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XRX-03:灰色の咆哮  作者: 装機伊織
第3期
16/65

カメラの死線

輸送機が旧大陸東部の荒野に着陸したのは、灰色の朝焼けが広がる頃だった。


アークライトの小規模エネルギー施設は、廃墟の谷間にひっそりと佇んでいる。

周囲は崩落したコンクリートと砂塵で覆われ、

施設の外壁に残るネオンライトの残骸が、時折青白く瞬く。

任務はシンプルだ。

偵察と破壊。

報酬はヴォートからの高額契約金+新型ホログラム装置。


レオンはXRX-03のコックピットで、ヴォートから支給された「撮影装置」を確認していた。

機体各所に取り付けられた小型カメラは、

肩部、胸部、脚部に計6基。

さらにメインカメラの映像をリアルタイムで記録する専用モジュールが、

コックピットのコンソールに接続されている。

赤い録画ランプが点滅し、映像がヴォートのサーバーに送られていく。


エコーの声が通信で響いた。

「カメラは全機に取り付け完了。

ヴォート側は『英雄譚の素材』として、俺たちの戦いを生配信したいらしい。

プライバシーなんて言葉はないな」


ガイルがアイアン・フォートレスから唸る。

「俺のシールドまで映す気かよ。

派手に暴れて、広告代稼いでやるぜ」


セラのシャドウ・ストライカーが静かに言った。

「……ステルスフィールドはカメラに映る。

隠れる意味がなくなる」


レオンは操縦桿を握り直した。

「映るなら、映せ。

俺たちの悪夢を、世界に見せてやる」


施設の警備機体が、赤いセンサーを点灯させた。

中量級4機、軽量2機。

アークライトの量産型だ。

ヴォートのカメラが、戦闘開始の瞬間を捉える。


レオンがXRX-03を先頭に突進。

アサルトライフルを連射し、軽量機1機を蜂の巣にした。

ヴォイド・リーパーが展開し、プラズマ刃が敵の装甲を切り裂く。


エコーのファントム・クロノスが上空から急降下。

ジェネシスをチャージし、敵の後衛を一掃。

翼が青白く輝き、重力制御で敵の弾幕をかわす。


ガイルのアイアン・フォートレスが盾を構え、

ガトリングで敵の弾を弾き返す。

カメラがシールドの火花を鮮やかに捉え、

ヴォートの配信画面では「英雄の守護壁!」というテロップが踊る。


セラのレールライフルが、敵の指揮官機を正確に貫く。

映像にスローモーションが適用され、

弾丸の軌跡が美しく描かれる。


戦闘は短時間で決着した。

施設のエネルギーコアが爆発し、炎が灰色の空を赤く染める。

カメラが最後にレオンのXRX-03をズームアップ。

ヴォイド・リーパーの刃がゆっくり収納される瞬間を、

ドラマチックに捉える。


任務完了のブザーが鳴った。


レオンは息を吐き、通信を開いた。

「ヴォート、映像は届いたか?」


ミリアの声が、笑顔のまま返ってきた。

「完璧です、レオン隊長。

視聴率はすでに急上昇中です。

貴方たちの悪夢は、世界を魅了しています。

次回の撮影も、よろしくお願いしますね」


通信が切れると、ハンガーに戻った機体たちは、

それぞれのドックに収まった。


エコーがコックピットから降り、

静かに言った。

「カメラは……俺たちの痛みまで記録してる。

ヴォートは、悪夢を『商品』に変えようとしてる」


レオンはXRX-03の脚元に寄りかかり、虚空を見上げた。

左腕の神経ポートが、チリチリと疼く。

虚空の痛みが、少し強くなっていた。


「……商品なら、売ってやる。

だが、俺たちの悪夢は、誰にもコントロールされない」


ガイルが肩を叩いた。

「隊長……次はもっと派手に暴れて、ヴォートに悪夢を見せてやろうぜ」


セラが静かに頷く。

「……生きて、帰る」


ハンガーの照明が、赤と青に揺れた。

ヴォートのカメラは、まだ記録を続けている。

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