ドキュメンタリー
ナイトメアの拠点に戻ってから、数日が経った。
ヴォルテックの偵察任務は成功した。
異常な物量増強とアークライト提携の兆候をネクサスに報告し、
報酬として追加の粒子合成炉パーツが届いた。
だが、レオンの胸の奥で、虚空の痛みが少しずつ強まっている気がした。
それは、薬で抑え込めるレベルを超え始めていた。
その朝、ハンガーの通信端末が鳴った。
ヴォートのミリア・ヴェインからの直通回線。
ホログラムの彼女は、いつも通り完璧な笑顔を浮かべている。
「ナイトメアの皆さん、おはようございます。
前回の撮影データ、大好評でした!
視聴率は旧大陸全域でトップクラスです。
そこで、本格的なPRキャンペーンを提案させて頂きます」
画面が切り替わり、計画書が展開される。
「ドキュメンタリー撮影です。
ナイトメアの日常と戦いを、24時間密着で記録。
タイトルは『悪夢の英雄たち』。
これで、皆さんはスターになりますよ」
リナがデータパッドを睨む。
「24時間……?
私たちのプライベートまで?」
ミリアの笑顔が少し深くなる。
「ええ、もちろん。
視聴者は本物の『悪夢』を求めています。
カメラは小型で機体に取り付け、
メインカメラの映像もリアルタイムで共有。
報酬は……前回の3倍です。
どうですか?」
エコーが静かに言った。
「拒否権はあるのか」
ミリアは軽く首を傾げる。
「ネクサスとの同盟を考えると……難しいですね。
ヴォートはネクサスのパートナーですから」
レオンはゆっくり息を吐いた。
「受ける。
だが、俺たちの戦いを、好き勝手に編集するな」
ミリアの目が細くなる。
「了解しました。
では、早速今日から撮影を開始しましょう。
皆さんの『本当の姿』を、世界に届けます」
通信が切れると、ヴォートのドローンが拠点に到着した。
小型カメラが6基ずつ、各機体に取り付けられる。
メインカメラのモジュールもコックピットに接続。
赤い録画ランプが点灯し、
ハンガーの日常が、ヴォートのサーバーへ送られていく。
その日の依頼は、ネクサスから届いた。
アークライトの輸送ルート妨害。
ドローンが戦闘を追いかけ、
カメラがナイトメアの機体をズームアップする。
戦闘は激しかった。
アークライトの護衛機体5機が、輸送コンテナを守る。
レオンがXRX-03で突進し、ヴォイド・リーパーで先頭機を切り裂く。
カメラが火花を鮮やかに捉え、
ヴォートの配信画面で「悪夢の刃!」というテロップが踊る。
エコーのファントム・クロノスが上空からジェネシスを放ち、
敵の後衛を一掃。
ガイルのシールドが弾を弾き、セラのレールライフルがコンテナを貫く。
任務成功。
だが、帰還途中で異常が起きた。
ハンガーのモニターに、ヴォートの配信映像が流れる。
ミリアの声が響く。
「素晴らしい戦いでした。
ですが、もっと『本物の悪夢』を見せてください。
そこで、特別なテストをお願いします」
突然、空から5機の影が降りてきた。
派手なネオンカラーの機体。
ヴォートのロゴが輝き、
各機体にスローガン「Voice Of The Era」が刻まれている。
リーダーの機体が通信を開く。
声は爽やかだが、冷たい。
「ヴォート・ファイブ、リーダーのランガだ。
お前たちの『本当の力』を、テストさせてもらう」
ファイブの機体が一斉に展開。
感覚共有システムが起動し、
エネルギー波がナイトメアの機体を襲う。
レオンが叫んだ。
「ヴォート……! これはテストじゃない。
戦闘だ!」
ファイブのNo.2サラがエネルギー波を増幅し、
No.3トランがシールドを張る。
No.4ミラの幻覚攻撃がナイトメアの視界を歪め、
No.5ヴォイドが神経データを吸い取り始める。
レオンはヴォイドの機体を見て、息を飲んだ。
動きが……どこかで見たことがある。
エコーが静かに言った。
「ファイブ……世界最強の噂は本物だ。
感覚共有で一心同体。
……レオン退却を検討しろ」
だが、レオンは操縦桿を強く握った。
「悪夢は、逃げない」
戦闘は、ヴォートのカメラがすべて記録していた。
ナイトメアの悪夢が、世界に生配信される。




