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XRX-03:灰色の咆哮  作者: 装機伊織
第3期
15/65

英雄の広告

ナイトメアの地下ハンガーは、ネクサス同盟成立から数日が経ち、

少しずつ活気づき始めていた。

新型粒子合成炉コアの追加供給で、整備ベイはフル稼働。

XRX-03のヴォイド・リーパー冷却回路はさらに強化され、

ファントム・クロノスも安定飛行テストを繰り返している。

だが、カイの席はまだ空いたままだった。

誰も触れず、誰も座らず、ただ静かにそこにある。


レオンはブリーフィングテーブルに肘をつき、

ネクサスから届いた最新の契約追加条項を睨んでいた。

「戦術報告の詳細提出」「機体データの定期共有」――

同盟のメリットは大きいが、

自由を少しずつ削られる現実が、胸に重くのしかかる。


リナがデータパッドを叩きながら言った。

「隊長……今日の依頼はこれよ。

ヴォート・コーポレーションから正式に打診があったわ」


一同が顔を上げる。

ガイルが缶ビールを飲みながら眉をひそめた。

「ヴォート? あの広告屋かよ。

『Voice Of The Era』ってやつだろ?

俺たちの戦いをCMにでもすんのか?」


リナがホログラムを展開した。

画面に映るのは、派手なネオンカラーのロゴと、

爽やかな笑顔の女性担当者。

「ヴォート広報部ミリア・ヴェインです。

ナイトメアの皆さん、初めまして。

貴方たちの活躍を、世界に届けるPRキャンペーンを提案させて頂きます」


映像が切り替わり、ナイトメアの過去の戦闘映像が美化されて流れる。

爆発の炎が英雄的な光に変わり、

レオンのXRX-03が「悪夢の象徴」としてドラマチックに描かれる。


「報酬は破格です。

新型広告用ホログラム装置+高額契約金。

さらに、貴方たちの『英雄譚』を旧大陸全域に配信し、

支持率を上げて次の依頼を呼び込みます」


セラが静かに言った。

「……広告。

私たちの戦いを、商品にする気か」


エコーが冷静に分析する。

「メリットは大きい。

知名度が上がれば、依頼が増える。

だが……ヴォートはただの広告会社じゃない。

人体実験の噂がある。

神経接続被験者を『モデル』として集めてる可能性が高い」


レオンはホログラムを消した。

「依頼は受ける。

だが、俺たちは悪夢だ。

広告のためじゃない。

生き残るためだ。

ヴォートが何を企んでても……俺たちのやり方で戦う」


ミリアの映像が再び再生され、

笑顔のまま言葉を続ける。

「では、最初のテスト撮影をお願いします。

アークライトの小規模エネルギー施設。

偵察と破壊の任務です。

もちろん、全過程をヴォートのカメラで記録させて頂きます」


通信が切れると、ハンガーに重い沈黙が落ちた。


ガイルが舌打ちした。

「カメラ付きで戦えってか。

俺たちの痛みまで売る気かよ」


エコーが静かに言った。

「ヴォートは俺たちを『商品』にしたい。

だが、俺たちは悪夢だ。

商品にはならない」


レオンは立ち上がり、XRX-03に向かった。

機体の目が、静かに青く瞬く。


「出撃準備だ。

アークライトの施設を壊す。

そして……ヴォートに、俺たちの本当の姿を見せてやる」


輸送機が離陸する。

灰色の空の下、

新たな物語が、静かに始まった

これからはヴォート編に入ります。長編になる予定です。よろしくお願いします

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