマガンが、ストーム・ランナーのそれを思わせる軌道で連射。
レオンは回避したが、装甲に深い傷が入る。
「くそ……!」
エコーが叫んだ。
「退却だ!
このままじゃ、全滅する!」
ファイブのエネルギー波が一斉に放たれ、
ナイトメアの機体を押し返す。
ガイルのシールドが悲鳴を上げ、
セラのステルスフィールドが剥がれ、
エコーの翼が損傷し、
レオンのネメシアが過熱警告を鳴らす。
レオンは操縦桿を強く握った。
虚空の痛みが胸を刺すが、
彼はそれを抑え込み、叫んだ。
「全員、撤退!」
輸送機が急接近し、回収ポッドが降りてくる。
ナイトメアの4機が、ボロボロの状態でポッドに収容される。
ファイブは追撃せず、
ただ静かに見送るように機体を浮遊させた。
ランガの声が、最後に響いた。
「素晴らしい素材だった。
次は……もっと深い痛みを、撮影させて頂きます」
ポッドが上昇し、灰色の空へ消える。
ハンガーに戻った機体たちは、
ドックに収まっても、火花と煙を上げ続けていた。
レオンはコックピットから降り、
壁に寄りかかって息を荒げた。
虚空の痛みが、胸を強く締めつける。
エコーが近づき、静かに言った。
「ヴォートのカメラは……俺たちの動きをすべて学習していた。
ファイブは、予測の鎖で俺たちを縛ったということだな」
ガイルが拳を握りしめた。
「次は……俺のシールドで、全部受け止めてやる」
セラが無言で頷く。
ハンガーの照明が、赤と青に揺れた。
レオンは空いたカイの席に視線を向けた。
誰も座らないまま、そこにある。
「……カイ。
お前がいれば……もっと、違ったのかもしれない」
虚空の痛みが、静かに広がる。




