カメラの死線
輸送機が旧大陸東部の荒野に着陸したのは、灰色の朝焼けが広がる頃だった。
アークライトの小規模エネルギー施設は、廃墟の谷間にひっそりと佇んでいる。
周囲は崩落したコンクリートと砂塵で覆われ、
施設の外壁に残るネオンライトの残骸が、時折青白く瞬く。
任務はシンプルだ。
偵察と破壊。
報酬はヴォートからの高額契約金+新型ホログラム装置。
レオンはXRX-03のコックピットで、ヴォートから支給された「撮影装置」を確認していた。
機体各所に取り付けられた小型カメラは、
肩部、胸部、脚部に計6基。
さらにメインカメラの映像をリアルタイムで記録する専用モジュールが、
コックピットのコンソールに接続されている。
赤い録画ランプが点滅し、映像がヴォートのサーバーに送られていく。
エコーの声が通信で響いた。
「カメラは全機に取り付け完了。
ヴォート側は『英雄譚の素材』として、俺たちの戦いを生配信したいらしい。
プライバシーなんて言葉はないな」
ガイルがアイアン・フォートレスから唸る。
「俺のシールドまで映す気かよ。
派手に暴れて、広告代稼いでやるぜ」
セラのシャドウ・ストライカーが静かに言った。
「……ステルスフィールドはカメラに映る。
隠れる意味がなくなる」
レオンは操縦桿を握り直した。
「映るなら、映せ。
俺たちの悪夢を、世界に見せてやる」
施設の警備機体が、赤いセンサーを点灯させた。
中量級4機、軽量2機。
アークライトの量産型だ。
ヴォートのカメラが、戦闘開始の瞬間を捉える。
レオンがXRX-03を先頭に突進。
アサルトライフルを連射し、軽量機1機を蜂の巣にした。
ヴォイド・リーパーが展開し、プラズマ刃が敵の装甲を切り裂く。
エコーのファントム・クロノスが上空から急降下。
ジェネシスをチャージし、敵の後衛を一掃。
翼が青白く輝き、重力制御で敵の弾幕をかわす。
ガイルのアイアン・フォートレスが盾を構え、
ガトリングで敵の弾を弾き返す。
カメラがシールドの火花を鮮やかに捉え、
ヴォートの配信画面では「英雄の守護壁!」というテロップが踊る。
セラのレールライフルが、敵の指揮官機を正確に貫く。
映像にスローモーションが適用され、
弾丸の軌跡が美しく描かれる。
戦闘は短時間で決着した。
施設のエネルギーコアが爆発し、炎が灰色の空を赤く染める。
カメラが最後にレオンのXRX-03をズームアップ。
ヴォイド・リーパーの刃がゆっくり収納される瞬間を、
ドラマチックに捉える。
任務完了のブザーが鳴った。
レオンは息を吐き、通信を開いた。
「ヴォート、映像は届いたか?」
ミリアの声が、笑顔のまま返ってきた。
「完璧です、レオン隊長。
視聴率はすでに急上昇中です。
貴方たちの悪夢は、世界を魅了しています。
次回の撮影も、よろしくお願いしますね」
通信が切れると、ハンガーに戻った機体たちは、
それぞれのドックに収まった。
エコーがコックピットから降り、
静かに言った。
「カメラは……俺たちの痛みまで記録してる。
ヴォートは、悪夢を『商品』に変えようとしてる」
レオンはXRX-03の脚元に寄りかかり、虚空を見上げた。
左腕の神経ポートが、チリチリと疼く。
虚空の痛みが、少し強くなっていた。
「……商品なら、売ってやる。
だが、俺たちの悪夢は、誰にもコントロールされない」
ガイルが肩を叩いた。
「隊長……次はもっと派手に暴れて、ヴォートに悪夢を見せてやろうぜ」
セラが静かに頷く。
「……生きて、帰る」
ハンガーの照明が、赤と青に揺れた。
ヴォートのカメラは、まだ記録を続けている。




